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TOP対談/キーマンと語る
株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 CEO
辻 庸介 氏
良い会社づくりに必要な
「当事者意識」とプライドの提供
  • 写真左:
    株式会社SHIFT 代表取締役社長 丹下 大
  • 写真右:
    株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 CEO 辻 庸介 氏

PROFILE

辻 庸介(つじ ようすけ)

1976年大阪府生まれ。2001年京都大学農学部卒業後、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー株式会社、マネックス証券株式会社を経て、2012年に株式会社マネーフォワード設立。個人向けの自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」および中小企業向けのクラウドサービス「MFクラウド会計・確定申告・請求書・給与計算・消込・マイナンバー・経費精算」を提供。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech検討会合の委員も務める。

企業の成長は「人、モノ、カネ」ではなく
「人、人、人」で決まる

マネーフォワードとSHIFTを比べると、採用の規模はやっぱり違いますよね。今、SHIFTでは何人くらいのペースで採用されているんですか?

丹下 2018年は、毎月60~70人くらい採用してきましたね。ソフトウェアの品質保証・テストの会社なので、とにかく人手がいるんですよ。その点では、マネーフォワードさんや他の会社さんとは事情が違いますよね。さらに2019年は、今まで以上に、戦略立案とかコンサルとかの仕事を任せられるメンバーを集める予定です。さまざまな経験を積んできた人たちの助けを借りてSHIFTを次のステージに進めたいと考えているんです。

人材って、本当に大切ですからね。よく「人、モノ、カネ」って言いますけど、最近つくづく「人、人、人」だなと思っています。良い人材が集まれば、良いモノがつくれるし、良いモノがつくれる見込みがあるから、資金調達もできるわけですから。マネーフォワードは今、400人を超え、月に10~20名くらいのペースで採用をしています。まだまだ規模を大きくしたいので、基本的には常時全職種募集しているところです。当然、公募もしていますが、採用の30~40%くらいはリファラル(社員紹介採用)に頼っている感じですね。

丹下 SHIFTでもリファラルは、積極的に行ってますよ。

やっぱり助かりますよね。社員がいちばん、会社のことを理解しているわけですから、上手に巻き込んでくれる。ここ1年半は、日銀出身や金融庁出身のベテラン勢もリファラルで採用することができまして。そこで面白かったのが、そのうちの1人が、転職するにあたって、16枚のレポートを書いたっていうんですよ。

丹下 マネーフォワードに?

ではなくて、その人の奥さんに(笑)。転職に大反対されたらしいんです。なにしろ日銀ですからね。それで、転職したい理由やメリットを16枚のレポートにまとめてプレゼンしたという。

丹下 結婚されている男性だと、ベンチャー系への転職のときに、いわゆる「嫁ブロック」は大きな障壁になりますね。

昔からそうですよね。家族の理解を得るのって、なかなか難しい。僕もこれまで、ソニー、マネックス証券、MBAを経てマネーフォワードを創業したわけですが、そのうち賛成されたのってソニーしかないんですよ。

丹下 やっぱりネームバリューが影響しちゃう。

わかりやすいですからね。でも僕に言わせれば、過去に大きな業績を残している会社って、確率論的にはそれ以上の発展を望むのが難しいわけじゃないですか。だったら、未来に期待できる会社で働くほうが有意義じゃないのかなって。その判断ができるのは結局、自分だけなんですよね。最終的には本人の直感に従うのが正解だと思うんです。マネーフォワードやSHIFTで働きたいと思っている人も、そう考えているはずです。

丹下 とはいえ、やっぱり家族の意見って無視しづらいところもありますよね。特に大企業からの転職となると、収入の問題も出てきますから、ご家族の承諾はほぼマストでしょうし。実際、そういう大企業にいる人ほど、「嫁ブロック」が強固な傾向はあるみたいですよ。

やっぱり安定を望むということなんですかね。

丹下 たとえば、そういう人たちって退職金のことを気にするんですよ。SHIFTには退職金制度がないんですけど、前職で定年まで勤めたらこれくらい退職金が出るはずだから、その分を給与に上乗せしてくれっていうんですよね。

わー、すごい発想ですね(笑)。それって、定年まで前職が存続していて、しかも現状の業績を維持しているっていう前提じゃないですか。今どき、そんな保証はどこにもないのに。

丹下 そういうことを気にする人って、真面目なタイプが多いんですよ。僕らみたいにイノベーティブな考えの人には向いていないんですけど、きっちりと間違いのない仕事には向いていたりするんです。SHIFTがやっているソフトウェアの品質保証・テストという仕事は、ゲーム系から金融系まで硬軟の幅も広いですから、人材の多様性も重要なんですね。実は、2019年からテレビCMを打つのも、その目的のひとつは、そうした「嫁ブロック」のようなご家族の反対を気にするような人たちへのケアみたいなところがあるんです。

なるほど、テレビCMを打っているような会社ならば、転職先としても安心感がある、とご家族にも感じてもらえる訳ですね。

大切なのは、働くことに対する
当事者意識とプライド

丹下 辻さんは、ソフトウェア自体の品質でいえば、日本の現状をどのように見ていますか?

