事業会社か、SIerか。あなたはどちらのやりがいに心を動かされるか

2025/12/17

2025年10月23日、「ニトリデジタルベース×SHIFT 共同開催ウェビナー PM職に求められる“技術×ビジネス”の力〜事業会社 or SIer キャリアを築く選択肢〜」が開催されました。

プロジェクトマネージャー(PM)としてのキャリアを考えたとき、多くの人が「事業会社」と「SIer」という2つの選択肢の間で思い悩むのではないでしょうか。

同じPMという職種でも、所属する企業のビジネスモデルによって、その役割、求められる成果、そして未来のキャリアパスは大きく異なります。

ニトリグループのDX戦略を担うIT・デジタルの中核拠点である株式会社ニトリデジタルベースと、IT総合サービス企業として多様なお客様を支援するSHIFTの対談から、両者のPMのリアルな違いを紐解きます。

  • 株式会社ニトリデジタルベース 取締役 兼 株式会社ニトリホールディングス 情報システム改革室 システム企画・構築グループ シニアマネジャー 杉山 淳祝 氏

    フューチャーアーキテクト、ファーストリテイリング、個人での起業を経て、2021年にニトリへ入社。2022年情報システム改革室シニアマネジャー 兼 ニトリデジタルベース取締役に就任し、EC・物流・店舗運営・SCM・デジタルマーケティングなど、グループ全体のバリューチェーンを支えるシステムの企画・開発・運用を管掌。

  • 流通物流事業部 事業部長 櫻井 優

    前職は独立系IT企業にて通信(大手キャリア)8年、金融(メガバンク)4年の業界経験を有する。2016年11月にSHIFT入社。金融部門のグループ長を経て、流通部門でビジネスユニット長補佐に着任。2021年には1,200人規模の産業流通・通信サービス部(当時)の部長職に。2024年9月より現職、流通物流領域の営業・デリバリ組織を束ねている。

目次

両社のビジネスモデルから見えるPMの立ち位置

司会:今回は事業会社とSIerそれぞれのPM像を紐解いてまいります。まずは両社のビジネスモデルを教えてください。

杉山氏:私が所属するニトリホールディングスの情報システム改革室、これと同じ機能をもっているのがニトリデジタルベースです。両者は一体の組織となっています。

「暮らしの豊かさを、世界の人々に提供する」をロマンとして掲げるニトリは「製造物流IT小売業」として、商品の企画・製造から輸送、店舗での販売まで、一連の流れのすべてをニトリグループ内部で行っています。

ニトリデジタルベースは、この巨大なバリューチェーン全体のシステムを企画・開発・運用し、事業そのものを支え、成長させることが役割です。

PMの採用においては、主に「ミドルレイヤー」と「シニアレイヤー」を募集しています。

ミドルレイヤーは小中規模の要件定義や設計など開発をリードする役割で、シニアレイヤーは物流、サプライチェーン、管理会計などの明確なドメイン知識をもって、経営層とコミュニケーションをとりながら業務改革を行うITを企画します。

櫻井:私たちSHIFTは、お客様の事業を支えるITプロダクトやサービスをワンストップでご支援する「IT総合サービス」を手掛けています。

品質保証を軸としながらも、ITコンサルティングから開発、セキュリティ、CS運用まで、グループ40社が“ONE SHIFT”となり幅広いソリューションを提供します。

お客様の事業企画の段階から、第三者的な立場で専門知識やノウハウを活かしてご支援するのが私たちのビジネスモデルです。※

(※SHIFTは自社開発プロダクトやサービスをもつ事業会社としての側面もありますが、今回はSIerとして登壇しています)

SHIFTはIT業界の多重下請け構造にメスをいれるという強い思いから、ほとんどの案件がプライムでの受注。業界ごとに事業部があり、以下大きく3つの参画に分かれます。

「全体PMO」はお客様の右腕となってプロジェクトを推進します。また、「品質PMO」はテスト計画の作成や推進、コントロールとクロージングを担います。

そして「品質保証PM」は10~100名規模のテストチームをけん引するポジションです。

事業貢献とプロジェクトの成功──PMに求められること

司会:本日のメインテーマの1つですが、PMに求められる姿勢や成果について、事業会社とSIerではどのような違いがあるのでしょうか。

杉山氏:事業会社のPMは、一言でいうと「事業の成功」が目的です。ITプロジェクトを立ちあげる際には、必ず「売上を向上させる」「コストを削減する」といった事業上のゴールを設定します。

システムを企画・開発し、無事にリリースしただけでは、決して成果を出したとはいえません。

実際に、もともと考えていたシステム企画通りの成果をだし、事業への貢献ができてこそプロジェクトが成功したといえるのです。

道のりはすごく長く、責任も重いですが、その分やりがいがあるポジションだと私は思っています。

司会:ありがとうございます。事業そのものへの強いコミットメントが求められるのですね。では、SIerであるSHIFTはいかがでしょうか?

櫻井:数多くの支援実績がある私たちに対して、お客様はナレッジやノウハウを期待されています。

「過去の成功事例をもとに、このプロジェクトも成功させてほしい」という期待を強く寄せられるんですね。

ですからPMとしては、納期やコストのコントロールといった点について、いかに優先度をトリアージしながらプロジェクトオーナーのお客様とコンセンサスをとるか。

また、様々なベンダーさんがいらっしゃるなかで、うまく間をとりもってプロジェクトをしっかりと進めていくことが重要です。

そこで必要になるのが、以下4点です。後ほどご紹介するクレド(行動指針)にも似ていますが。

ベーススキルは必要ですが、SHIFTは社内検定や教育スキームもしっかりと整えていますので、アソシエイトクラスの方にも挑戦してもらえる環境です。

そしてなによりもお客様に喜んでいただくことを自分自身が楽しめるかという点が大事だと考えています。

私たちはサービス業なので、お届けしたサービスでエンドユーザーに喜んでいただき、そこに仕事のやりがいを感じられるかどうかが一番大事です。私はずっとそこを大事にしてきています。

杉山氏:最近は技術知見をもつお客様も増えていますから、期待値もあがって、そのコントロールが非常にむずかしい部分ではないですか?

櫻井:おっしゃる通りで、“審美眼”をおもちのお客様は増えていますね。本当に費用対効果が出るのかを、リテラシーをもってみていただくケースが最近は多いです。

それに対しては個々のスキルセットだけでなく、ソリューションとしての強み、つまり私たちの実績や、類似プロジェクトでの成功事例が重要になると考えています。

“好奇心”と“ベンチャーマインド”。共通する成長ドライバー

司会:いまお話しいただいたようにゴールや責任範囲、期待値が違うということは、求められる人材像も変わってきそうですね。ニトリ様ではどのような人物を求めていらっしゃいますか?

杉山氏:ニトリでは「4C(チャレンジ、チェンジ、コンペティション、コミュニケーション)」という言葉を大事にしていますが、特にいまのITポジションでは「好奇心」が重要だと考えています。

ニトリは2032年に売上3兆円という大きな目標を掲げており、これを達成するにはIT・デジタルの力が不可欠です。

「非線形」の成長のためには、いままでやっていないような、前人未到のトライをしていかなければなりません。

好奇心をもって新しい技術を探り、どうすれば業務や経営がよくなるかをつねに考え、イノベーションの種を見つけたら果敢にチャレンジしていく。そういったサイクルを楽しめる方がニトリに合うのではないでしょうか。

司会:ありがとうございます。SHIFTはいかがでしょうか?

櫻井:私たちにも行動指針としてのクレドがあります。

このベースにあるのが、昔から変わらない「ベンチャーマインド」です。会社は大きくなりましたが、ベンチャーのもつスピード感や、前のめりなアグレッシブさは忘れたくない。

私たちの仕事は、スマートに脳で汗をかきながら、いかに知識の再分配を業界に対して行えるサービサーになっていくか、ということです。

私たちはつねに新しい技術やさまざまなプロダクト、アーキテクチャーにふれる立場ですので、杉山さんがおっしゃった「好奇心」は私たちにとっても非常に重要です。

司会:お話を伺っていると、事業会社とSIerという違う業態でありながら、「変化」「挑戦」「前のめり」といったキーワードが共通しているのは非常に面白いですね。

櫻井:時代背景も関係していると思います。レガシーなシステムが淘汰され、先進的な技術が次々と出てくるなかで、エンジニアはつねにキャッチアップしつづけなければなりません。

