「ソフトウェア開発のテスト工程を、これまで培ってきたデータを活用して最適化する。さらにAIを活用して人やドメイン知識に依存しないテスト工程を実現するということが、我々の提供するCATおよびTDのコンセプトです」
このように語るのは、サービスプラットフォームグループ グループ長の森川 知雄です。
CATとは統合型ソフトウェアテスト管理ツール「CAT TEST(COMPUTER AIDED TEST)」のことで、TDとはテスト設計支援ツール「TD(TEST DESIGNER)」を指します。いずれもSHIFTが自社開発しているプロダクトで、事業の根幹を支える存在といっても過言ではありません。
2023年9月にできたばかりのサービスプラットフォームグループでは、これら2つのプロダクトの開発・運用をメイン業務としつつ、ここ1年で爆発的な進化をつづけるAI技術の活用推進や、社内の基盤開発、技術広報などを担っています。
SHIFT入社以来、これらの両プロダクトの開発・運営を通じてプロダクト品質の向上を志向してきた森川に同グループが取り組んでいることと、どのような人材を求めているのか、じっくりと話を聞きました。
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サービスプラットフォームグループ グループ長 森川 知雄
中堅SIerにて品質管理業務を担当。テスト戦略から人材育成までを担当する。テスト自動化技術Seleniumに出会い、テスト自動化ツールをスクラッチ開発し、テストコストを最大40%削減。以後、テスト自動化~DevOpsといった技術に将来性を感じる。2019年、新しいことに挑戦できる環境を求めてSHIFTへジョイン。統合型ソフトウェアテスト管理ツール「CAT」やテスト設計支援ツール「TD」の開発・運営を担うCAT推進室 室長を経て、2023年9月より現職。
目次
生産性を爆上げするために「自社プロダクト開発×AI推進」に力を入れている
多くのお客様の経営課題/IT課題に向き合っているSHIFTでは、「ナレッジ」と「ツール」の強化を目的に、2023年9月にサービス改革部(※現在は「デリバリ改革部」)という部署が新設されました。
私はそのなかのサービスプラットフォームグループのグループ長を務めています。
サービスプラットフォームグループとは、端的にお伝えすると、テストビジネスにおけるプラットフォームをつくり、SHIFTの事業を技術面でブーストさせることで、今後のグロースの屋台骨を担うことをミッションに活動している組織です。
主な活動内容としては、大きく3つ。「CAT」や「TD」といった自社プロダクトの開発・社内普及・運用設計、SHIFT独自の品質保証標準「SQF(SHIFT Quality Framework)」のようなナレッジの見える化・型化、そして技術ブランディングです。
特に最初のプロダクト開発に関しては、現在、進化が著しいAIの活用推進にも力を入れて取り組んでいます。
目標としては、生産性を爆上げするために、SHIFTメンバーに‟息をするように”生成AIを使い倒してもらうこと。
後述するCATやTDへのAIの実装のほかにも、当社の独自言語モデルで構築したさまざまなAIツールを活用してもらっています。
たとえば現時点では、当社独自のChatGPTクローンアプリや、それとセットで使うことを想定した、社内メンバーによるさまざまなプロンプトを共有できる「プロンプトハブ」を提供しています。
ほかにもテストの周辺領域でさまざまな企画を進めていますし、生成AIのプロフェッショナルコミュニティ「アルケミスト」も組成し、社内各所のプロジェクトを支援する仕組みもつくろうとしているところです。
テストデータ10,855万件、不具合データ171万件を活かしたプロダクトづくり
ここまでお伝えした通り、サービスプラットフォームグループの活動内容は多岐にわたるのですが、その大きな軸となっているのがCATとTDです。
CATは、システム開発プロジェクトにおけるテストフェーズのテストケース・障害情報をリアルタイムで管理できるサービスです。
従来よりメインで使われてきたExcel/スプレッドシートとの親和性が高く、リアルタイムかつ正確な品質管理を手軽に実現できるツールとして、ありがたいことに社内はもとより、多くのお客様の製品開発シーンを支える存在へと日々成長しています。
また、CATがテスト工程の管理ツールであるのに対して、テストそのものの設計を支援するのがTDです。