プロダクトとしてのレベルは、まだまだ高いと思いますよ。ただ、自分たちの会社だけで品質保証まで受け持つことは、今後さらに難しくなってくるんじゃないでしょうか。携わった人なら誰でもわかると思うんですが、ソフトウェア開発って大規模になるほど負債との闘いになってくるんですよね。我々の言葉でいうところの、技術的負債。バグがあるままで、どんどんシステムを積み上げてしまったら、そのバグが及ぼす影響もどんどん大きくなって、デスマーチを生んでしまうという。

丹下 病気と一緒で、予防はもちろん、早期発見と早期治療が大事になるわけですよね。

技術的負債が大きくなる前に、しっかりテストをしておくことが、中長期の成長を考えるうえでも大切なこと……と理想を言うのは簡単なんですけど、社内でそれができるかといえば、なかなか難しくて。実際僕らも、技術的負債の解消のために半年間新規開発ができなかったというような経験をしているんですよね。そもそも、開発と品質保証・テストのノウハウって、大きく異なるものですから、両方に力を入れるのは会社としても効率的とはいえない。だからこそ、SHIFTのようなプロフェッショナルの存在が必要とされているのだと思います。大げさな話ではなく、IT業界の日本品質を維持、向上させるために欠かせないと思いますよ。品質保証をSHIFTさんにお願いすることで、自動車業界でいえばトヨタ自動車のような世界に通用する信頼を得ることが可能になりますから。

丹下 トヨタ自動車といえば、ちょっとイイ話があって。僕が、SHIFT創業前に製造業のコンサルをしていた頃、日本を代表する製造系の大手メーカー数社の現場を見させてもらったことがあるんです。その中で、トヨタ自動車がダントツで品質が高かったんですね。

モノづくりや品質保証自体のクオリティということですか?

丹下 そうですね。製造業のなかでも、自動車って分業化の最たるものなんですよ。1台の自動車を完成させるためには、本来なら1人で組み立ててしまったほうが速いんですけど、規模を考えると、どうしても分業化せざるを得ない。そのために設計図や仕様書があるわけですが、図面や文書だけですべての人に伝達するのって、実際には難しいわけなんです。そこで必要とされるのが、必要な情報やノウハウを効率よく伝達するための人間力なんですね。ここが、トヨタ自動車の優れているところだと感じました。他のメーカーだと、ただの伝言ゲームで断絶が起きちゃうようなところを、トヨタ自動車は人間力でカバーしていたんです。

やっぱり最終的には人材、ということになるわけですね。

丹下 僕が関わっていた当時、ちょうどトヨタ自動車の営業利益が1兆円になったんですけど、その業績に対して、工場で部品の一部を作っている方が言ったんです。「俺がいたから1兆円にできたんだ」って、すごく嬉しそうに自慢するんですよね。自分の仕事に、ものすごいプライドを持ってるんですよ。

それはすごい。当事者意識が高いんですね。

丹下 もうバリバリの当事者意識。良い会社づくりって、こういうところなんだと思ったんですよ。いわゆる、ミッション、ビジョン、バリューの共有ができているわけですよね。SHIFTも、そうあるべきだと思っていて。良い人材に適切な給与を与えるという点もそうですが、それと同じくらい大事なのが、働くことに対して当事者意識とプライドを持つべきだと。特に、ソフトウェアの品質保証・テストの仕事って開発者より下だと思われがちですから、それは違うんだと。辻さんが言ってくれたように、日本品質を支えるうえで、もっとも大切な仕事であるというプライドを持って働いてほしいんです。例えば、銀行のシステムのような社会的な重要度も、何か起きたときの影響度も大きいシステムが日々正しく動いているから、日本の経済は回っている。それを支えているのは俺たちなんだ、と自信を持って言えるような会社にしていきたいですよね。

当たり前の話ですが、自分の仕事にプライドを持てるような場を提供することも、会社の使命ですからね。

日本人ならではの強みは、
グローバル時代の競争力になる

丹下 マネーフォワードの海外展開って、今どれくらいまで進んでいるんですか?

