ゲーム開発で不幸になる人をなくす。元開発エンジニアの私が思う、「上流支援」の意義

2023/06/19

ゲームが好きな人のなかには、開発エンジニアやクリエイター、ゆくゆくはディレクターを目指したいと考えている人も多いでしょう。

反対にゲームが好きで制作に関わりたいが、そうした職種は自分には合ってなさそうだと考えている人もいるのではないでしょうか。

今回の主人公、Y.M.はゲーム制作会社で開発エンジニアとしてキャリアをスタートし、3年の経験を経てSHIFTに入社しました。SHIFTでの彼女の役割は、本人曰く「いつも表現に迷うのですが、PM寄りのプランナーだと思っています」。

彼女はなぜいまの仕事にたどり着いたのでしょう。業務を通じてなにを叶えたいのでしょうか。ゲーム開発に携わりたい人、そして既に携わっている人にもぜひ届けたいと思います。

  • サービス&テクノロジー本部 エンターテインメントサービス部 エンターテインメント4グループ Y.M.

    前職スマートフォン向けゲーム制作会社へ開発エンジニアとして新卒入社し、3年後の2018年にSHIFT入社。エンジニア時代から得意としていた運用効率化や問題解決力を活かし、現在は上流支援としてプロジェクト内の改善活動に注力。急にアウトドアの趣味に目覚め、2022年から海釣りとキャンプをはじめた。魚をさばくのがけっこう好き。

目次

いいものをつくりたい、と集まった人たちがバタバタと倒れていく 

───ゲーム業界に入ったのは、当時、Y.M.さんにとって乙女ゲームが癒しだったからとか? 

Y.M.:私、就活を3回やって疲れてたんです。大学生のころに1回、大学院でも就活しましたが結果がでず就職浪人して、もう一度チャレンジ。院では環境微生物学を専攻して、水や土壌に存在する微生物の研究をしていたのですが、社会人としてやりたいことを明確にもてなくて。 

当時は乙女ゲームが私にとっての癒しだったので、ゲーム業界を受けてみようかなと。制作会社に入社して丸3年ほど開発エンジニアとして働きました。開発と並行して業務効率化もしていましたね。プランナーにヒアリングして、エンジニア目線での機能開発や改善を行いました。 

転職を考えたのは、その会社の事業の雲行きが怪しくなったことと、自分にはエンジニアとしてよりもプロジェクトマネジメントでキャリアを拓いていくのがいいと感じていたからです。私は大学で開発を体系的に学んだわけではなく、技術的にみてもまわりのエンジニアに劣っていると感じてもいましたから。 

SHIFTの面接で聞いた「ゲーム開発で不幸になる人をなくす」という思いに強く共感しましたね。 

ゲーム制作の関係者はみんな「いいものをつくりたい」という気持ちをもっているのに、スケジュールが遅れて人がバタバタと倒れていく状況は、業界ではよく見る光景です。それをSHIFTはなくしていきたいんだ、救いたいんだと面接で聞いて。 

私が当時、積極的に業務効率化を行っていたのも、まさに「同じプロジェクトの仲間を少しでも楽にしてあげたい」という理由からでした。私が到底思いつかないような面白い仕様を考えるプランナー・開発力に優れたエンジニア…… 

そういった素晴らしい人たちがスケジュール遅延や課題につまずき疲弊し、リタイアしていくのを見ていたので「私にできることは、この人たちが働きやすい環境をつくることだ」と。 

私自身は面白いゲームをつくり出せないけど、課題解決でそういった人たちを救うことでゲーム制作の一端を担える。そう思ってSHIFTに入社しました。 

───胸が熱くなる志ですね。実際、入社してからの業務内容はどんなものでしたか? 

Y.M.:まずはQAエンジニアとしての入社だったのですが、テスト業務をはじめる前のタイミングでお手伝いをということで、あるプロジェクトにアサインされました。すでにスケジュールの中盤に差しかかっていたのですが、素材制作の進行管理が機能しておらずこのままではリリースに間に合わないということがわかっていたんです。 

計算してみると600人日分の不足でした。間に合わせるには途方もない人手が必要ということです。 

お客様は大手のゲーム会社の子会社で、モバイルオンラインゲームの企画開発および運営などを主な事業とする企業。その企業が、映画制作も手がけるエンターテインメント企業と、日本の人気漫画家と協業してゲームを制作する案件でした。 