どちらもWebアプリ型SaaSサービスで、企業がこれまで実行してきたテスト内容を参考に「標準化と資産化」を進め、主にマニュアルテスト全般を効率的に作成・実施できることを目指しています。
そして、いずれに対しても現在、生成AIを活用した機能の実装を進めています。
CATに関しては、特にここ数ヶ月で利用率が大幅に上がってきていることもあり、サポート負荷が高まっていることから、RAGを実装したAIチャットボットを実装して簡単な質問には自動で応答できるようにしています。
またTDに関しては、これまで蓄積されてきた10,855万件のテストデータや171万件の不具合データなど(いずれの件数も2024年7月時点)を活かす形で、SHIFTグループ独自のモデルを構築し、テスト観点やバグ検出など、テスト内容に関するさまざまな指標のリコメンドがなされるよう機能実装を進めています。
エンジニアもいっしょに“脳で汗をかく”チームを目指しています
CATとTDは外販プロダクトであると同時に、SHIFTメンバーが使う「社内ツール」でもあります。
たくさんのユーザーにさわってもらうことで、ダイレクトな声をラピッドに聞ける環境があり、スピード感のある開発を体験できます。
また最先端のAIの要素技術を試行錯誤しながらとりこんで開発を進めることになるため、エンジニアとして刺激のある環境を経験できると考えています。
もちろん、社内の業務効率/生産性を爆上げするためには、最先端の技術を追求するだけでなく、フレキシブルに要望を収集して機能へと反映していく必要もあります。
本当に必要な機能というものは往々にして小さな要望のなかから見つかります。社内ツールなので外販プロダクトと比べるとユーザーとの距離も近く、新機能実装に向けた企画はかなり通りやすい環境だと思います。
ただいわれたものをつくるのではなく、ユーザーがほしがっている機能を膨大なデータとともに考えていく。
1万人以上が在籍する大きな企業であっても、機能開発・実装のスピードがはやく、たとえ失敗しても咎めることなく次なるチャレンジの糧にしていく、イテレーティブ(反復型)な開発が可能です。
特にスピード感に関しては、職場として開発者体験を重視しているうえに、現在のAI進化の速度を前提に開発を進めているので、想像以上に「はやい」と感じるかもしれません。
ベンチャー気質溢れる環境だと感じており、そこがサービスプラットフォームグループでの開発の醍醐味だと考えています。
品質レベルを維持したまま、もっとテストを楽にしていく
組織としては引きつづき、AIなどを含め新しい技術などを組みあわせながら、グループ内にたまっているデータ/ナレッジを活用してプロダクト開発を進めていき、SHIFTにしかできないことを推進/発信していく予定です。
先ほど「社内ツールなのでユーザーとの距離が近い」とお伝えしましたが、そうはいってもまだ縮められる余地はあります。
中長期的には、CATやTDのエキスパート制度なるものを設け、エキスパート人材を案件ごとにアサインしていくような仕組みをつくっていきたいと考えています。
SHIFTのDNAでもある「分解して、作業と判断に分業し、量産」できるような制度を構築していくということです。
そのためにも、サービスプラットフォームグループとしてはとにかく「元気なエンジニア」に来てほしいと考えています。
ここでいう元気なエンジニアとは、自ら企画立案して実行できることに面白みを感じてくれるような人。
ただ技術を実装する以外のプラスアルファを楽しみ、自由に意見できる環境を楽しめような人です。
SHIFTには5つのクレドがあるのですが、そのなかでも私は特に、「できないとは言わない、できると言った後にどうやるかを考える」「我々はビジネスの世界におけるアスリートである、脳で汗をかけ」の2つが気に入っています。
技術や機能を通じて、ユーザーの課題を主体的に解決していく。そんなエンジニアになってもらいたいと日々考え、メンバーと接しています。
日本のIT業界は、どんどんと閉塞的になってきていると思っています。多重下請け構造の問題はまだまだ根深く、多くの人材を擁するSIerほど技術とは離れた管理の部分しかできていません。
過剰な品質とテストを求める風潮も、その弊害のひとつといえるでしょう。そこに対してAIを使って是正していくことが、CATやTDのコンセプトであり、サービスプラットフォームグループのミッションでもあると捉えています。
品質レベルを維持したまま、もっとテストを楽にしていく。そんな社会貢献の仕方もあるのではないでしょうか。
(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)