エンジニアにとって、自身のキャリアパスをどのように設計するかは永遠のテーマの一つかもしれません。昨今の技術の進化/多様化に伴い、取り扱う技術の選択肢はどんどん広がりをみせていますが、一方でどのようなロールでの経験を積み重ねながら技術に向き合うべきか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
そんなエンジニアのキャリアパスについて、今回話を聞いたのはVPoEを担う池ノ上 倫士。
エンジニア一人ひとりが輝けるように、会社としてどのような工夫をしていて、またどんな環境の整備を進めているのか。一人ひとりのキャリアにとどまらない「意義」とは?
技術系のカンファレンスやコミュニティを多数運営するチャンドラー彩奈(以下、あやなる)がインタビュアーを務め、深ぼっていきます。
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VPoE 池ノ上 倫士
2017年にSHIFT入社。それ以前は、SIerにてWebサービス事業者常駐やECシステムの開発・保守・運用を経て、ベンチャーに転職。経営企画部技術戦略室としてITの導入とサービスプロダクト開発、および グループ経営管理に従事。SHIFT入社後は、技術開発部、サービスプロモーション部、技術推進部、技術統括部に所属。技術統括部 統括部長として、テストの自動化・アジャイル開発の支援を中心とするモダン開発の技術導入と定着推進に従事した後、VPoEに。
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人材戦略統括部 チャンドラー 彩奈(あやなる)
学びの場コーディネーター / 一般社団法人 Agile Japan EXPO 代表理事
エンジニアとともにつくるエンジニアの学びの場づくりに日々取り組んでいる。
目次
スキルアップはカルチャー。「楽しく学ぶ」が当たり前の場所
あやなる:私が今年4月に入社する前は、「SHIFTってテスト・品質保証の会社で、最近だとアジャイルにも力を入れ出しているんだな」といった印象だったのですが、実際になかの人になってみると、それ以外にもクラウドやセキュリティ、AIなど、各分野にエキスパートがいて驚いています。
池ノ上:流行りの技術に特化した小規模ベンチャーもたくさんありますが、SHIFTはそれよりも総合商社みたいな感じですね。一方で巨大なSIerでもない、中間に位置することがエンジニアにとって魅力的に映ると思います。
私たちは「品質保証の会社」としてやってきましたが、お客様にとっての「DXパートナー」となると宣言し、現在では、DXの支援にも力を入れています。
宣言したのは、ちょうど経産省のDXレポートが発表されて、世の中的にもDXに対する注目度が急激に高まっていたタイミングですね。
「DXとは何ぞや」という議論を深めていきながら、必要なサービスを拡充させていったという背景があります。
あやなる:短期間でここまでのエキスパートが集まっているのは、本当にすごいことだと感じています。SHIFTは採用が強いですね。
池ノ上:もちろん採用もありますが、それ以外の要因としてM&Aもありますね。
SHIFTってファンクションカットでのM&Aが多くて、技術をもっていて、かつ思いがいっしょの会社にグループジョインしてもらっているのも、多様な技術力を実現している大きなポイントだと思います。
あとは、内部の努力もありますね。みんなめっちゃ勉強してますよ。
あやなる:たしかに、SHIFTのメンバーって「学びへの意欲」がとても強いですよね。
私自身、SHIFT社内の勉強会や外向けのミートアップのような場のコーディネートをさせてもらっていますが、それらに対するメンバーの参加率や熱量がものすごく高いと日々感じています。
あと、勉強できる場についてもしっかりと整っていますよね。
池ノ上:私としては、エンジニアって勉強を楽しんでいる人がなるべき職業だと思っているので、各人が誰に強要されるでもなく自然に勉強していること、それが当たりまえに根づいてることが会社として大事なカルチャーだと思っているんです。
そのうえで、SHIFTはエンジニアの戦略的なプロモーションにもすごく積極的です。
あやなる:イベント主催や、カンファレンス協賛、技術ブログなど、「どんどんエンジニアは外に出ていって」という姿勢ですよね。
のびのびと勉強したり、外にアピールしたりといったカルチャーは私も入社してすぐから感じています。
池ノ上:そういったエンジニアを外に打ち出していく点は、昔からブレずに一貫している印象で、実際、私も入社直後に代表の丹下と会話した際にも「当然だよね」と。
それまでいろんな会社を見てきましたが、当時のSHIFTの規模でそれができているのは本当にすごいことだと強く感じたのを覚えていて。
代表の考えが自然と、学びや発信のカルチャーとして根づいていったんだろうなと思います。
新事業やサービスが次々と生まれるから、新しいキャリアラインやポジションもつくりやすい
あやなる:池ノ上さんからご覧になって、SHIFTのエンジニアってどんなキャリアを志向している人が多い印象ですか?
池ノ上:例えば私のようなオープン系の技術スタックをもつアジャイルチームやクラウドチームにいる人たちは、新しい技術を使って、ビジネス的にも、ものづくり的にも成功したいと考えていると思います。
その技術をリードしたい/第一人者になりたいと。
あやなる:バックグラウンドとしてはどんな方々になりますか?
