肩書きは「フルスタックエンジニア」でありながら、そこから想像される業務内容を大きく越境し、“スクラムチームの開発者に対してコーチングを実施する” という独特のロールで活躍する人物が、SHIFTにはいます。
「例えばエンジニアの方とモブプロしながら、困っていることをその場で解決していく。スクラムチームが目指す目標に向けてひたすら伴走し、出てきた課題に随時対応していくような、とにかく即応性が求められる仕事ですね」
このように説明するのが、アプリケーション開発テクノロジーグループのメンバー、馬塚です。彼はお客様先のメンバーとして内製支援に従事し、上述の独特なロールを担っています。
アジャイルコーチともテックリードとも違うとのことで、具体的にどんな業務内容なのか。また、そこにはどんなスキルや経験が必要になってくるのか。じっくりと聞いてみました。
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アプリケーション開発テクノロジーグループ 馬塚 勇介
大学卒業後、18年間独立系ソフトウェアベンダーにてWebアプリ開発等に従事した後、2020年2月にSHIFT入社。前職では、大手居酒屋チェーンやファミレスなどの本部システムから、種苗の開発・生産販売向けの受注管理システムまで幅広いテーマのWebアプリを、要件定義から実装、導入まで幅広く担当。
目次
チーム体制での開発プロジェクトに携わりたくSHIFTにジョイン
―――プロフィールを拝見すると、SHIFTに入社される前は独立系ソフトウェアベンダーにいらっしゃったということですが、種苗の管理システムなど、面白い領域を担当されていたんですね!
馬塚:そうですね。そちらの案件は本社が海外にある会社の日本法人の案件で、トピックとしてはけっこう変わり種だったと思います。
18年間も勤めていたので、いろんな案件がありましたが、メインは大手居酒屋チェーンやファミレスなどの本部システム開発などが多かったですね。
―――18年間勤務された後、なぜ転職を希望されたのでしょうか?
馬塚:他分野への広がりがなくなってきたと感じまして、技術者として危機感を感じたのが大きな理由でした。
また、会社の規模が小さく人数も少なかったので、要件定義から実装、導入までほとんどの工程を一人で担当することも多く、自分の頭のなかで閉じてしまって限界を感じていたことも大きかったです。
もっと開発者が多くいるところで、いろんな方の技術力を体感しながら仕事をしたいなと。
―――そこから情報収集をされていったなか、SHIFTのことも知ったわけですね。
馬塚:はい。当時はAWSが隆盛を極めていたので、そっち方面をやろうと思い、クラウドサービスを専門的に扱っている会社を探していました。
一方で、自分自身は開発をバリバリやるというよりは、品質改善の方が向いているなと感じていたこともあり、その領域で急成長していたSHIFTにも興味をもった次第です。
実際に話を聞いてみると、当時力を入れはじめていたテストの自動化領域に適性がありそうだと感じたのと、アジャイル開発も推進しようとしている点に興味をもち、SHIFTへのジョインを決めました。
―――入社後はどんなことをされてきたのですか?
馬塚:最初はテスト自動化のフィジビリティ案件に参画しました。
その後、KubernetesやOpenShiftなどのコンテナオーケストレーションツールを扱った案件に従事して、その流れで現在携わっているITコンサルティングサービス企業の案件に参画するようになりました。
―――その案件では、具体的にどんなことをされているのでしょうか?
馬塚:ちょっと特殊だと思うのですが、私自身が何か手を動かして開発をするのではなく、開発者の活動に対するコーチングや技術支援を行っています。
お客様がアジャイル導入支援コンサルティングサービスを展開していまして、そのコンサルチームの一人として内製支援的に活動しています。SHIFTでの肩書きは「フルスタックエンジニア」なんですけどね(笑)
―――一般的に「フルスタック」と聞いて想像する業務とは、だいぶ違いますね! アジャイルコーチみたいなことをされている、ということですかね?
馬塚:アジャイルコーチともちょっと違うんですよね。
アジャイルコーチはスクラムマスターや開発者、プロダクトオーナーといったチーム全体と、その周辺のステークホルダーも含めた人たちに対してコーチングや情報提供を行う存在です。
一方で私が向き合うのは、あくまで開発者です。
例えば開発者向けにテスト駆動開発やCI/CDのワークショップ実施、プランニングにおけるタスクの分解粒度や記述方法のアドバイス、クリーンコード観点でのコードの改善提案やテストケースの過不足の指摘、開発チームを評価するためのメトリクスの提案など、いろいろとやることがあります。
開発者がモブプログラミングをしているところにいっしょに入ったりもしますね。
―――テックリードっぽい役割だなとも思ったのですが、それもちょっと違いそうですね。
馬塚:そうなんです。テックリードは実際に開発の手を動かす人という側面もあると思いますが、そうではなく、あくまでコーチングや技術支援に特化したロールになります。スクラムチームの開発者コーチ、という感じですね。
ウォーターフォールとスクラム、両方のチームでコーチングを実施
―――お客様先のサービスチームの一員として活動されているということで、特に最初、独特のロールに戸惑ったりされませんでしたか?
