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TOP対談/キーマンと語る
株式会社メルカリ 取締役社長 兼COO
小泉 文明 氏
会社が存在する意義、
そして未来の
IT業界のために
できることとは
  • 写真左:
    株式会社SHIFT 代表取締役社長 丹下 大
  • 写真右:
    株式会社メルカリ 取締役社長 兼COO 小泉 文明 氏

PROFILE

小泉 文明(こいずみ ふみあき)

早稲田大学商学部卒業後、大和証券SMBCにてミクシィや DeNAなどのネット企業のIPOを担当。2006年よりミクシィに ジョインし、取締役執行役員CFOとしてコーポレート部門全体 を統轄する。2012年に退任後はいくつかのスタートアップを 支援し、2013年12月株式会社メルカリに参画。2014年3月取 締役就任、2017年4月取締役社長兼COO就任。

世界を目指す起業家2人の
共通するビジネスの原体験とは?

丹下小泉さんと最初にお会いしたのは、確かIVSっていうスタートアップ向けのカンファレンスのイベント会場でしたよね。今から4~5年前だから、メルカリのサービスがローンチした直後くらいですね。

小泉そうでしたね。丹下さんのことは、以前から気になっていたんですよ。SHIFTって、縁の下の力持ちみたいな会社として、すでに存在感があったから、その社長はどんな人なのかなって。でも、実際にお会いして話を聞いてみたら、会社のイメージとはギャップがあって。

丹下どんなギャップですか?

小泉イベントに集まった、起業したい学生たちに対して、丹下さんがスピーチした内容がとにかく熱くて。自分の生き様を語るみたいな。大学時代のエピソードとかヤバかったですよね(笑)。

丹下バイクの話かな(笑)。学生時代、バイクを7台持ってたっていう。同志社大学の機械工学科にいて。要するにエンジンとか大好きな、機械オタクだったんですよね。それで「ヤフオク!」とかでジャンクを集めてメンテして、自分でバイクを組み立てて乗ってたんです。大学の機械を勝手に使って。

小泉かなりクレイジーですよね(笑)。

丹下そんな話を学生にした後で、小泉さんたちと歓談して。そこで、「ヤフオク!」の話で盛り上がったんです。

小泉そうそう。僕らみんな、「ヤフオク!」育ちだったという(笑)。丹下さんは、バイクのパーツ集め以外でも「ヤフオク!」を活用されていたんですよね。

丹下同志社のあと、僕は京大の大学院に行くんですけど、そこでゴミ捨て場にオールドマックが、山のように廃棄されているのを見つけるんですよ。これは宝の山だ!と思って。少しずつ拾ってきてはメンテして、それを「ヤフオク!」で売って小遣い稼ぎをしていた(笑)。

小泉僕の場合は、裏原宿系のファッションを買い集めて転売してたんですよね(笑)。安く仕入れて高く売るっていう、ビジネスの基本は、互いに「ヤフオク!」で学んだよねっていうところで意気投合したんですよね。お付き合いするようになってからの印象でいえば、丹下さんってとにかく不思議な人だなと思ってます。すごい理系っぽくロジカルに話すときもあれば、めちゃくちゃ感覚的なときもあって。右脳と左脳が行ったり来たりしているというか。その差が激しすぎるから、人によっては、意味が分からないかもしれないですよね(笑)。僕は、そういうところが好きなんですけど。

丹下よく見抜いているなぁ(笑)。右脳と左脳が行ったり来たりしてるっていうのは、他の人からも言われますよ。

小泉そういう人柄ってSHIFTみたいな会社と、一見そぐわないようにも思えるんだけど、逆に丹下さんみたいな人だからこそ、そういう会社ができるのかなとも思ってるんですよ。勝手な想像ですけど、丹下さんみたいな人を受け入れてくれる社員が集まるからこそ、チームが一丸になれて、経営もうまくいってるんじゃないのかな。

丹下それもよく言われるんだよなぁ(笑)。

経営者として「2周目」を経験した世代が、
次世代にするべきこと

丹下IT業界ってこの10年で、本当に大きく変わってきましたよね。小泉さんも僕も、その変化にほぼ立ち会った当事者だと思うんですが、小泉さんの実感として現状をどう捉えていますか?

