ゲームプランナー100人の経験を結集した教育プログラム。「Planner Boot Camp」が業界を活性化する 

2025/02/04

SHIFTには、「ゲームプランナー」が約100人、在籍。あの人気ソーシャルゲームや、某コンシューマー向けゲームの開発、改修の現場で日々、活躍しているのです。 

そんなゲームプランナー100人の知見をもとにつくり上げた新しいサービスが「Planner Boot Camp(PBC)」です。 

ゲームプランナーとして活躍するのに欠かせないベーシックな業務知識から中級レベルのノウハウや、マインドセット、法的知識を体系的に学習できる教育プログラムです。

社内向けの教材として開発をスタートしましたが、いまや外部向け商材としても販売を開始、注目を集めています。 

「ここまでゲームプランナーが身につけるべきイロハを体系的に学べるプログラムは、いまのところ業界内では見当たりません」とPBCをつくりあげた担当者のひとり、吉岡はいいます。 

そもそも、なぜSHIFTがゲームプランナー向け教育プログラムを企画・制作したのか。その狙いとは?プログラム作成のキーパーソンに聞きました。 

  • 開発支援サービスグループ 吉岡

    コールセンターベンダーのマネージャーとモバイルソーシャルゲームのチーフプランナーを経て、202311月にリファラルでSHIFTへ入社。入社後は上流支援グループのサービスマネージャー※として各案件先に上流支援グループメンバーの提案や社内教育コンテンツ作成に従事。趣味はボードゲーム(特にカタン)、ディズニーリゾート通い。 

    ※サービスマネージャー…複数案件を管理し、滞りなくサービス提供ができるよう責任を担うポジション。 

  • 開発支援サービスグループ 白鳥

    音楽大学を卒業後、プランナーやPMとして新規ゲームの開発から既存ゲームの運用まで幅広く経験をむほか音楽に強みがあること活かしてサウンドクリエイターも担当する。2021年7月、SHIFTに入社。現在はサービスマネージャーとしてプランナーブートキャンプのカリキュラム整理および体系化・コンテンツ拡充を行う。

目次

「OJTに頼りすぎている」。ゲーム業界における、プランナー育成の実態

――まず、PBCの概要を教えてください。

吉岡:ゲームプランナーが身につけるべきスキルや知識、心構えなどを体系的、網羅的に学べる教育プログラムです。

2020年6月に、未経験者がゲームプランナー業務の基礎を身につけられる「初級編」を、まず社内の人材を教育する目的で開発、2023年11月には「中級編」も作成しました。

SHIFT内のゲームプランナー人材のレベルの高さを保証するとともに、品質の高いゲームコンテンツの制作を担保する礎になっています。

――ゲームプランナー向けの教育プログラムを内製した理由は?

吉岡:ゲームプランナーが身につけるべきスキルや知見を体系的・網羅的に教える教育プログラムが、業界内にはほとんど存在しないためです。

白鳥:吉岡さんは前職でソーシャルゲーム会社に在籍し、僕もゲーム業界でプランナーをしていたので実感しているのですが、ゲーム業界には体系的なカリキュラムをもつ教育プログラムがほぼありません。

現場のOJTで、叩きあげで学んでいくのがスタンダードなんですよ。

――それは「ゲームをつくりたい」と志望する若い人材が、どんどん現れる人気業界だからでしょうか?

白鳥:それもありますね。

加えてソーシャルゲームなどを提供する企業は、スタートアップから急成長したところが多い。そのため、教育制度などを整備する余裕がないまま、事業をまわさざるを得なかった面もあると思います。

要はエンジニアやデザイナーと比べても、トレーニングや研修を受ける機会がとても少ない。

吉岡:忙しい業界でもあるので「成長したい人間は、実地で学べ」と、これまで個人の自主性に頼って育成を放棄していた面もあったのかなと思います。

裏を返すと、“待ち”の姿勢の人は、高いポテンシャルを秘めた優秀な人材であっても、振り落とされてしまっていた可能性が高いです。

――優れたゲームプランナーの芽を、業界が自らつんでしまう状況だったわけですね。

吉岡:そもそも、ゲームプランナーの仕事は多岐にわたります。

一般の人が「ゲームプランナー」と聞くと、人気シリーズを手掛ける有名クリエイターをイメージすると思います。

しかし、そうしたトップクリエイターは会社や組織に少人数しかいません。

白鳥:大半のゲームプランナーは、クリエイティビティを発揮するよりも、むしろ「企画書をまとめてプレゼンする」「キャラクターの動きやデザインの約束事を指示書として資料にまとめる」といった、ある種、地味な働きが求められますからね。

――裏を返すと、独創性や発想力などよりも、学びやすいスキルともいえそうですね。

白鳥:ただ、幅広い仕事をOJTだけで体得するのは大変です。そこで、PBCでは初級編を用意して、ゲームプランニングのイロハを学べる環境を用意しました。

そもそもSHIFTは創業期から、ゲーム業界で多くのテスト業務を請け負ってきました。メンバーの卓越したスキルと仕事ぶりが評価されて、さらに上流工程のゲームプランニングの依頼を受けるようになった歴史があります。

すでに弊社に数多く在籍している、ゲーム業界に強いテストエンジニアのネクストキャリアとして、ゲームプランナーの道をサポートしようという発想から、まずPBC 初級編が誕生しました。

吉岡:そして私が入社したタイミングで、中級編を白鳥さんとつくりました。

PBCは、SHIFTのゲームプランナー陣の優秀さを証明すると同時に、人材のスキルを底上げする働きを担ってきたんですよ。

70項目にのぼる知識やスキルが、わかりやすく、しかも「身につけられる」

――PBC 中級編の特徴を教えてください。

白鳥:大きく3つあります。

1つは、先ほどからあげているように体系的に学べるプログラム内容にしたことです。

吉岡:「ゲームプランナーとは何か」といった概念的なところから「ゲーム開発のフェーズごとの作業」「ゲームデザインの考え方」「デザイナーへの指示書の書き方」「リーダーの心構え」など、具体的な知識とスキルを身につけるところまで押さえられます。

――ゲームプランナーの仕事内容を網羅した教育プログラムをつくるのは骨が折れる作業だったのではないですか?

