リモートワークの増加を背景に、ゼロトラストが注目を集めています。「たとえ社内のネットワークであっても信頼しない。外部、内部区別なく疑ってかかる」というネットワークセキュリティの新しい概念です。
アプリケーションやデータの保護、デバイス・アカウント管理など、さまざまな要素で構成されるゼロトラストネットワーク。
U.Y. は「ネットワークチームの立ち上げメンバー」として2022年4月SHIFTへ入社。長くインフラサービスに関わり、前職ではSASE案件も複数経験している熟達のエンジニアです。
ゼロからチームビルティングを担い、実績をつくってきたU.Y.に、約1年半の足跡と仕事のやりがいについて語ってもらいました。
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サービス&テクノロジー本部 ITソリューション部 インフラサービス2グループ U.Y.
メーカー系SIerのネットワーク部門でSEおよび技術サポート部門を中心に25年経験、ネットワーク・セキュリティ製品の技術サポートを中心に製品化、製品技術検証、社内技術教育、大型案件支援など多数経験する。その後、SHIFTのネットワークチームの組織構築に魅力を感じて2022年4月に参画。現在は、ネットワークチームのサービスマネージャーとして、マーケット拡大に向けた施策の検討、メンバーの育成、案件管理に従事している。
目次
製品縛りは一切なし。お客様の要望に沿ったネットワークソリューションを提案
──まず、現在の担当業務について教えてください。
U.Y.:ネットワークチームのサービスマネージャー(※)をしています。メンバーは約15名(2023年12月時点)。チーム全体のマネジメントのほか、案件の管理や人員配置、技術支援、人材教育、プリセールス活動……と業務は広範囲にわたります。
所属するインフラサービス2グループは、技術領域別にチームが細分化されていますが、私たちの専門はネットワークインテグレーション。
お客様がシステム導入する際の要件定義から機種選定、基本設定、詳細設定、構築、テスト、運用までをワンストップで支援しています。
※サービスマネージャー:複数案件を管理し、滞りなくサービス提供ができるよう責任を担う立場
──ネットワークチームの特徴は何ですか?
U.Y.:これはSHIFTの特徴でもあるのですが、ベンダーでありながらメーカーや機種のしがらみを一切もっていないことです。インフラに関わる製品群としてはルーターやL2/L3スイッチ、ファイアウォール、無線LAN、セキュリティサービスなどがあげられますが、いずれも制限はなし。
ものを担がない身軽さで、お客様の要望に沿ったソリューションを組み合わせて提案しています。お客様側から「この最新製品を活用してみたい」と要望をいただいた場合も柔軟に対応できます。
技術力を武器に。急速にニーズが高まるSASEにも対応
──依頼される案件について、傾向はありますか?
U.Y.:チームの発足以来、絶えず引き合いがあるのはSASEの案件ですね。うちのチームには私をはじめ複数の経験者がいて実績もある。それが強みにつながっています。
SASEはルーターやスイッチ、ファイアウォールなど主要なオンプレミス機器のいわば複合体です。
実はゼロトラストという概念そのものはかなり前から存在していました。2019年にはSASEが登場したものの、価格の高さもあってなかなか浸透しなかったんです。状況が一変したのはコロナ禍。
リモートワークが増加したことで、従来のシステムのままでは業務上に支障が出るうえ、セキュリティも担保できないリスクが露呈してきて。ここ3年で、グローバル企業を中心に需要が急増しました。
こうした背景から、SASEを扱える経験者がいま、圧倒的に不足しているんです。
──SASE案件のなかで、U.Y.さんが特に印象的だったものは?
