AI徹底活用でさらに成長するSHIFT──人にしかできない仕事で価値を生み、「楽しい」も増やす

2025/04/04

「AIネイティブのSIカンパニーをめざす」──SHIFTの2025年はこんな宣言からスタートしました。

これまでもAI関連の技術開発に積極的に取り組んできたSHIFT。今回、打ち出したは、2025年8月までにAIエンジニアを500人に「膨大に蓄積されたデータを基軸に、AIを業務に徹底活用する」という方針です

よく誤解を受けるのですが私たちは人の仕事そのものAI奪わせるつもりはありませんAIの共存共栄めざしています」

こう話すのは、取締役を務める小林元也ですこれから何がどのように変わるのか。詳しく話を聞きました。

  • 取締役 小林 元也

    2003年 東京工業大学大学院 理工学研究科修了。株式会社インクス(現:SOLIZE株式会社)に新卒入社し設計の標準化システム開発、超精密電子・精密自動車部品・精密光学機器の設計工程改善に携わりSHIFT参画。品質保証部で業務工程改善に従事したのち、ソフトウェアテスト事業を立ち上げ、事業部長としてさまざまな管理案件に携わる。2014年以降、取締役として事業管理全般を管掌。

目次

ごく自然にAIを使いこなせる環境づくり

──まず、なぜ SHIFTはこのタイミングで「AIネイティブのSIカンパニー」をめざすのか、経緯を教えてください。

小林:代表の丹下をはじめとする経営陣が、AIの劇的な進化にふれ「業務に取り入れる必要性」を痛感。今回の宣言に至りました。

……と聞くと「これまで、まったくAIを使ってこなかったの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。実はSHIFTがAIに関連した技術開発に着手したのは2008年。

スマートグラスでソフトウェアの不具合箇所を推測する「スカウター」を皮切りに、数多くの試作品を生み出してきました。

2016年には東京大学 松尾研究室の協力のもと、代表の丹下のコピーロボット「タンゲロイド」を開発したことも。

基礎技術の研究には積極的に取り組んできた一方で、AI技術自体がいまのように発達していない時代だったこともあり、業務に本格的に取り入れたり、サービスやプロダクトへ展開したりするには少し不安が残る、というのがこれまでの考え方でした。

──それが昨今、技術革新によりAIに対する技術的信頼性を実感したというわけですね。

小林:目的を理解したうえで自律的にタスクを判断・実行する「AIエージェント」を構築できるようになったのは、間違いなく大きな進歩ですよね。

例えば、旅行の手配。これまではAIに質問してその回答を参考に人が手配していましたが、AIエージェントの出現により、希望に合ったスケジューリングで、新幹線などのチケットや宿泊の予約までしてくれる。

こうした“タスク実行まで能動的に遂行する”AIサービスの提供があたりまえになる日は近いでしょう。

最新のAI技術を、サービスやプロダクト、社内業務に取り入れて徹底活用すれば、SHIFTの成長はさらにはやく、確実なものになる。そう確信しました。

──そして、さらなる成長を遂げるためにも、従業員一人ひとりが「AIネイティブ」になる必要があると。

小林:ネイティブという言葉を用いたのは「日々の業務のなかにAIが組み込まれていて、みながごく自然な形で使いこなしている」状態が適切だと考えたからです。

まずはAI活用に特化したチームを組成し、社内インフラを整えながら、人とAIが共存・共栄できる環境をつくりたい。そのため、AIエンジニアの増員を急務としています。

社外で「AIにコミットする」とお話しすると「従業員をリストラしてコストダウンを図るんじゃないか」と勘繰られてしまうことが多々あるのですが、そもそも私たちはコンスタントに事業成長している会社。

人員を削減する必要はありませんし、組織規模もさらに数万人規模で拡大していきたいとさえ思っています。

そんななか、むしろAIにできる部分はAIに任せることで、メンバーの能力を最大化して、もっと楽しい仕事に変えていこうと。

産業革命においても、例えば蒸気機関の誕生によって人が仕事をしなくてよくなったかというと、違いますよね。むしろ人間ができることが爆発的に増え、社会が発展しました。

現代においてもAIを活用することで一人ひとりの生産性をあげて、「人にしかできない」仕事や価値をつくりだすことにシフトすべきだと考えています。

──売上高3,000億円をめざす「SHIFT3000」にはどのような影響がありますか?

