研究力を上げ、日本に力強い未来を──大学DXにまい進するコンサルタントの原動力 

2024/01/15

「大学の事務的な手続きの効率を重視した業務改善が、結果として大学の本分である学術研究を阻害してしまうようなことになってしまうと、本末転倒です。何が利で、何が害かをしっかり整理して情報管理していかないと、本当の意味で“価値あるDX”とはいえません」

こう語るのは、コンサルティング部コンサルティング3グループのT.S.。彼が1年半ほど前から支援しているのは日本有数の国立大学です。

ここ数年、DX支援に積極的に取り組むSHIFTですが、大学に対する支援は一般企業に対するそれとどう違うのでしょうか。また、T.S.が感じる苦労、そしてやりがいは──。10年先のロードマップを手に奔走する彼に、直撃してみました。

  • サービス&テクノロジー本部 コンサルティング部 コンサルティング3グループ グループ長補佐 T.S.

    国内SIer新卒入社。小売・流通業大手顧客基幹システム保守運用プロジェクト保守改修の要件定義からリリースまでの進行管理と、一連の開発プロセスにおける品質管理を経験その後、ITベンチャー企業(ERPパッケージベンダー)入社。大規模プロジェクトにおけるテストマネージャサブシステムUI/UX刷新のプロダクトオーナー品質管理責任者を経験した後にSHIFTへ入社。入社後は主に中央省庁での大規模プロジェクトにおけるPMO支援や、顧客DX推進プロジェクトをリード。現在はグループ長補佐としてマネジメント業務にも従事している。 

目次

根気強くアウトプットを出しつづけ、“コンサル不信”から信頼獲得へ 

──まず、いま担当している国立大学法人のDX支援について概要を教えてください。

T.S.:2022年から、事務業務の効率化に向け伴走支援しています。基本構想に基づいて学内のDXが急務となっていたことが背景としてありました。

初年度は「DXとはそもそも何なのか、何のためにやるのか」をじっくりお話しさせていだきつつ、課題抽出のためのヒアリングや情報整理を実施しました。

その結果、大枠の課題設定とDXロードマップ作成を無事完了できたのですが、実はここに到達するまでには大きな壁がありました。

──どんな苦労があったのですか?

T.S.:ひとことでいえば、「お客様がもつコンサルに対する不信感」ですあとから知ったのですが、私たちが支援する前に、別の案件で相当痛い思いをされたようで。DX推進担当メンバー全員が「コンサル不信」に陥っていたようなんです。

そうした過去体験からか、私たちの支援が開始した当初は、提案や説明に対して細かな指摘や質問がバシバシ寄せられたり、何かにつけて実績を問われたりして。針のむしろのような状態でした。

──それから、どのようにして関係を構築していったのでしょうか。

T.S.:1つは、アウトプットを出しつづけること。もう1つは、評論家にならずに、お客様との議論を通じて、いっしょに未来像をつくりあげる楽しさと重要性を感じていただくこと。

例えば、会議で寄せられた疑問点を基に、国内外の大学の先進事例を調べ、業務や組織のあるべき姿、将来目指すべき方向性を示していきました。

ある日、提出した海外大学の事例調査レポートに「とても参考になる」と好評をいただき、そのあたりから、やりとりに対する手応えが感じられるようになりました。

大学の本分である「研究」を阻害しない。利害を見極め、事務を効率化する  

──いまはどのような業務に取り組んでいるんですか?

T.S.:2023年度から学内で発足されたDXに関する「ワーキンググループ」にSHIFTのメンバーも加わって改革に向けサポートしています。

私たちが参画する前は「小さな組織単位で見える範囲の業務効率化」といった部分最適が各所で生まれるのみで、全学的な改革までは発展しなかった実情がありました。

関係者にヒアリングをして紐解いていくと、大きな弊害となっていたのは、縦割り組織。

こうした背景から、複数の部署の事務職員数十名からなるワーキンググループが組成され、全学的なDXを推進する組織横断の活動母体が誕生しました。

ワーキンググループに伴走しながら、改革案をとりまとめ、旗振り役に徹する。それが私たちの主な役割ですね。

──DX支援を進めるうえで、国立大学と一般企業の違いは感じていますか。

T.S.:事務業務の煩雑さや情報管理のむずかしさはどちらも変わりません。大学には教務があること、そして組織の利害関係者が、教員(研究者)と事務職員のほかに学生までいることが一般企業との 大きな違いでしょうか。