U.Y.:やはり、入社直後に担当した大手メーカーの案件でしょうか。私含めて2名のチームでのぞんだ、初の大型プロジェクトでした。
どこを探してもSASEの有識者がおらずお声がけいただいたものの、当初は私たちにとても懐疑的で。それもそのはず、当時のSHIFTは、SASEどころかネットワーク案件すら受けたことがなかったんです。
私たちのプロフィールや実績を提示しても、信頼までには至らず「要件定義のみ・契約2ヶ月・割引価格」という厳しい条件からスタートしました。
状況が一変したのは、アウトプットを見ていただいてからです。技術力を認めていただき、即単価はアップ。最終的には運用支援まで1年間伴走しました。
俯瞰的な知識でSASE導入プロジェクトを牽引する
──大手メーカーがSASEを導入した目的は何だったのでしょうか。
U.Y.:主目的は、オンプレミスからクラウドにシフトするタイミングで、ゼロトラストを実現したいということでしたが、実際には大小さまざまな目的があったと認識しています。
実際、情シス部門の責任者からは「情シスメンバーをひとり立ちさせてほしい」と。Slerから転職されたばかりの方で、メンバーとの温度差に課題感を抱いていらっしゃいました。
オンプレミスでは委託先のSIerが設定変更をしており、自分たちでメンテナンスできずベンダーロックインされている状況でした。その点、SASEは一元管理ができるため、自社での運用が可能。物理的な面で“ひとり立ち”できるうえに、運用費用も大幅に削減できます。
もうひとつ。これは私の推測ですが、レガシーシステムを排除したいという意図もあったかと。一般的に工場は、驚くほど旧式の製品を使っているケースが多々あり、つねにセキュリティリスクにさらされています。
今回の案件でも「これだけは残したい」と工場の方から懇願されたシステムがあったのですが、古すぎてSASEに移行できず。結局その部分だけルーター経由でIPsec-VPNを用いてSASEと通信する手段をとりました。
── SASE導入においてどのような素養があると活躍できるのでしょうか。
U.Y.:SASEでは、これまで“木”として見ていたネットワークを“森”として捉える視点が不可欠となります。「ルーターは得意」「スイッチのことなら熟知している」などと偏りをもたず、関わるすべての技術をまんべんなく学び、理解しているとスムーズにSASEをキャッチアップできると思います。
力を尽くした分だけ、価値提供を実感できる
──この案件ではどんなところに苦労を感じましたか。
U.Y.:特に苦労したのは、基本設計のフェーズです。まず、60以上あるSASEの機能についてそれぞれの動きを情シス担当者にレクチャーして、私たちが推奨する機能を提示。一つひとつをジャッジメントしてもらって設計自体は何とか落ち着きました。
その後、各拠点に対して説明会を実施。ビフォーアフターを示しながら、合意形成をとっていったのですが、想定以上に労力がかかりました。
全国にある拠点は、工場をはじめ、本社、営業部門など数も種類も多く、システムに対する考えもさまざま。変化を嫌う方も少なくありません。すべてのステークホルダーに納得していただくまで、ひたすら骨を折りました。
力を尽くした甲斐あって、切り替え時の混乱はほとんどなかったですね。ステークホルダー全員分のセキュリティポリシーをつくり込んで展開し、運用マニュアルをまんべんなく作成したことも寄与したと思います。ひとまず、「情シスのひとり立ち」は促せたんじゃないかと。
──やりがいや楽しさをどんなところに感じましたか?
U.Y.:入社直後だったので、お客様と直接コミュニケーションをとりながら仕事を進めていく楽しさを再確認できました。
前職では、バックオフィスと呼ばれる技術サポート部門に勤務していたので、お客様とお会いする機会はほとんどなかったんです。
この案件で、お客様の部長からは「情シスのひとり立ちができそうです」と喜んでいただけました。当初2ヶ月だった契約が半年になり1年になり、次の案件も引きつづき依頼される……こうして成果を出し価値提供をできたという実感が、仕事へのやりがいにもつながっています。
人材育成に注力し「実力あるチーム」として多くのお客様に認知してもらいたい
──U.Y.さんは、チームビルティングにも力を入れていらっしゃいます。20代、30代の中途メンバーが多いなか、どのように育成していますか。
U.Y.:メンバーにはできるだけ「学び」を促進してもらえるよう工夫をしています。
例えば、私からアジェンダを渡してメンバーにトレーニング用の資料を作成してもらい、みんなでレビューしながら完成させる。今度はその資料を使って、シミュレーターを用いて実践に近い訓練をしてもらう……
もともと私たちのチームには多様なバックグラウンドやスキルをもったメンバーが集結しています。教育を重ねるうちに、それまでお断りしていたレベルの仕事も受けられる体制となり、3~4名のチームであれば、通信キャリアからエンタープライズまで幅広い案件も。
最近では空港の自動チェックインシステムなど高レベルの相談も舞い込んでいます。
前職で積極的に行ってきた教育や啓蒙活動の経験やスキルをSHIFTで発揮できるよう、地道にコツコツ積み上げる毎日です。
──最後に。今後、チームとして挑戦していきたいことはありますか。
U.Y.:営業部門との連携を強化しながら、自分たちの手で大きな案件をとっていきたいですね。柔軟に幅広く対応できる私たちの実力を、もっと多くのお客様に知ってほしい。
そのために必要なのは、やはり仲間です。私のような経験者はもちろんのこと、ネットワークの基本的な技術・スキルをすでにおもちで、かつ向上心、向学心がある方を歓迎します。
ネットワーク分野はSASEに限らず奥が深く、網羅的に学習しつづける姿勢が必要です。新人がネットワークの基本的な部分を自立して任せられるのに数年はかかりますが、次々と最新技術や機器が誕生するため広がりのある景色に出会える面白さがあります。
我こそは!と思う方はぜひご応募ください。
──U.Y.さん、本日はありがとうございました!
(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)