小林:AIの徹底活用を進め、全社的に生産性を高めることで、想定よりもはやく、そして利益率高く到達できると試算しています。「SHIFT3000」に到達した際の目標値はすでに調整しました。

特に営業利益率を22%としたことは挑戦的にもみえますが、AIをフル活用すれば実現できると睨んでいます。

テスト設計、人事、営業……自社開発AIツールで、すでに生産性が向上

──SHIFTは、すでに100個以上のAIモジュールを開発しています。なかでも特に注力しているテスト設計支援ツールのAI機能「TD AI Assistant」について教えてください。

小林:前提として、長きにわたって品質保証事業を成長エンジンとしてきたSHIFTには、テスト設計におけるさまざまな知見が蓄積されています。

知見を集約させてツールにし、業務効率化を図ろうと開発されたのが、テスト設計支援ツール「TD(Test Designer)」でした。

私たちが独自に編み出した「標準観点」を基に設計プロセスを分割し、そのプロセスごとに、実績データをもとにしたリコメンドが出てくる仕組みです。

今回の「TD AI Assistant」では、「TD」で蓄積された1億1,451万件以上(※2025年1月時点)のテストケース、900項目の標準観点をベースに、生成AIによるリコメンド機能を実装。

仕様書作成からテスト対象の洗い出し、テスト観点の選定、テストの具体的な内容決めまで、それぞれのプロセスに対してAIがリコメンドしてくれる、画期的なツールとなっています。

──導入によって、どんな効果を実感していますか?

小林:まだPoCの段階ですが、有識者ばかりに業務が集中する「属人性」が緩和されている印象です。

AIエージェントの波を受けて、さらに「使いやすく」バージョンアップさせることが目下の課題。社内に浸透させ、改善を重ねたのち、ゆくゆくは外販を実現させたいですね。

「TD AI Assistant」によって高品質で高速なシステム開発につながり、SHIFTにとっても生産性が向上した分、“人でないと思考・判断できないこと”つまりSHIFTの価値をさらに追求しサービスが進化していく可能性を秘めています。

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──そのほか、自社開発のAIモジュールで特筆すべき取り組みはありますか?

小林:AIレジュメアナライザーがあります。

SHIFTグループの人事が受け取る応募書類は1年間で14万件以上。活躍いただけそうな人材か相性を見極めるのにたいへんな時間をかけています。

そこで人によって書式の違う職務経歴書の内容を統一フォーマットに要約するAIツールを開発。運用がスタートしました。

面接プロセスについてもAIを活用した機能が近く導入される予定で、大幅な工数削減と見極め精度の向上が見込まれています。

人事にとってはその分、戦略的な業務に時間をかけることができますし、自らが望むキャリア形成につながる業務に多くの時間が使えるなど可能性が広がります。

人事領域の採用以外のツールでいうと「対話型AIメンター」を開発し、試験運用中です。

従業員とコミュニケーションをとりながら、悩みや疑問に対するリアルタイムかつ適切なアドバイスの提供を目的としています。

──営業部門での取り組みについてはどうでしょう。

小林:AIを活用することで「お客様との商談を議事録として自動生成し、その内容を解析してニーズを的確につかむ」「ロープレをAIで評価し、商談力アップをめざす」など、これまでとはまったく違う時間の使い方、手法で営業力向上に努めるようになりました。

AI活用時代の営業活動でポイントになるのが、価格交渉です。電車の運賃は、新幹線の方が在来線よりいち早く目的地に到達できるから価格は高い。

これと同じようにIT業界でもクオリティの高いものをはやく納品することの価値訴求が、今後重要になることは間違いないですね。

好奇心、成長欲が旺盛──募集ポジションは変わっても、求める人材像は変わらない

──今回、「AIネイティブのSIカンパニー」をめざす柱として、AI活用のほかに事業体制の構造改革も打ち出しています。概要を教えていただけますか。

小林:売上規模だけを追うのでなく“売上高成長率”を重視する事業体制に変えていきます。

例えば、4億円の案件を5億円の売上にしたら1.25倍の成長ですよね。でもプラスになるのは同じ1億円でも、2億円の案件を3億円に増やすと、1.5倍成長に膨らみます。

大規模案件はこれまでどおり着実に、中小規模の案件は高く成長させていくことを意識すれば、さらなる成長が見込める。こうした戦略のもと、新設したのが「サービスエキスパート」。

PMの役割を担いつつもお客様のカウンターパートナーとしてつねに最前線に立ち、自らの裁量でビジネス拡大を実現できるこれまでにないポジションです。

──では、いま特に採用に注力したいポジションは「AIエンジニア」と、「サービスエキスパート」ですね。

小林:そうですね。

AIエンジニアについては、先日エンジニアを対象に社内アンケート調査を行ったところ「すでにAIについて勉強し、プロンプトを書いている」メンバーが相当数いたので、社内育成も進めたいと思います。

短期間で、業務プロセスやビジネスに対する考え方、募集するポジションが劇的に変わる一方、一貫して変わらないのは、SHIFTは「年齢問わず、好奇心旺盛で、成長欲がある人を求めている」という点です。

かつて「ノートパソコンが1人1台支給される」ことが、採用の引きになっていたように、「AIが業務フローに組み込まれた環境」に整えることは、これからの時代において私たちが求める人材を惹きつける大きな要素にもなるんじゃないかと。

社会が大きく変わろうとしているいま、AIによってSHIFTグループの一人ひとりの能力が拡張されたら、どんな未来がまっているのか。人にしかできない仕事をつくり出し、「楽しい」をみんなでどんどん増やしていきましょう!

(※本記事の内容は、取材当時のものです)

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