池ノ上:さまざまですけど、SIerからも多くジョインしてくれていますね。
SIerって、現場のメンバーであればあるほど「こうすれば成功する」ってわかってはいて、本当は効率がいいことをやりたいんだけど、商習慣としてどうしても旧態依然としたやり方をせざるを得ない部分があると思います。
そういうところからの出口を求めて、SHIFTにきている人が多いと感じています。
あやなる:SHIFTってまだまだベンチャー気質が残っていて新しいことにどんどんとチャレンジできる環境がある一方で、大きい会社になってきているので、社会的に影響範囲の大きな仕事もできる。その両面に魅力を感じる人も多そうですね。
池ノ上:いまSHIFTでは新しい技術にも一生懸命チャレンジしているのですが、例えばAI一つとってみても、若い人がいきなりプロジェクトのトップになったりしていますよね。
新しい技術領域であればあるほど、キャリアの差が出にくいので、頑張れば自分がプロジェクトを牽引する立場になれるわけです。
会社がさまざまな事業を展開するなかで、そこに新しいキャリアも生まれやすいと考えています。
分野ごとの専門家/エキスパート「スタッフエンジニア」というキャリア
あやなる:キャリアという観点だと、エンジニアのみなさんって、ロールやポジションにこだわるというより、とにかく技術を突き詰めたいという人が多い印象です。
そんな「エンジニア一人ひとりが輝けるSHIFTのロールのあり方」って、池ノ上さんとしてはどう考えていますか?
池ノ上:そこについてはいままさに、「スタッフエンジニア」の考え方をとり入れたいと思っています。
少し背景のところからお話ししたいのですが、日本って、一般的にはITベンダーと事業会社がきっちりとわかれていて、エンジニアの多くはITベンダーに所属しています。
一方で例えばアメリカでは、事業会社のなかにも多くのエンジニアが所属していて、ベンダーに負けないくらいITリテラシーが高いといえます。
日本のITが進まない要因の一つがここにあると考えているのですが、じゃあなぜ日本の事業会社にエンジニアが少ないかというと、端的に表現すると「キャリアがない」からです。
あやなる:キャリアがないとは?
池ノ上:事業会社に就職すると、エンジニアは一般的に情シス部門に配属されることになります。
多くの日本の企業にとって情シス部門は管理部の一つなので、メイン業務はIT機器やシステムの調達/管理の仕事で、主な事業KPIはコスト削減になります。
つまり、いまでこそIT投資をして事業を伸ばそうという動きがあるものの、もともとはコストをかけて事業を伸ばそうとすると怒られるポジションなんです。
一方でITベンダーはどうかというと、こちらはできるだけお客様から仕事をいただこうとするモデルなのであって、それ故に技術的なブラックボックスになる大きな力学にもなるわけです。
このように、「ビジネスのことは事業会社、技術のことはITベンダー」という感じで棲みわけがなされていたというのが、これまでの日本のエンジニアをとり巻く環境でした。
このなかでSHIFTとしては、キャリアアップしてビジネスを伸ばそうとするのであれば、エンジニアリングだけにこだわるのではなく、ビジネスのことも理解しないといけないよね、というのが大前提にあると考えています。
あやなる:そこに対して、先ほどおっしゃっていたスタッフエンジニアはどうはまっていくのでしょうか?
池ノ上:要するに、分野ごとの専門家/エキスパートを立てる、ということです。
いま、現場で日々上がってくる課題やそれらに対するノウハウを集めるナレッジマネジメントの仕組みをつくろうとしていまして、SHIFTとして蓄積してきた技術力を活かしてリーダーシップを発揮する人材をスタッフエンジニア、もしくはそのうえのディスティングイッシュトとして擁立することで、スペシャリストとしてのキャリアパスをつくっていこうとしています。
このスタッフエンジニアの人たちは、ただ技術に詳しいだけではなく、人に教えたり積極的に社内外へと情報発信することで業界に貢献したり、ときには炎上案件に入って問題解決したりしていくようなロールが期待されています。
キャリアに安心感を生むには、事業づくりや成長に貢献するエンジニアになること
あやなる:チームにすごいエンジニアがいると、彼らはチーム長やマネージャーに抜擢されてマネジメントを任されることになるので、技術を突き詰めたい本人としては苦しみの一つになっているじゃないですか。
そこに対してSHIFTがやろうとしているのは、「スキルのある人に称号を与えて、エキスパートを立てて、給与やその人のキャリアに紐づける」という仕組みづくりというわけですね。
池ノ上:ここで大事なのが、SHIFTが従来から大切にしている、優秀な人にはしっかりと給与も支払うという考え方です。
先ほどお伝えした「ビジネスも技術も理解する」という大前提でスタッフエンジニアのようなことをやろうとすると、必然的に市場価値が高くなります。
その点、市場価値に応じて給与を決めるというのが、SHIFTのカルチャーでもあり強みです。
あやなる:自分の技術を突き詰めながら、そこで培ったノウハウを社内や社外/業界に広げていって事業やお客様に貢献する。
さらに、それらの活動が給与にもしっかりと反映される。これができたら、本当にすごいですね。そこまでやれている会社って、まだまだ圧倒的に少ないですよね。
池ノ上:いろんな企業が何回もやろうとしているのですが、結局は大きな企業が研究部門的な運用をするにとどまっていて。先ほどお伝えした「エンジニアリングとビジネスの両輪」が壁になっているのでしょう。
研究部門って、不景気がきたら最初に縮小させられちゃうわけです。ちゃんと事業の成長に貢献できる存在としてのエンジニアリング部隊という観点で、スタッフエンジニアの仕組みを整えていきたいところです。
そうしないと、エンジニアのキャリアとしても安定しませんからね。
あやなる:なるほど。池ノ上さん、SHIFTの技術のトップとしてここでいっちゃったからには、ちゃんと進めないとですね(笑)。
池ノ上:私たちが置かれている状況を省みると、海外のイノベーティブなITのプラクティス/テクノロジーが出てきていて、それをうまく使った事業にかなりやられている感じだと思っています。
幸か不幸か、そこに対してそのまま私らが真似しようとしても絶対に成功しないので、しっかりと自分たちなりのプラクティスをつくり、事業をつくっていく必要があると考えています。そこに向けて、まだまだ頑張りますよ。
あやなる:今日はありがとうございました!
(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)