私が思う、技術者としての価値。徹底した「自分ごと化」で推進した統合認証基盤のPoC案件

2024/07/05

「プロジェクトメンバーと積極的にコミュニケーションして、難度の高い問題を一つひとつ“いっしょに”解決していく。そういうことができないと、僕の技術者としての価値はないとすら考えています」 

このように話すのはインフラエンジニアとしての経験を活かして、ITコンサル的な立ち位置から、IT投資の中期計画の策定やポートフォリオ分析といった経営コンサルに近いものまで、さまざまな立場で難度が高いプロジェクトを担当してきた寅野です。 

実は寅野にインタビューを実施するのは2回目。前回のインタビューで彼の言葉から伝わる「ワクワク感」が止まらなかったので、もっと話を聞きたい!と2回目のインタビューを行いました。 

彼はなぜそんなに楽しそうなのか。どんな経験を活かして、難度の高いプロジェクトを超上流から担当しているのか。聞いてみました。 

前回のインタビュー記事はこちら

「AWSといえばSHIFT」を目指す。全AWS資格をもつインフラアーキテクトの新たなる挑戦

  • インフラサービスグループ 寅野

    新卒から一貫してIT業界に従事。独立系SIerでアプリケーション及びインフラエンジニアや大規模PMOを経験した後、アクセンチュア株式会社でアウトソーシングコンサルタント、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社(現: Amazon Web Services, Inc.  )でクラウドインフラアーキテクトなど、ITに関するさまざまな経験を経て、2021年8月にSHIFT入社。現在はAWSのプロフェッショナルとして、お客様へのアーキテクチャ検討からデリバリーまでを一気通貫で担当しつつ、社内では「AWSができる企業」の発信プロジェクトを牽引している。   

目次

「エンジニアとしての総合力」が試される案件の方が楽しい

―――前回寅野さんとお話しして、本当にいろいろな引き出しをおもちだなと感じました。異例の2回目取材ということで、よろしくお願いします! 

寅野:恐縮です(笑)。よろしくお願いします。 

―――さっそくですが、前回のインタビューでも伝わってきた「ワクワク感」なのですが、寅野さんがワクワクする案件に共通点はあるのでしょうか? 

寅野:基本的にどの案件にアサインされても、自分からワクワクポイントを探していく人間なので、全部といえば全部ですね(笑)。

ただワクワク“しやすい”ポイントというのはありまして、お客様と直接やりとりができること、それからある程度テクノロジー的な難度・深さ・幅があることかなと思います。 

―――お客様と直接やりとりができるというとプライム(一次請け)案件のことでしょうか? 

寅野:はい。SHIFTは基本的にプライムで案件を受けるので、どのプロジェクトでも基本的にはお客様と直接やりとりができるのですが、転職前のシステム開発案件だとどうしても、2次請け・3次請けのケースがありました。 

そうなってくると、案件を発注しているお客様と直接会話する機会が極めて限定的になってしまい、意思決定のスピード鈍化や、なにより細やかなコミュニケーションがむずかしくなります。

そういう観点で、お客様と直接やりとりできる案件の方が、より自分のよさを発揮できると感じています。 

―――なるほど。もう一つ、テクノロジーの難度・深さ・幅があることとおっしゃいましたが、こちらはどういうことでしょうか? 

寅野:要するに、「エンジニアとしての総合力」が試される案件の方が楽しい、ということです。

例えば一つの例ではありますが、AWS でシステムを動かすとなると、サービス全体像はフロントエンド関連から外部接続、CI/CD、データベース・ストレージにセキュリティ、マルチアカウントやマルチテナント統制、ログ管理やモニタリングなどなど、広い領域に渡ります。 

もちろん僕の得意領域はインフラなので、そこのアーキテクチャを重点的に考えていくわけですが、それ以外の部分についても「おそらくこんなことが必要だ」という視点で提案することで、お客様としては「この人に相談したら安心」と感じていただけるわけです。

こういった幅を求められる案件だと、特に自分としてはパフォーマンスを出しやすいし、ワクワクすると感じます。 

ワクワクが止まらなかった、グローバル企業での統合認証基盤のPoC案件

―――SHIFTに入社してから担当されたプロジェクトのなかで、特にワクワクした案件を教えてください。 

寅野:たくさんあるので選ぶのがむずかしいですが、グローバル展開されている某メーカー様でのグローバル統合認証基盤のPoC案件は非常に面白かったですね。 

―――どういった案件内容だったのでしょうか? 

寅野:お客様内でDX部門が立ち上がって、インフラ・セキュリティにおける将来構想を掲げられました。メインテーマの一つはID管理です。 

グローバル企業なのでさまざまな国にローカル企業を有し、使っているクラウドもソフトウェアもドメインもバラバラという状況でした。

当然、管理されているIDも個別最適化されていたのですが、グローバルでの統制と利用者体験の向上及びオペレーションの自動化・コストの削減を実現するために、別々に管理されているID群を一つの認証基盤にまとめていき、IDプロビジョニング(IDの発行、権限付与/変更、削除などの自動化)とSSOの仕組みを構築することが、プロジェクトのミッションとして掲げられていました。 

エンドユーザーである従業員の体験としては、PCにログインしたら、そのまま使うシステムがすべてSSOになっていて、パスワードが不要という世界観です。 

―――想像するだけで難度が高そうです… 

寅野:いうは易く行うはむずかしで、現に計画されたはいいものの内製だけだとなかなか進まず、本来の計画から乖離した状態になってしまっていました。

そこで我々SHIFTにご相談いただき、「内製支援」という形でプロジェクトに入らせていただいたという流れになります。 

―――内製支援ということですが、具体的にはどんなポジションで入られたのでしょうか? 