小泉10年前と比べれば、すべてが良い方向に向かっていると思いますよ。資金の量も増えているし、優秀な人材もこちらに流れてきています。成功する企業が増えた分、周囲の目も以前より優しくなっているってことなんでしょうけどね。ただ、その一方でまだまだだなって思う部分もありますよ。

丹下それは具体的にどのあたりですか?

小泉僕から見た感じだと、今の日本のIT業界って1周目か、せいぜい2周目くらいの経営者がやってるんですよね。取材などで、メルカリが成功した理由を聞かれることがあるんですが、そのときには「経営者として2周目だから」と答えているんです。

丹下面白いキーワードですね。1周回って、2周目の経営に入っていると。

小泉ですね。たとえば僕の場合はミクシィの経営をしていた頃が1周目。そうした1周目の経験からいろいろ学んでいるので、その経験で2周目の今は昔よりも短い期間で会社を成功させることができたと思っていて。

丹下わかります。2周目の経営体験ですから、当然最初よりもノウハウがたまっているわけですよね。

小泉そういう2周目の会社が、そろそろ僕ら以外にも出始めたタイミングなのかなって。とはいえ、これがアメリカだと、すでに4周目、5周目をやってる人がいますからね。そういう人たちは、ノウハウが溜まっている分、成功確率も高いし、だからこそ資金も調達できる。日本のIT業界もアメリカのように、周回を重ねたプレイヤーが増えれば、産業としてもっと厚みが出てくると思っています。

丹下おっしゃる通りですね。特にアメリカって、そういう風に、経営の周回を重ねやすい文化がありますから。スタートアップでも、マーケティングやチーム編成、そしてビジネス戦略が納得できるものになっていれば、ちゃんと資金が集まってくる。それで失敗したとしても、これはマーケットが未熟だったんだ、ということで次につなげられるわけで。同じチーム編成で、新たなチャレンジができる土壌があるんですよね。でも、日本って一度失敗したらもうダメっていう風潮があるじゃないですか。小泉さんの言う、2周目のチャレンジをさせてもらえない。これでは、競技人口が増えるわけがないですよ。

小泉競技人口が多いって、とても大切なことなんですけどね。ただ、日本もこれから改善されるかなとは思っていて。丹下さんとか僕らみたいな人たちの成功事例をみて、もう一度チャレンジしてみようかっていうプレイヤーも出てくるだろうし。実際、最近は大企業からベンチャーに流れてくる人材も増えていますからね。

丹下ちょっと気の早い話かもしれないんですけど、今のIT業界は2周目の人が引っ張っていて、これからは3周目の人たちが出てくる。そうすると、今後、僕らを含めた日本のIT業界は3周目の人たちに何ができるのかなと最近考えてるんです。

小泉僕自身は、端的に言えば、若い人たちがもっとチャレンジできるような社会にするためのサポートをしてあげたいと常々思っているんです。土壌や仕組みが整っていないばかりに、せっかくの才能が埋もれてしまうようなことを無くしたいし、そうするとこの産業ももっと厚みが出てくる。具体的には、いわゆるオールドエコノミーとの橋渡しみたいな役割を、僕らの世代が担うべきなのかなって。

丹下小泉さんは適任ですね。

小泉IT業界っていう枠組みも、どんどんあいまいになっているというか、どの分野でもテクノロジーをつかったイノベーションが欠かせないものになっていますよね。そうなると、今の若い世代だけで完結というような訳にもいかなくなる。社会をもっと成長させるという意味でも、テクノロジー系の人たちとオールドエコノミーの人たちとが、良い関係を築かないといけないんです。

丹下オールドエコノミーの世代と、ソーシャルな若い世代の、ちょうど中間くらいの世代ですしね、僕らは。だから、両方の気持ちが理解できるし、コミュニケーションをとることもできる。

小泉グローバル、非グローバルとか、オールドエコノミー世代とソーシャル世代とか、対立構造のように語られがちなんですけど、実は簡単に二者択一できるようなものではないですしね。そこをうまい具合に融合させていかないと、社会は正しく変わっていかないんじゃないのかな。

丹下そうした融合が、この先どんどん進んでいく際には、当然テクノロジーに関する課題も増えていきますよね。手前みそではありますが、そうなればますますSHIFTが提供するソフトウェアの品質保証・テストというサービスも重要になってくるのではと思っているんです。