教員の仕事は、学生の教育という側面と、研究の推進という側面があります。

研究の推進活動のなかには、例えば研究資金の獲得も重要な仕事です。大学にとって外部資金の獲得は重要なテーマの1つであり、これを教員だけではなく事務組織がどのようにサポートしていくかということが大学運営を支える大事な課題となっています。

積極的に開示した情報をステークホルダーに活用してもらうことは、一般的には望ましい姿かもしれませんが、研究者の目線では必ずしもそうとは限らない。

隣の研究室がライバルになり得る世界ですから、研究資金調達のため、学内で激しい競争が起きてしまうかもしれない。

情報を管理する体制もいまよりも煩雑になってしまう可能性だってあります。研究を阻害するような変化は避けなければなりません。

冒頭でも触れましたが、何が利で、何が害かをしっかり見極めて改革していかないと、真に付加価値のある新たな事務業務のあり方にはたどり着けないのではないかと捉えています。そこが大学における事務業務のDXのむずかしさですね。

──SHIFTとして、このプロジェクトのゴールをどこに見据えていますか。

T.S.:向こう10年のロードマップは提示しているものの、変化の大きい現代には、優先順位の入れ替えなど、変化への適応が必要になってくると捉えています。

理想的なゴールは「ここから先は自分たちで進めていけそうです」といっていただけ、お客様自ら変革を起こせることではないかと。そのような状況まで支援しつづけたいと考えています。

目の前にいるお客様の困りごとを解決できる。その喜びがSHIFTにきてさらに増した

──T.S.さんがこのプロジェクトに感じるやりがいは?

T.S.:昨今、国内の大学の研究力は低下しているといわれています。事務業務の現場に携わり、教務を支えることは、研究力向上の面において、間違いなく社会課題の解決につながるでしょう。

こうした大きな目線をもちつつも、私の一番のやりがいは「目の前にいるお客様の困りごとを、ともに解決できる立場」でいられること。

この件に限らず、多くのお客様は自身で課題意識をもち、解決に向けて何度も動いています。

それでもうまくいかなかった理由や背景を理解しながら、ともにやり方を考え、方向性を示していく。こうした支援をできる機会そのものが、自分としてはありがたいです。

──コンサルタントとしてはたらくうえで、SHIFTはどんな場所だと思いますか?

T.S.:転職して4年になりますが、とても居心地がよく、仕事もやりやすいです。基本的に「こうしなければならない」という制約やしがらみは一切なし。

「お客様のためになる」「お客様が価値を認めてくれる」提案やサービスづくりであれば、どんどん進められるカルチャーがあります。

前職のITベンチャーと雰囲気は似ていますが、従業員数の違いが大きいと感じます。SHIFTでは、推進力が足りなければしっかりと充てる人的リソースがあります。ですので、社内コンセンサスを得て何かを「やろう」となったときの推進力はすさまじい。

大きな企業でありながら、トップダウンだけではなくボトムアップでうねりも生み出せる、不思議な組織です。

国を動かし、社会課題の解決につながるような調査分析に関わりたい

──今回、初の大学支援となりましたが、今後どのような展開を考えていますか。

T.S.:このプロジェクトはまだはじまったばかり。登山で例えると、1~2合目あたりにいるような感覚ですが、同様の課題を抱えているほかの大学や、私の担当領域である中央省庁や地方自治体に対しては何らかアプローチをしたいと構想しています。

現状の国内大学のあり方ついては文部科学省も課題感のあるところだと思いますので、そこにSHIFTがDXの推進などで加わることで新たな産学連携の形が見出せたらいいな、と。

──最後に、将来やりたいことについて教えてください。

T.S.:調査や分析が好きなこともあって、いつかは中央省庁の外部委託調査報告書の案件に関わりたいです。

いわば国の意思決定を支えるレポートであり、社会問題に取り組める手段のひとつだと思います。SHIFTとしてこういう委託調査案件を担当できたら最高ですね。

──T.S.さん、本日はありがとうございました!

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです) 

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