白鳥:いやぁ、大変でしたね(笑)。

吉岡:まずはSHIFTのゲームプランナー陣に声がけし、ゲームプランナーの仕事、必要な知識を洗い出すところからはじめました。

そうしてあがった70以上の項目ごとに、「この内容のノウハウを書けそうな人材」をセレクトしました。結果、ほとんどの項目を内製でマニュアル化できたのは誇らしいところです。

――2つめの特徴は?

白鳥:「実践的で、わかりやすいプログラムである」ことです。

吉岡:たとえば、PBCには「IP(版権もの)に携わる心構え」といった項目があります。いわゆる原作マンガなどがある作品のゲーム化について学べます。

ここではもちろん「IPとは」「IPを扱う際の注意点」などベーシックな情報とあわせて、「版権元ととり交わす必要のある書類の書き方」や「交渉のコツ」など、極めて実践的な所作や心構えを伝えています。

たとえばIP案件をはじめて手がける際、この項目のマニュアルを読んでおくと、スムーズにスタートを切れるようになっています。

白鳥:実践的という意味では、「エンジニアと会話する前に覚えておきたい言葉の定義」や「デザイナーと打ち合わせをする際の勘どころ」のような、コミュニケーション領域も充実させました。

ゲームプランナーは、別の職種のメンバーと対話をする機会がとても多く、そのなかで、基本的な言葉の定義を知らなければ齟齬が生じがちです。

――実地でそうした言葉を覚えてきた人が多いから、往々にして齟齬が起きそうですね。

白鳥:そのとおりです。「現場で覚えられるだろう」と過信した結果おきる齟齬やミス、非効率を避けられるわけです。

――3つめのポイントは?

白鳥:カリキュラムを修了後、最後に必ず検定を受けてもらい、内容が身についたかどうかを可視化していることです。また修了前後で、意識がどのように変わったかのアンケートも実施しています。

「受けっぱなし」で終わらないよう、明確な結果が可視化されるように設計しました。こうした姿勢はSHIFT全体のカルチャーでもありますね。

――PBCを活用してから、社内のゲームプランナー陣に変化はありましたか?

吉岡:「これまでよりスムーズに現場入りできた」「ミーティングがとてもやりやすくなった」といった声が本当に増えました。

もっともうれしかったのは、お客様から「SHIFTはゲームプランナーもレベルが高い」といわれるようになったことでしょうか。PBC 中級編ができてから、そうした声を聞く機会が多くなったと感じています。

また、PBCを外部のお客様に購入いただいたこと、外販サービスとして立ち上げられたこともうれしかったです。

ゲーム開発企業からも好評。個人のスキルアップから業界貢献を

――社内研修用にたち上げたPBCが、ほかのゲーム会社などに導入されはじめたのですね。

吉岡:はい。そもそも中級編を社内活用しはじめたころから、「業界に体系的な学習プログラムがなかったうえ、これだけ使い勝手がよいのだから、『PBCを使いたい』と考えるお客様は多いのではないか」と考えていました。

そんな折、別件で提案にうかがったソーシャルゲームメーカー様からお声がけいただきました。

――まさしく「ゲームプランナーの育成がままならない」部分に課題をもっていらっしゃったのでしょうか。

吉岡:そのとおりです。お客様いわく「ゲームプランナーは企画書を書くスキルが不可欠だが、1つのタイトルを担当すると数年かかるので、ほかの企画を手がける機会が減っている」とのことでした。

白鳥:スキルアップの機会が少ないと、人材の定着率や、魅力的なゲームをリリースする力が低下するおそれがありますからね。

吉岡:それで2024年8月からは、PBCをお客様の要望にそってカスタマイズしつつ、外部に提供しはじめたんです。

――導入後の声は?

吉岡:「スタッフが予想以上に乗り気で受講してくれた」「わかりやすいと好評だった」という声があがるとともに、導入担当者は「メンバーの成長意欲がこれほど高いとは思わなかった」という驚きがあったと伺っています。

研修とアンケートによって、効果を可視化できることも高く評価いただけました。

また、プランナー以外の営業職や人事などコーポレート部門のスタッフも受講してくださり、「プランナーの仕事がよく理解できた」との声があったのも、うれしかったですね。

さらにうれしかったのは、「SHIFTがここまでの知見をもっているのはすばらしいですね」とお褒めの言葉をいただいたことです。

――内製したからこそのご評価ですね。

吉岡:大変光栄でした。

我々が自ら「SHIFTのゲームプランナーはとても優秀なんです」と100回いうより、学習プログラムを使っていただくほうが、よほど響くでしょうからね。

――今後のビジョンは?

白鳥:今後もPBCを多くのゲーム業界の企業様に導入いただくことで、業界の課題解決に貢献していきたいです。

加えて、PBCをきっかけに「SHIFTのゲームプランナーって、凄腕が多いんだな」と認知いただけたらとてもうれしいですね。

吉岡:専門学校などでもPBCをご活用いただけたら、ゲーム業界のさらなる活性化に貢献できると考えています。

また、PBCは今後もバージョンアップをつづけていく予定ですので、SHIFTにゲームプランナーとして参画すれば、こうした学習プログラムの制作にも関わることができます。

業界の課題解決にもコミットできるため、やりがいと醍醐味を味わってもらえると胸を張っていえますね。

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです​)

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