【後編】日本の未来のために、人事の私たちに何ができるだろう  vol.1~「幸せに働く」を科学したい~ 

2023/08/02

「日本の未来のために、人事の私たちに何ができるだろう」。そんな想いのもと、各界のCHROと次世代の人事のあるべき姿を話し合う、本連載。 

初回の今回は“「幸せに働く」を科学したい ”をテーマに、株式会社i-plugのCHRO土泉さんをゲストに迎え対談を実施しました。前編では土泉さんの視点からみたSHIFT、そして現職での人事施策について伺いました。 

後編である本記事では、対談のテーマ「幸せに働く」の核心へ近づいていきます。SHIFTが抱く想いと、実際の施策や今後やろうとしていることを、ぜひ読者のみなさんにも知っていただければさいわいです。

関連コンテンツ

  • 株式会社i-plug 執行役員CHRO 土泉 智一

    新卒で大手人材サービス会社に入社し、法人営業として9年間従事した後、2006年に人事として株式会社アイスタイルへ。人事責任者として、IPO、海外法人設立、関係子会社PMIなど推進し、13年に渡りグループの成長拡大に人事・組織面から貢献。同社関係子会社取締役を兼務。その後、2019年株式会社SHIFTに入社。本社人事部門の責任者として急拡大するグループを支えたのち、2021年9月i-plugに入社。執行役員CHROに就任 

     

  • 株式会社SHIFT 上席執行役員 兼 人事本部 本部長 菅原 要介

    慶応義塾大学大学院 理工学研究科修了。株式会社インクス(現:SOLIZE株式会社)に新卒入社し製造業コンサルティングを経験後、2008年SHIFTに参画。品質保証事業を本格化する折に、大手Web制会社QA部隊の組織化コンサルを手がける。その後、新規事業の立ち上げを経て、ビジネストランスフォーメーション事業本部全体の統轄に加え、採用・人事施策・人材マネジメントなど、SHIFTグループ全体の人事領域を管掌している。 

目次

採用数が桁違い=個人をおざなり、ではない 

菅原:SHIFTはこれまで急成長をつづけているけれど、外からは「大量採用してるし、一人ひとりのことはおざなりでしょ?」と思われがちなんですよね。だけど実際は真逆。個人にドリルダウンして、一人ひとりにめちゃくちゃフォーカスしてるんです。 

土泉:それが現れているのが評価会議ですよね。 

菅原:はい、まさに。半年間のうち1.5ヶ月間、年間で3ヶ月をかけて一人ひとりについて、その人の上司とともに「働きぶりや未来」について話しています。私も100時間くらい費やしていました。 

5年後の希望年収を聞いていて、それが現状の成長カーブだと到達できなさそうなときもある。その場合は何が原因かを協議して、本人が輝くキャリアを得られそうなアサインに変えるとか、本人とも対話しながら目標の再調整をするといったサイクル。土泉さんがいた2017年ごろからやっていますね。 

土泉:なぜそこまでやるんですか? 

菅原:日本は、迫りくる人口減少時代に、DXで企業の競争力を上げていかなくてはいけない。しかし、その担い手であるITエンジニアの人口は圧倒的に不足しています。現在約100万人ですが、近い将来160万人位まで増やしていく必要がある。 

そのためには、仕事にやりがいを感じ、誇りに思い、キャリアを伸ばしていくことができるエンジニアを増やしていかないといけない。さらに新卒や、他業種からの未経験でも挑戦したいと思ってくれる環境をつくりあげていく必要があると思っています。 

SHIFTは数あるIT企業のなかでも率先して、こうした環境を実現し、世のなかに広げていくことで、日本のIT人口を増やしていくことに貢献していきたいと思っているんです。 

モチベーションを下げる要因を、「すべて取り除く」 

土泉:自走できる人材を会社は求めがちですが、エンジンをもともと積んでいる人って少ないと私は思っているんです。だから「やりがい」や「モチベーションを上げる施策」は意識的に組織がつくりだすことが大事じゃないかなと。 

菅原:そうですね。個人の感情やモチベーションって、仕事の成果ひいては定量的なデータにも影響が出ると思います。その場合に目標到達のために手をうつ、目標自体を変えるなど本人と上司の間でやりとりをする。 

それがベースにある一方で、SHIFTでは「生産性を下げかねない理由」をすべて洗い出して、従業員からの相談があれば、組織としてできる“おせっかい”をやっていこうとしています。 

例えばもっとも金利のいいレベルの住宅ローンを準備しておくとか、法的に困ったら弁護士、医療で困ったら医師に相談できるとか。悩むことなくSHIFTに相談すれば大丈夫、という状況をつくろうと。 