寅野:お客様サイド(DX部門)のチームに6ヶ月間入り、プロジェクトサブリーダーとして、チームの一員として動いていました。

ほかのPMやプロジェクトリーダーはDX部門の方ですし、プロジェクトオーナーも先方役員になります。

お客様といっしょになって、統合認証基盤としてプロダクトが使える状態、評価できる状態にまでもっていきました。

総合力を発揮したことで、CIOへのレポーティングまで任せてもらった

―――プロジェクトのなかでの、実際の業務内容も教えてください。 

寅野:「統合認証のあるべき姿」を考えるところからごいっしょさせていただきました。

会社の統廃合発生時にはどうするか、会社が求めるSLAを実現できる可用性はどうあるべきかなどですね。 

―――まさに超上流ですね。 

寅野:そこがある程度明確になったら、今度は具体的なToDoとして、プロジェクトの計画立案や業務的/システム的評価項目の策定、要件の洗い出しを進め、その後、評価環境の設計と構築、評価、デモシナリオの設計と評価結果の取りまとめといった感じで進めていきました。 

―――それらをお客様チームの一員としてゴリゴリと進めていくと。 

寅野:そうですね。先ほど少しお伝えしましたが、評価した製品だけでも、Okta、 Google Workspace、Google Cloud 、Azure、Salesforce、DocuSign、Box、 Active Directory 、Hyper-Vといったように、グループ全体での利用サービスが多岐にわたっています。

グローバルで考えると法人が異なりマルチテナントになっている製品も多くありました。 

そういったソフトウェアメーカーなど一社一社ともコミュニケーションしていく必要があるので、担当営業や担当SE、サポート窓口などといった方々へのお声がけやミーティングなどの段取り、必要に応じて契約支援までも行っていきました。 

ほかにも、お客様内でのミーティングの実施やほかの部署との連携、上長報告としてCIOへのレポーティングも行いました。 

―――CIOへのレポーティングまで!完全に入り込んでいますね。6月でそこまでリレーションを構築できるものでしょうか? 

寅野:ここが先ほどお伝えした「総合力」の発揮のしどころだと感じています。

私はこれまで、いわゆるSIer的な経験として、アプリ開発やPM、インフラまわりをやっていたかと思えば、外資コンサルティングファームでアウトソーシングコンサルタントもやりましたし、官公庁プロジェクトでのシステムエンジニア、大手外資クラウドベンダーでのクラウドアーキテクト、大手自動車メーカーでの内製支援など、いろいろなことをやってきました。 

やっていた当時はそれらが“ごった煮”の感じで、いつか活かせるようになるとは思っていなかったのですが、結果として俯瞰した視点でプロジェクトを捉えることができるようになったので、そういった観点でお客様からも信頼いただいているのかなと思います。 

―――なるほど。お客様としては、いちいち説明しなくても、寅野さんであればわんとすることがかってくれると。 

寅野:プロジェクトメンバーが集う食事会にも、パートナーである私を呼んでいただけるケースが多々ありまして、ありがたいなと感じています。 

圧倒的な「自分ごと化」こそがお客様の信頼を得る

―――それにしても、システム構成として難度が高そうだなと容易に想像できるのですが、実際はどうだったのでしょうか? 

寅野:こういう形で複数のシステムを繋げるというのは実はよくあるニーズではあるのですが、最初はだいたい、うまくつながらないですね。 

今回も最初はうまくいかなかったのですが、ソフトウェアメーカーのご担当者などいろんな方々のサポートを受けながら仕組みを理解していき、一つひとつ課題を解決していったことで、全体がうまく繋がるようにしていきました。 

―――人によっては心が折れそうな話ですね… 

寅野:僕の場合は、そこがワクワクポイントなんです。仕組みを紐解いていって、最終的には自分が設計した通りにシステムが繋がる/動くようになる。

そこが一番楽しいですし、逆にそういうことができないと、僕の技術者としての価値はないとすら考えています。 

もちろん僕一人がすべてを把握・理解できているわけではなく、例えばCI/CDまわりとかわからないところは人を巻き込んで進めるようにしています。 

―――素晴らしいマインドですね。そう考えると内製支援案件って、まさに寅野さんの十八番なんだろうなと感じます。 

寅野:そうですね、内製支援、大好きですね。お客様との一体感をもって、プロジェクトのゴールを自分ごと化し、お客様と同じ方向を向いて考えていく。

そういった僕のスタンスをもっとも発揮しやすいのが内製支援だし、お客様にもそういった部分をご評価いただけていると思います。 

―――最後に、寅野さんのように超上流から案件に携わりたいと考えている方々へのアドバイスをお願いします。 

寅野:ここ10年ほどそういった案件ばかりをやってきた人間として一つお伝えできるのは、圧倒的な「自分ごと化」こそがお客様の信頼を得るし、問題解決のスピードも高めると思っています。 

そのうえで、先ほど「わからないところは人を巻き込む」とお伝えしましたが、当然ビジネスなのでお互いにWin-Winにならないといけません。

しっかりとWin-Winな関係になるように設計しながらステークホルダーを巻き込むことで、だいたいのむずかしい問題は解決できます。 

いずれにしても、私のキャリアからいえることは、いまやっていることは決して無駄にはならないですよ!ということですね。 

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)