小泉まったくその通りですよ。産業が大きくなればなるほど、品質の重要度は増すわけですから。もちろん、僕らの会社もSHIFTに一部の業務をお願いしているわけで。やはり、カスタマーエクスペリエンスを最大化させるっていうこと以外に、僕らに勝ち目はないですからね。そのアプローチは、やはりテクノロジーを使って便利にしていくことなんだけど、その過程で、当然さまざまな不具合が出てくる。

丹下一般向けのサービスだと、まさに想定外な使い方をされてしまうこともありますしね。

小泉そこが、サービス提供側にとってもっとも怖いことでもありますし。規模が大きくなればなるほど、不具合を自分たちで巻き取ることは不可能に近いんです。そこで、不具合に対して一緒に立ち向かってくれる仲間が必要になる。SHIFTって、まさにそういう会社ですよ。

会社が追求すべき
「働きやすさ」とは何か

丹下メルカリが、「IT・通信業界の働きやすい会社」でも2位に選ばれていましたよね。

小泉さすがにGoogleには勝てなかった(笑)。

丹下確か、ランキングはGoogle、メルカリ、ヤフーの順だったのかな。そういった採用、人事面でもすでに国際的な競争力を持っている会社になってるんだなぁ、って思いました。

小泉とはいえ、ああいう「働きやすさ」ランキングって、ちょっと誤解を生みやすいかなとも思っているんです。そもそも、社員に最大限のパフォーマンスを発揮してもらうために「働きやすい」環境を整えるわけですからね。

丹下ただ、ヌクヌクと楽してもらいたいわけじゃないぞ、と(笑)

小泉そうなんですよ(笑)。別に福利厚生を過剰にしていますって話じゃなくて。そこを誤解されたくはないんですけど、僕らの会社がランキング入りしているのは、福利厚生の手厚さとかじゃなく、さきほどいった多様性の受け入れ体制とか、社内の情報共有とか、そういう意味での「働きやすさ」が評価されていると思っていて。

丹下メルカリの情報共有って、ほんとにすごいみたいですね。社内のすべての情報に、誰でもアクセスできるようになっていると聞きました。

小泉社員であれば、基本的には全レベルの情報を閲覧できるようにしていますね。こちら側で区分するっていうやり方もあるけど、僕からすれば、みんなプロなんだから社内の情報も自分で取捨選択しなさいと。過保護にはしたくないんですよ。なるべく本人の自主性に任せたいんですね。

丹下小泉さんがおっしゃっている「働きやすさ」の話には、とても共感しますね。当たり前の話ですが、仕事に集中するための環境を整えてあげたいという目的で、いわゆる福利厚生を整備すべきだと、僕も思っていますから。

小泉SHIFTでは、具体的にどのような取り組みをされているんですか?

丹下いちばんわかりやすいところでいえば、給与ですよね。SHIFTの場合、年に約10%くらい上げるようにしているんです。昇給は、半年に1回のペースで行っていて。

小泉それは真似できない(笑)。

丹下ソフトウェアの品質保証・テストの仕事って、これまで業界的にいくつかの障壁みたいなものがあったんです。その第一がやっぱり給与なんですよ。品質保証やテストの仕事は、開発者よりも給与が安いって思われてきたんですね。その誤解というかコンプレックスを解消しなければ、っていうのが大きくあるんです。

小泉大事なところですよね。

丹下あとは、まさに「働きやすさ」。仕事をするだけなら、SHIFT以外にも会社はあるし、フリーランスで働くことだってできるわけです。そこで、なぜSHIFTを選ぶのかというメリットをちゃんと提示してあげないといけない。

小泉会社の存在意義って、まさにそこですからね。

丹下せっかくSHIFTに来てくれたんだから、エンジニアとしてのキャリア形成に純粋に邁進してほしいっていう気持ちが強くて。もちろん、ライフプランも込みでです。最近だと、資産運用なんかも会社でやってあげたいなと思ってるんですよ。積み立てとかは他の会社でもやってますけど、さらに積極的に会社の方で積み立て分をNISAに回してあげたりとか。細かいとこでは、ふるさと納税なんかも、こちらで簡単にできるような仕組みを、すでにつくっていて(笑)。あれって、手続きがかなり面倒なうえに、先にキャッシュアウトしなければいけないじゃないですか。その手続きを代行して、さらにお金も立て替えてあげるっていう。あとは、将来的に住宅ローンなんかもこちらで面倒を見てあげたい。会社経由でローンを組めば、他より安い利率で組める、みたいなことをしてあげたいと思ってるんです。