特にそれが強く求められる時代が到来しているのではないでしょうか。

杉山氏:たしかに、そうですね。SHIFTさんはベンチャー魂を掲げていらっしゃいますが、ニトリもまだまだベンチャー魂をもって、いろんなことに果敢にチャレンジしなければいけないと思っています。

あなたはどちらで成長したい?PMキャリアの選択肢を考える

司会:最後のテーマとして、みなさんが気になるキャリアパスについて伺います。事業会社であるニトリさんでは、PMはどのような未来像を描けるのでしょうか?

杉山氏:ニトリのPMのキャリアパスは、実は無限にあります。綺麗な一本道というよりは、さまざまなことにチャレンジしながら専門性を磨いていくイメージです。

まず「横軸」として、ニトリは製造、物流、貿易、小売など、多様なバリューチェーンを自社で担っています。

物流のプロジェクトに携われば大手物流会社のような経験ができますし、製造なら大手メーカーのIT経験が積めます。このように事業領域が横に広いのが特徴です。

そして「縦軸」として、事業や経営レベルでのコミットメントまで求められます。ヒト・モノ・カネをコントロールするPMは、経営もできる。

ですから、最終的なゴールとしてプレジデントや執行役員になることも、当然キャリアパスとして存在します。

上司や組織と相談しながら、ご自身のやりたいことや夢がかなえられるキャリアパスを決めていってほしいですね。

司会:縦横に縦横無尽に動きながらキャリアを広げていくのですね。一方、SHIFTではどのようなキャリアパスがあるのでしょうか?

櫻井:弊社では、大きく分けて3つの道があります。1つ目は、組織を率いる「ラインマネジメント」の道です。グループ長や部長、事業部長へとキャリアアップしていきます。

2つ目は、現場の最前線で専門性を極めるスペシャリストの道。最近、その最上位である「サービスエキスパート」という役割を設立しました。

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そして3つ目は、セルフバリューを武器に戦う「コンサルタント」への道です。

司会:志向に合わせて、進むべき道を選べるわけですね。

櫻井:はい。PMOのキャリアを伸ばしたメンバーが、自ら手をあげてコンサル部門に異動することも普通に行われます。

キャリアパスのチェンジを、ご自身の力で柔軟につかみとることができるのが弊社の特徴です。

司会:技術面への関わり方にも違いはありますか?例えば技術選定などには、どのように関与するのでしょうか。

杉山氏:ニトリのPMは、技術選定や開発プロセスの設計にまで深く関与しなければなりません。新しいプロジェクトが立ちあがれば、当然、技術選定からスタートします。

技術にくわしいアーキテクトと相談しながら、標準的なフレームワークはありますが、ときには試行錯誤しながら、自分たちでアーキテクチャーを選定していく。オーナーシップをもって関われるのが特徴です。

櫻井:私たちの場合は、技術をクリエイトするというよりは、お客様が選定された技術をうまく使いこなすことが求められます。

その結果、さまざまな領域のアーキテクチャーや先端技術にふれることができるのが大きなメリットです。

また、第三者的な立場からお客様の開発プロセスそのものを俯瞰し、抜本的な改善提案を行うことも多いです。

例えば「この外部設計書の粒度がよくない。それがソフトウェアテストで不具合が混入する原因になっており、本番障害で苦しんでいるので、ここにメスを入れるべきだ」と、お客様の外部設計書のフォーマットそのものを変えましょうと提案するようなイメージです。

ドラスティックに動いてやっていくのは非常にチャレンジングで面白い仕事だと思います。

司会:ニトリ様が語る「事業成長を自らの手で実現する喜び」と、SHIFTが語る「多様なプロジェクトを成功に導く達成感」。どちらのやりがいに、心を動かされたでしょうか。

両社のリアルな違いを基に、あなた自身の理想のPM像を描き、未来のキャリアを切り拓いていってください。

(※本記事の内容および対象者の所属は、イベント開催当時のものです)

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