馬塚:めちゃくちゃ戸惑いましたよ(笑)。正解もないし、探り探りでした。
というのも、私と同じロールの方が何名かいるのですが、みんな独自のやり方をされていて、標準的な手法やプロセスが確立されていない状態だったんです。私の方で活動の軸となる支援項目表をつくったくらいです。
―――どのタイミングで、スクラムチームの開発者コーチというロールが腹落ちしましたか?
馬塚:あるプロジェクトのユーザー様からのフィードバックで、私のロールに対してお褒めの言葉をいただきました。
CI/CD環境があることでリリースがはやくできるとわかってよかった、丁寧にコーチングしていただけたおかげだと。そういう感想をいただいた時に、このやり方でよかったんだなと思いましたね。
―――特に印象深い、面白いなと感じられたプロジェクトを教えてください。
馬塚:いろいろとありますが、まさにいま担当しているプロジェクトは面白いなと感じています。
単一のスクラムチームを支援するのはいままでもあったのですが、今回はウォーターフォールの開発チームと、スクラムの開発チームが並行してプロダクトを開発する体制下でのご支援という案件です。
―――それは興味深いです。時間軸が異なるチームがいっしょに開発するわけですね。
馬塚:とあるインフラ関連の管理システムを扱うプロジェクトなのですが、ウォーターフォールチームは3ヶ月かけて要件定義から実装までを進めるのに対して、スクラムチームは2週間のスプリントでリリースまでもっていきます。
スクラムチームのリリース物をウォーターフォール側がどう扱うのかなど、いろいろと考えるべきポイントが違って面白いですね。
―――馬塚さんが案件を担当されるにあたって、大事にされていることを教えてください。
馬塚:このロール柄、コミュニケーションは一番大事ですね。開発者からすると、つくったものに対して指摘が入るのは、決してうれしい話ではないと思うんですよ。
そこをいっしょにやってコーチングしていくということで、いい方を一つひとつ工夫していく必要があると考えています。
あと、この仕事で特に求められるのが「即応性」です。開発者がリアルタイムで悩んでいることをその場で見つけ、解決に向けて伴走する必要があります。
ですから、事前に「たぶん開発者がこのへんで悩みそうだな」といった仮説を立て、想定問答をしたうえで、例えばモブプログラミングに入ったりしています。
今後はプラットフォームエンジニアリングにも取り組んでいきたい
―――聞けば聞くほどに難度の高いロールだと感じています。どういう方が馬塚さんのようなポジションに向いているとお考えですか?
馬塚:かなり適性によるものが大きいと思うので、なかなか標準化しにくいのですが……。
技術知見をベースに、お客様の課題を抽出し技術で解決を図ってきた方、それらをアジャイル/スクラムのなかでやってきたような方がよいかもしれません。
お客様の内製開発を促進するために、育成であったり組織変革まで視野を広くもてる方ならさらにご活躍いただけると思います。
私自身でお伝えすると、割と本を読む方で、各技術分野のバイブル的な本は一通り読んでいると思います。
扱う範囲が広く、それこそアーキテクチャやベストプラクティスなど全般に対しての知識が必要になってくるので、特定分野のプロフェッショナルではなく、幅広く、浅く広く理解していたというのが、このロールでの引き出しを増やすうえで役立っていると思います。
―――SHIFTの一員として、組織的に助かったなどの観点はいかがでしょうか?
馬塚:優秀な方が多く、困ったときの相談先がたくさんあるというのは、類稀なる環境だと感じています。SHIFTのメンバーと話した内容を、そのままコーチ支援に活かすことができますからね。
ちなみに、SHIFTのITソリューション部のなかで開発標準をつくるチームにも副務的に入っており、そこのメンバーとは毎日のようにミーティングを実施しているので、案件チームは違ってもコミュニケーション量は多いと思います。
―――今後、馬塚さんがやってみたいこと、個人的な目標などをお聞かせください。
馬塚:現在取り組んでいる案件でしっかりと成果を残すのはもちろん、加えて昨今注目されているプラットフォームエンジニアリングにも取り組んでいきたいと考えています。
つまり、開発・運用のための共通基盤を構築し、開発者がすぐに開発をはじめたり、ボタンひとつで開発環境の構築ができたりするような仕組みをつくっていきたいなと。
先ほどお伝えした開発標準の取り組みと組み合わせることで、よりエンジニアフレンドリーな環境につながると考えています。
―――最後に、「こんな人といっしょに働きたい」という人物像を教えてください。
馬塚:自分の知らないことを知っている/精通しているような方であれば、ぜひいっしょに働いてみたいですね。
先ほどお伝えしたとおり、SHIFTにはいろんな技術に詳しい専門家が多く在籍しており、困ったら助けてくれる文化があります。
また私の取り組んでいるものに限らず、社内ではさまざまな分野で標準化タスクが進んでいるので、そういった観点で興味のある方もウエルカムです。
ぜひ、いっしょに切磋琢磨しながら仕事をしていきたいと思います。
(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)