小泉かなりユニークな取り組みですね。そんなところまで考えているとは。

丹下もちろん、昇給も含めて強制はしていませんけどね。昇給にしても、ガンガン上げてしまうと、それを負担に感じる人もいるわけで。今、だいたいグループ全体で3,000人近い従業員がいるので、全員にガッチガチの成果主義を押し付けるわけにはいかないんです。それこそ、働き方だって人によって多様性がありますからね。

小泉福利厚生の考え方って会社によって違いますからね。メルカリの場合は、とにかくフェアな福利厚生にしたいっていうのがあって。具体的には誰かにはプラスになるけれど、その他の社員にとってはプラスにならないような福利厚生はしていないんです。たとえば、今だと全社員の死亡保険に加入することで、万が一のときに社員の家族を最大限支援できるようになっていたりとか。

丹下死亡保険が福利厚生に、っていうのは斬新ですね。

小泉どういうことかっていうと、これも働くうえでマイナスやリスクになる要素をなくしてあげたいってことなんです。産休・育休からの復職を応援する目的で復職一時金を支給しているのもそういうことですし。妊活の支援として不妊治療も会社で一部費用負担したり、認可外保育園の保育料の援助なども行っていますね。なるべく、みんなが平等な条件で働けるようにしてあげたいんです。

丹下素晴らしいですね。

デスマーチの根絶が
IT業界を明るくする

丹下メルカリみたいにグローバルな人材が集まっている環境の中で、メンバーをどうまとめているんですか?

小泉僕らの場合は、バリューの中に「All for One」というものがあって。先ほどの福利厚生も、このバリューに基づいたものなんです。日本の企業って、バリューやミッションがないがしろにされがちですからね。経営者のさじ加減で事が運んでしまうようなところがあって。グローバルな人材が集まっていると、日本人の感覚や慣習だけではどうしてもまとまりがつかなくなってしまう。そこで大切なのが、バリューやミッションなんですよ。国籍を問わず誰でも理解できるバリューを用意しておくことで、一丸となって会社を成長させることができるんです。

丹下大きな意味でのカルチャーフィットですよね。

小泉バリューがしっかりしていると、採用も楽になるんですよ。僕らは「メルカン」っていうコンテンツプラットフォームをつくっていて、そこでもメルカリのバリューについて触れているんですね。社員のカルチャーフィットという目的もあるんですけど、これからメルカリに入りたいと思っている人も、メルカンを読めば、僕らのバリューやミッションがわかりますから、それらに共感できる人が応募をしてきてくれている場合が多いですね。

丹下小泉さんの話を聞いていて思ったんですけど、そもそもSHIFTはメルカリほどバリューやミッションの刷り込みが必要ないんですよね。基本的には、すでに同じ考えを持っている人が集まってくる。

小泉というと?

丹下テストや品質保証という仕事の重要性を知っている人だからこそ、SHIFTの門を叩くというか。ソフトウェア開発をしている人にとって、一番恐ろしいのって、いわゆるデスマーチじゃないですか。デスマーチが始まる理由って大きく分けると2つあって、ひとつはクライアントの要望がくるくると変わってしまうこと。で、もうひとつがソフトウェアの不具合。

小泉不具合の問題は、不可避なところがありますからね。

丹下そうなんですよ。バグ取りに余計な工数がかかって赤字になるとか、家に帰れなくなったりとか、精神的に追い込まれたりとか。ソフトウェアの品質はあがって、不具合が軽減されれば、そういったリスクも減るっていうことを、エンジニアなら誰もが知っているんです。だから、自分のキャリアを品質を守る側で役立てたいという志を持った人が自然と集まってくる。よく言うんですけど、たとえば自分の子供に、お父さんがテストや品質保証をしてるから、銀行のシステムはちゃんと動いていて、日本の経済が回ってるんだぞって言えるくらいのプライドを持ってほしいと思っているんですよね。僕らがやっている仕事は、ただのレンガ積みではなく、教会を建てる仕事なんだと。

小泉加えて、収入面も含め仕事に打ち込めるような環境を整えてあげて。

丹下そうすれば、プライドを持って働いてくれる優秀な人材をたくさん、しかも長い間抱えることができるわけですよね。

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