土泉:すごいな……最近はすこし気にしはじめている会社も出はじめましたが、通常、人事は会社の業務に関連すること以外に入り込まないですよね。プライベートの悩みに対してこれほど網羅的に施策をうつなんて。 

菅原:従業員の悩みをうむものをすべて排除して、仕事に集中できる環境をつくりたいんです。楽しく働いてもらう、が一番だから。 

土泉:さまざまな人事制度を準備するよりも、前提として「働きたいけど働けない」という物理的な事象や要因を取り除くことが大事だと思うんです。このSHIFTの考え方って、ものすごく本質な気がします。 

菅原:代表の丹下もよくいうんだけど、会社は「人生を楽しむための手段」だと。困ったことがあったら一人で悩まないで、すぐに会社に相談する。そしてスピーディに解決して仕事を楽しんでもらう、余暇も普段の生活もポジティブに過ごしてもらいたいなと思っているんです。 

一人ひとりと向き合うために「科学」する 

土泉:組織が成長して事業が複雑化すると、働く人も価値観も多様化しますよね。個人に向き合うことがどんどんむずかしくなっていきますが…… 

菅原:そうだよね。だからもっと個の成長について、「科学」したいなと思っています。「やりがい」「仲間」「給与」の3要素をさらに分解して、その人にとって大事なものを提供して満たしてあげたい。そういう情報をSHIFTではヒトログに詰め込んでる。 

土泉:それって個の価値を最大化するという、人的資本経営のど真んなかですよね。 

菅原:SHIFTでは人的資本の価値を、人数×個の価値×年数=LTVというシンプルな数式で示しているのですが、それぞれのパラメーターにつながるKPIを分解して、相関関係を見いだせないかと挑戦中です。 

土泉:うちは適性検査も事業の一つにもっていますが、当然あらゆるデータが蓄積されているんです。それらのデータを分析して、顧客企業に提供するサービスも展開しはじめています。 

例えば、社員の活躍傾向などがわかれば、個の価値を最大化することにつなげられると思うんです。 

菅原:そうそう。そういうピープルアナリティクスを極めて、一人ひとりに適した対応を、どんなに組織が大きくなってもやっていきたいですね。 

土泉:しかもそれをSHIFTの場合はコンサルも外販ツールもいれずに自社でやっちゃうのがすごいですよ(笑)。外部の支援を得ずに、人事施策と成果を定量的に測るなんてむずかしすぎると思いますよ。 

菅原:人事戦略と経営戦略が連動することって、言葉では簡単だけどむずかしいよね。でも本当に大事なことだと思っているから。 

土泉:一般的に、まだまだ人への投資は全体予算の「調整部分」として後回しにされやすい部門でもあります。 

菅原:物を買う1億円と、研修費としての1億円。どっちを選ぶというときに研修の効果は説明しづらいですもんね。そこに対してSHIFTでは方程式をつくって説明します。 

わかりやすい例は、社内キャリアアップ制度のトップガン。検定の一種ですが、合格すればお客様からの単価に反映されるから、売上に直結する。なのでその分、目いっぱい報酬として還元する。 

SHIFTでは人的資本への投資どれをとっても、社内イベントの運動会でさえ参加率や満足度などをKPIに目標設定して、費用対効果はもちろん、その数値がどれだけ上昇するか、仮説検証を繰り返すんです。 

あとは妥協しないという絶対的なポリシーも大事にしてますね。経営者の胆力かもしれない。社会インフラのような会社を創ろうとしているし、そのときに大事なのはフェアネスや長期的な視点だから。足元の利益じゃない、将来をみて人事施策についても判断していますね。 

土泉:SHIFTは経営の方針が本当にぶれないですよね。 

菅原:「人が中心だ」というのが経営の基本精神としてあって、そこに「科学」をかけあわせようとしているのがSHIFTらしさかもしれないです。科学できたら、たくさんの企業にもぜひ使ってもらいたい。そうすることで幸せに働くひとが増えて、会社も成長して、そんなうれしいことはないですから! 

―――今回の対談は、SHIFTの成長期を支えてくれた土泉さんをお招きしました。社内外の視点から気づきをくださった土泉さん、ありがとうございました! 

次回以降も、CHROをお招きして日本の未来のために、人事の私たちにできることを語り合います。カルチャー、多様性、ピープルアナリティクス、リーダーシップなどをテーマに考えています。ご期待ください。 

(※本記事の内容は、取材当時のものです)​

この記事のタグ