最近だと、インドやインドネシアの会社に出資しています。インドネシアで最大のクラウド会計をやっている会社では、僕が社外取締役をやらせてもらっていますね。

丹下 インドネシアと日本の会社との間に、具体的な差異を感じることは?

やはりプロダクトでは日本の方が先行しているぶん洗練されてますから、今は、こちらから情報共有やレクチャーをしている段階ですね。SHIFTさんも海外進出は、すでにされていますよね?

丹下 インドとベトナムに拠点を置いていますね。ただ、現状はあくまでも拠点なので、僕らの方から仕事を提供している形です。とはいえ、海外の人ってビジネスのフレームワークをつくるのが上手だなって思いますよ。辻さんも言っているように、日本人って中身をつくるのは得意なんだけど、儲け方とかに関しては海外の人材のほうが長けている印象がありますね。外国からの人材登用は、どんな感じになっています?

マネーフォワードも、最近はグローバルな人材の強化に力を入れていて。ホーチミンに開発拠点をつくりましたし、田町の本社でもベトナム、中国、韓国といった海外からの人材が多く働いてくれています。

丹下 ベトナムの人たちは、特に優秀だと感じますよね。向学心も旺盛だし、なにより文化的にも日本との相性が良いから。日本や日本人に対する印象も、ビジネスをするうえで重要になっていますよね。逆に、そうしてグローバルな採用をしていくなかで、日本人の採用については、どうお考えですか?

会社としてグローバルに勝負していくことを考えれば、もはや日本人だけのチーム編成というのは難しいでしょうね。シビアな話でいうと、同じ能力を持っているエンジニアでも、ベトナム人のほうが、給与が安いとなれば、どうしたってそちらを優先してしまうわけじゃないですか。その逆もあって、働く側も職場を日本国内だけに限定してしまうのは、もったいない気がしますよね。個人的に語学が苦手というのはしょうがないけど、ビジネスの人材として考えると、それではすでに通用しない。あらためて、大変な時代になってしまったなぁ、とも思いますが(笑)。

丹下 いや、ほんとに大変な時代ですよね。語学に関して言えば、英語をある程度マスターするのは大前提として、まずは母国語をしっかり磨くべきという考え方もあるのかなと。何故なら、英語を話せるってだけでは、すでに勝負できない時代になっているんですよね。オーストラリア人のエンジニアが友達にいるんですが、彼が言うんですよ「お前は日本語ができるから羨ましい。俺は英語しかできないから、仕事をすべてインド人に奪われてしまったよ」って。

それは確かにあるでしょうね。ある意味で標準化されているから。

丹下 先ほどのベトナム人と日本人の比較みたいなことが、世界的に起こっていて。英語しか喋れない人は、すでに荒波にもまれてしまっている。こうなってくると、自国の文化で勝負するしかないのかなと。極端に言えば、日本人が海外で勝負するなら、髪形をチョンマゲにしたほうが良いと思ってるんですよ。割と本気で(笑)。

おっしゃる通りかもしれません。自分でそうするかどうかはともかく(笑)。標準化、同一化を避けるというのは、個人も会社も大事なことになってくるでしょうから。

丹下 人間に関しても、エッジを効かせるというか、日本人ならではの強みを出していくべきなんじゃないのかなと。よく言われる、モノづくりの細かさも、ひとつの強みではありますよね。マネーフォワードのサービスも、日本人ならではのきめ細やかさがあるから、そこが将来的にもグローバルでの強みになると思うし、僕らが手がけているソフトウェアの品質保証・テストの領域でも、似たようなことが言えるんじゃないかと思ってます。
ところで、グローバルへのチャレンジという点では、お互いにこれからが本番ってところだとは思いますが、直近の話として国内における今後の展望というか野望みたいなところを、辻さんがどう考えているのか気になりますね。

マネーフォワードは、ゼロからスタートした会社なので、これまでは、そこまで大きな野望みたいなものはもっていなかったんですよね。でも、上場をさせてもらってから、そこがちょっと変わってきて。

丹下 フィンテック系としては、初の上場でしたよね。

そうなんです。上場したことで、自分たちが日本のフィンテックで先頭を走っている存在なんだという自覚が出てきたといいますか。大きな話をすれば、僕らが日本のフィンテックをけん引しなければ、この国の未来は明るくならないんじゃないかって思うようになったんですよね。

丹下 それは、本当にそうですね。

だからこそ、グローバル化に対応できる競争力を業界全体で持てるようにしなければならないと思います。

SHIFTが、給与を年間約10%も
上げられる理由とは?