作業を洗い出し、必要なものを精査し、リテイク込みのスケジュールを引きなおして。人を増やすにも予算が必要なので、何人いれば間に合うのかを計算して、決裁者に人員追加を相談しました。 

実際にプロジェクトを進めるうえで難しかったのは、協業する両社ともにゲーム業界の常識が通用しないこと。非常にこだわりが強く、モノづくりに妥協しないスタンスでした。レギュレーションも厳しくて、宗教的・性的なイメージを少しでももたれるような描写は一切禁止。“クリスマス”はウィンターホリデイに、“脇の下を見せる”ポーズさえもNGということで、差し戻しや修正がはいったのが想定外でしたね。 

指摘自体は想定外ではあったものの、「スケジュールに影響の出そうな手戻りに対応する」ということ自体は過去にも経験があり、各種調整を行うことで事なきをえました。結果、 リリースに間に合ったというのが入社してすぐの成果となりました。 

QAテスターとしての仕事ではなく、偶然ですがPM寄りの仕事からスタートして、いまもその延長戦にいるという感じです。 

お客様、そして業界の課題にも集中して向き合えるPMという立場 

───その後はまた別のゲームを担当された? 

Y.M.:はい。ある有名少年漫画を題材にしたスマホゲームで、登場キャラクターを編成して戦うカードゲームです。 

お客様の課題としては属人化が進んでしまい、人手もたりないということで、経験ある担当者が本来時間をとるべき業務に手を割けていない状況でした。そのたった一人の担当者が業務を担ってしまっていて体調を崩したら……という危険な状況だったんです。業界ではよくあることかもしれません。 

そこでSHIFTが支援に入り、業務の標準化、効率化のために誰でもできる作業を切り出して、マニュアル化することに。標準化のためにはまずは実作業を覚えないといけませんから、私自身も現地で実務に携わりました。そのなかでの気づきを、標準化・効率化につなげ半分の時間で済むようになった業務もあります。 

切り出された業務は、SHIFTでプランナーを目指す人材に担ってもらうということで対応しています。 

ゲーム開発に携わりたい方はとても多いのに、業界では経験が求められる仕事ばかり。「経験」を与える場が不足しているというのは、お客様とSHIFTで共通の課題意識でした。そこで、未経験から経験を積んでもらえるよう、こうした新しいスキームを関係者協議のうえでつくりだしたんです。 

SHIFTで働く醍醐味はこうした「課題解決に集中できる」ところだと思います。事業会社はどうしても売上をあげないといけない。それが第一優先になって、手をつけるべき課題に目をつぶらざるをえないこともあるんですよね。 

開発が複雑化し、プロジェクトの難易度も上がっているなかで、仕組化・標準化というSHIFTらしい解決策でゲーム開発における課題に向き合っている。それは「新しいモノづくりのかたち」への挑戦だと思います。 

ですから私たちの仲間になってくれる人としても、業務と業界どちらに対しても改善視点をもっている人がよいと思います。ゲーム愛好者にとって花形の開発エンジニアやプランナーではないけれど、私たちのようなPMという立場だからこそ、ゲーム開発という仕事をよりよく変えていける。そんな気がしています。 

「人を見る」マネージャーがいて、不安がないといいきれる 

───Y.M.さんがSHIFTで働きつづける理由は? 

Y.M.:一つは、やるべきことを強制されないことです。目標やミッションはもちろんあるけれど、どうやるべきかという方法の部分は個人に任せられる。一方で相談はできるので、お客様に自信をもって提案ができるという点もあり、面白さと心強さがいい具合にミックスされています。 

もう一つは数字だけでなく「人を見る」マネージャーの下で働きたいと思っていたんですが、それが叶っていることです。上長がメンバーのスキルセットを理解していて、適材適所で案件にアサインしてくれています。そんな上長へ信頼を寄せていますし、多くの部下に慕われるちからをこれから学びたいですね。 

個人的には去年入籍したこともあって、上長に子どもができたらいいなと思っていると伝えました。そのときは働きやすい方法を一緒に考えていこうといってくれて、何も不安はありません。 

私が所属する上流支援の部署はプランナーが100名を超えたところ。私自身も前述したプロジェクトのPMを束ねるサービスマネジャーになったこともあって、部署の進化と自分の成長を感じています。 

「ゲーム開発に携わるすべての人を幸せに 」という志はもちつづけながら、それを多くのメンバーにも伝えていける、いい影響を与える存在になっていきたいですね。 

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)