「『自分のアイデアを具現化できる立場に』と20代のころからリーダーを志していたものの、なかなか自分の番がまわってこなくて。38歳になってようやく、課長職の昇進試験にチャレンジできました」
こう話すのは、コンサルティング部の坂本(仮名)です。前職は大手メーカー系SI。女性管理職が圧倒的に少なかった時代に、情報システム部門の課長、部長、統括部長を歴任し、社内システムの構築に尽力。
退職するまでの最後の3年間は業務窓口部門に移り、ERPの全社刷新プロジェクトをリードするなど、つねに要職を担ってきました。
定年退職が現実味を帯びてきたとき、はじめて転職を考えたという坂本。「年齢関係なく成果が認められる環境で、思いきり仕事がしたい」と2023年11月、SHIFTへ入社しました。
長きにわたり、自社の業務システムにかかわってきた経験を役立てたい。そんな想いは、SHIFTでどう実現できているのでしょうか。これまでの歩みと“いま”について本人に語ってもらいました。
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コンサルティング2グループ 坂本
大手メーカー系SI会社にSEとして入社し35年勤務。情報システム部門で受発注系の基幹システムやCRM、マーケティングオートメーションシステムなど営業部門およびマーケティング部門が利用する社内システムや、海外のグループ会社を含めたグローバルプロジェクトの企画・開発・運用を担当し、複数の新規開発プロジェクトで責任者としてプロジェクトをけん引。2023年11月にSHIFTに転職しITコンサルタントとしてお客様側に入り込み、プロジェクトマネジメント支援を手がける。
目次
38歳で課長に昇進。対抗馬に立てなくても、決してあきらめなかった
──はじめに、前職での経歴についてお聞かせください。
坂本:大学卒業後、大手メーカー系SIに入社し、35年勤務しました。うち32年間は情報システム部門に所属して社内の要求を聞きながら、業務システムを構築するのがおもな業務でした。
実は、前職に入社した当初はSEという職種に興味がもてず「5年以内には辞めるんじゃないか」と考えていました。
でも2年目に担当したあるプロジェクトで1つのサブシステムのリーダーを任されたとき、“自らの考えやアイデアを具現化できる”役割の面白さに目覚め、仕事って面白い!と思うようになりました。
それからほどなくして「裁量ある立場についてこそ、自分が思い描くものを形にすることができる」と気づき、昇進を意識するようになりました。
──冒頭で、38歳で課長の昇進試験を受けたというお話をされていましたが……マネジメント職を志してから実現するまではかなり長い道のりだったのですね。
坂本:サブリーダー、リーダーまでは順調に進めたのですが、課長以上を目指すとなるとなかなかの難関で。
もそもポジション数が限られていて、空きもありませんでしたし、たとえ出たとしても、当時はめぼしい男性従業員の対抗馬に女性従業員の私が立ちにくい風潮がありました。
ですから「昇進試験を受けてみないか」と上司から声をかけてもらったときは、やっと私の番がきた!と歓喜しましたね。
情報システム部門では課長、部長と昇格し、終盤はグローバル部署の統括部長に。世界を飛びまわる日々を送っていました。さらに退職するまでの3年間は、業務窓口部門に異動。
海外拠点含むグループ全体のEPR統一化に向け、上流工程からプロジェクトをリードしました。
はじめての昇進試験で学んだ「つながりの大切さ」、そして「未来の描き方」
──とても幅広い経験をされていますが、特に印象に残っている出来事があれば教えてください。
坂本:いま振り返ってみると、自己成長につながったターニングポイントは3つあったように思います。
1つめは、先ほどからお話ししている課長職の昇進試験です。この話にはまだつづきがあって(笑)。
昇進するには部門から推薦される以外に、ランダムに選ばれた他本部の役員に対して「自部門の課題を取りあげ、それに対し自らが課長として解決するための具体的な実現施策や将来の展望」をプレゼンテーションし、課長職としての適性を認められる必要がありました。
このとき私が選んだテーマは、商品管理システムの刷新。
当時、商品群はハードウェア・ソフトウェア・サービスの3つにわかれシステムもそれぞれ別に構築されていたのですが、商品マスタは受発注システムの主要データにもかかわらずトラブルが多発していたのです。
また、新たに商品に適切に対応できないなどの課題も内在していました。
刷新に向け、まず着手したのは、各商品の管轄部門メンバー総勢40~50人の関係者へのヒアリング。それぞれの業務の詳細や商品管理マスターに対する改善点を詳しく聞き出し、ユーザーが“使える”設計案に落とし込みました。
役員へのプレゼンは成功し、試験も合格して晴れて課長に。その後、実際に商品管理システムも刷新でき、無事軌道に乗せられました。この一連のなかで、ひととのつながり方、そして未来の描き方を実践から身につけることができました。
──未来を見据えながら、ひとを巻き込み、システムを設計した賜物ですね。2つめのターニングポイントは?