フィンテックとソフトウェアの品質保証・テストだとジャンルも違うから、並べて考えるのは難しいと思うんですが、これまでの話を聞くと、SHIFTの採用ブランディングも気になりますね。僕らの場合は、大前提としてミッション、ビジョン、バリューを軸に置いていて。日本の金融を変えたいとか、中小企業を助けたいといった思いを持った人が、集まってくるような仕組みをつくっているんです。SHIFTでも、そういった取り組みをされているんでしょうか?

丹下 ビジョンやバリューに共感できる人を集めたいという基本的な考え方は、まったく一緒ですね。でもSHIFTの場合、ビジョンやバリューの浸透に気を配る必要がないんですよ。

どういうことですか?

丹下 なぜなら、SHIFTで働きたいと思った時点で、すでに同じビジョンやバリューを持っている人がほとんどだから。特にエンジニアだと、デスマーチの辛さを良く知っているわけですよ。そして、デスマーチが発生する原因の大半が、ソフトウェアの品質にあることも重々理解していて。

ソフトウェアの品質保証・テストを外部に委託できれば、開発に集中できるしデスマーチのリスクも軽減できますもんね。

丹下 たとえばエンジニアとして30代を迎えたときに、そのまま開発の世界で次のステップに進むという判断もあるわけじゃないですか。でも敢えてソフトウェアの品質保証・テストの世界へ移る意思があるってことは、ソフトウェア開発全体の品質向上のために、自分のノウハウをこの分野に活かそうという思いが、すでにあるんですよね。

要するに、その時点でビジョンは共有できているということですね。

丹下 SHIFTが中途採用をメインにしている理由も、そこなんです。エンジニアとして経験を積んで、そのノウハウを社会のために役立てたいと考えている人たちに、しっかりとしたやりがいと、なにより、その気持ちと能力に見合う収入を与えてあげたいなっていう。ちなみに、SHIFTは年間約10%も昇給する会社なんです。

それはすごい。

丹下 しかも、お客様からいただいているフィーは、毎年17%くらいのペースで上がっている(笑)。

それだけ、ソフトウェアの品質保証・テストの需要が高まっているということですよね。

丹下 とはいえ、いまだに品質保証の仕事って、開発の最終工程、テストエンジニアは開発者よりも下みたいに思ってる人も多くって。そこを改善するためにも、収入を高くすることが重要だと思っているんですよね。具体的に言えば、とりあえず今は、社員の平均売り上げを月150万円くらいまでのところには持っていきたい。

そうすると、年収で1,000万くらいになる。

丹下 そうですね。ゆくゆくは年収2,000万くらいのレベルにはしてあげたいんですけどね。そのためには、会社を次のステージに進めないと。そのためにも、やっぱり優秀な人材が、もっともっと必要になりますよね。

そうですね。マネーフォワードとしても、まだまだサービスとしては途上だと思っていますし。ここまでの話でいえば、お金に関する現状把握やライフプランの見積もりくらいまでは提供できたのかな、というところ。でも、それだけでは不十分で、これからはもっと積極的に、ユーザーが抱えているお金に対する課題を解決してあげたいと思っています。たとえば最近、「しらたま」っていう自動貯金アプリを始めましたが、この先は保険や資産運用でも、似たような自動化サービスを提供したいんです。究極的には、お金のことを考えないで暮らせるような仕組みを提供したいなと。これは、設立当初から変わらない、マネーフォワードのミッションでもあるわけですが。

丹下 素晴らしいミッションですよね。実は、僕もSHIFTという会社の存在意義として、似たようなことを考えていて。せっかくSHIFTで働くんだから、その間は仕事にしっかり集中してほしいなって。そのために、それこそお金にまつわる面倒な部分を、会社で面倒見てあげたいんですよ。マネーフォワードとまったく一緒で、NISAみたいな積み立ての資産運用なんかも、こちらでサポートしてあげたい。経営者目線でいえば、株とか資産運用に頭使わないで、仕事に頭使ってほしいっていうのもあるんですけどね(笑)。

わかります(笑)。でも、そこまで考えている経営者って、なかなかいらっしゃらないんじゃないですかね。

丹下 辻さんの話を聞いていたら、SHIFT×マネーフォワードで実現できそうなことが、たくさんありそうな気がしてきましたよ。ぜひ近いうちに相談させてください(笑)。

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