坂本:グループ会社を含めた全社の共通サービス構築のため他社製品を取り入れることになり、他社および自社の経営層を含めたプロジェクト推進を担当することになったことです。
それまでは開発には自社のプロダクトを使用していたため、他社とのやりとりは開発ベンダーのみ。
それが、はじめて他社メーカーとのライセンス交渉や調整を担うことになり、かつ海外企業相手ということで大変貴重な経験ができました。
当時グループ会社も含めると業務システムが乱立し、IT投資が重複していることがわかり、その解消に向けたサービスを企画し提供することになりました。
また、社外パッケージ製品を開発基盤に活用するという方針となりいままでの社内システム開発とは大きく異なるアプローチが必要でした。
実はこの案件を担当するため出向先から呼び戻されて急遽アサインされ、手探りで大変なことも多い案件でしたが、いまはやってよかったと心から思っています。
グローバル案件でトラブル7割、運用コスト3割削減に成功。現場に“基本”を叩きこむ
──3つめはどんな出来事だったんですか。
坂本:これまた突然、無茶ぶりされたプロジェクトなんですが(笑)。
イギリス・ドイツ・インドメンバーからなるプロジェクトで、インドの拠点が開発を担当しているCMSプロジェクトだったのですが、トラブルが多発していて、当時の本部長から直接私に「なんとかせよ」と電話が入りまして。
右も左もわからないなか、現地に入って交通整理をし、完遂させることができました。自らの経験値をあげられたと思える、印象深い案件でした。
はじめは「なぜこんなにトラブルが多く、かつなかなか終息しないのだろう?」と疑問に思っていましたが、ひも解いていくと、「やるべきことをやっていない」事実が判明して。
例えば、担当エンジニアが自身でテストを完了させ、誰にもレビューしないままリリースしていたんです。
開発者のマインドも、「障害が出たら直せばいい」というものでしたので、もぐらたたきのごとく、トラブル対応が絶えなかったんですよね。
──どのようにして軌道修正していったのですか?
坂本:“未然にトラブルを防止する意識”を植えつけてもらうべく、基本的なステップを踏む重要性を地道に説いていきました。
最初は「障害を未然に防ぐ仕組み」という考えが海外メンバーにはなかなか受け入れてもらえませんでした。
日本のプロジェクトでは当たり前のこの考えを理解してもらうことにかなりの時間を費やしましたが、最終的にはトラブルを出さない、ということの重要性を理解してもらえましたし、「最初はまわり道をしても、結局自分たちが楽になるんだ」と気づいてもらえたようで。
メンバー1人ひとりのマインドが次第に変化し、現場の士気もあがってトラブルの7割、運用コスト3割を削減できました。
話しながら、いま気づいたんですが……私は困難が伴うチャレンジであっても、臆することなく、むしろ楽しめるタイプなんだと思います(笑)。
初の転職。プロジェクトの目的である「お客様の成功」を浸透させ、チームの機動力をあげる
──あらためて、転職を決意したきっかけについて教えてください。
坂本:ずばり定年ですね。
50歳を過ぎたあたりから「60歳以降は嘱託社員になる」と再三伝えられていたのですが、その嘱託社員になれる確証もなく。もしなれたとしても、雇用されつづけるためには、きっとこれまで以上の価値提供に努めなければならないと推測しました。
一方で、給与が激減する現実もあり、努力と見合わない働き方になるんじゃないかと。
長年経験を培ってきたITの現場にふたたび戻って、誰かの役に立ちたい。そんな気持ちも相まって、IT企業かつ70歳定年のSHIFTへの転職を決めました。
──2023年11月に入社後、SHIFTのカルチャーや業務の進め方で驚いたことはありましたか?
坂本:プロジェクトごとにチームメンバーが変わるのは新鮮でしたね。前職では基本的に部署メンバーでチームを組んでいたので、顔ぶれが変わることはほとんどなかったんです。
もしかしたら、いま目の前にいるメンバーとは2度と仕事をしないかもしれない。こうした一期一会的な環境のなかで心がけているのは「お客様の成功」というプロジェクトの目的を明確にすること。
全員同じ方向を向き、チームの機動力を迅速にあげていくよう、働きかけるのがリーダーである私の役目だと考えています。
今後もポリシーを貫きつつ、自らの可能性を広げたい
──お話を聞いて、前職でもSHIFTでも“頼られている存在”という印象を受けました。普段、仕事でどんなことを意識していますか。
坂本:いわれたことを鵜呑みにしてやらないことですね。システム開発にしてもプロジェクト進行にしても、先方の要望に違和感を抱いた場合は、目的を再確認したり、ベストな方法を提案します。
土台がグラグラのまま増改築すると一時期はよくても最終的に失敗することになります。それに目をつぶって進めるのは、私のポリシーに反しているからです。
もちろん、要求されたとおりに動けば、ことはスムーズに進みます。前職ではときに社内ユーザーとぶつかることもありましたが、「安易な方向に流されない」ことを肝に銘じてきました。
もう1つ意識してきたのは、かかわるひとに対して誠意をもって向き合うということ。
特に前職では、以前組んだ相手とふたたびタッグを組むケースで、以前のプロジェクトでの関係が助けになったことも多々あったので、関係構築は重んじておりました。
これからもこの2点を胸に、仕事に励みたいと思っています。
──本日は、お忙しいなかありがとうございました!
※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです