ジェンダーギャップ指数が、先進国のなかでも最低レベルの日本。改善のために政府が号令をかけている「女性活躍推進」という言葉は、もはや聞きなれたものになっています。
ですが、本人の意志と反した状況が生まれてしまっていないでしょうか。
女性管理職数を増やすために、本人のキャリアやライフイベントに対する価値観や希望がないがしろにされていると感じた。そんな以前の職場での経験を赤裸々に語ってくれたY.S.が、SHIFTでのいまに至るまでを追いかけます。
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サービス&テクノロジー本部 品質サービス統括部 産業流通・通信サービス部 流通サービス2グループ Y.S.
新卒でSIerに勤務し、開発工程を一通り経験した後、2020年9月SHIFT入社。大規模ECサイト構築のプロジェクト横断PMOや大手小売業のECサイト更改におけるテストリーダーを経験。2年前に出産し、現在時短勤務中。趣味は読書など。
目次
私の気持ちを置き去りにした、会社からの期待
───もともとはSIerに長くお勤めだったんですよね。なぜ転職を考えられたのですか?
Y.S.:24時間システムを担当して、365日、昼夜関係ないような生活をつづけていたのですが、不規則な生活をつづけることへの不安や、仕事中心の生活によってプライベートがめちゃくちゃになってると感じたことがきっかけです。
当時は30代後半で独身だったからなのか、会社から管理職となることへの期待を押しつけられているように感じました。2019年に政府から「女性活躍加速のための重点方針」が発表されてからは、社内での女性活躍推進系の活動も任されたのですが、その一方で自分自身は仕事に加えて社内業務も任されて、休む時間がほとんどなくなってしまって。
相談しても「あなたはかなりタフなので大丈夫」と笑って流されていたんです。 そのタイミングで実はパートナーと結婚の話もあがっていたので、このまま会社に押しつけられるままに管理職になって、精神的に余裕のない毎日を過ごすことは到底できないと思いました。
───「女性活躍推進」の裏には、Y.S.さんのように辛い思いをされている方もいらっしゃるのですね。いざ転職を考えた際に、SHIFTに決められたのはどういった点からですか?
Y.S.:SIerからステップアップの転職は、コンサルティング会社か、より規模が大きいSIerに行くことが多いです。ただ前職での経験から、昼夜関係なく稼働しなくてはいけない開発の領域は避けようというのがまず第一にありました。
悩みつつもコンサルも受けましたが、内定を複数もらえて年収アップも見込めたものの、SHIFTは上場企業としての安定感や、プライベートとバランスがとれそうという点が魅力的でしたね。
開発が恋しくなるのではいう不安は少しあったものの、私が前職で担当していたのと同じ24時間365日システムを担当されていた上長が、いまはプライベートがしっかり確保できていることを教えてくれて。
「忙しすぎて自分の体や人生ごと壊れることは絶対に避けたい」。そんな私の考えと合っていると感じたことが決め手になりました。
───入社してから育休も取得されていますよね?
Y.S.:はい、実は入社後しばらくしてから妊娠していることがわかったんです。
上長に報告したところ「おめでとう」という反応。当時はコロナ禍で妊娠中の感染は不安でしたが、在宅勤務をメインに、お客様との定例会議出席のための訪問は上長が代わりにサポートしてくれました。
妊娠報告後は速やかに引継ぎメンバーを選定してもらいました。後続のメンバーへの引継ぎ期間も1ヶ月あったので、気持ちに余裕もって業務を引き継ぐことができました。
子どもを守るため。絶対に譲れないのは、「余裕をもつこと」
───復帰後はどのように働いていますか?
Y.S.:産後8ヶ月のタイミングで復帰して、朝9時~16時で勤務しはじめました。子どもが1歳半を過ぎてからは、夕方17時まで勤務しています。
基本在宅で作業していますが、テスト期間はお客様環境じゃないと実行できないテストもあるため、出社をすることもあります。その場合、朝の会議は自宅で参加し、終わってからお客様先に移動しています。私は裁量労働制の勤務なので、時間には縛られすぎずに勤務しています。
繁忙期には子どもを寝かしつけたあとに業務整理や翌日の準備をすることもありますが、静かな時間に思考が働くので、無理をしている感覚はないですね。
ただ正直、楽な仕事ではないとは思います。若手で未経験で入社される方が、将来的に小さい子を育てながら働くという点についてはサポートや育成観点で考えていかなくてはいけないなと思っています。
社会人経験がある程度あれば、自分のキャパシティを踏まえて業務量を上長とすり合わせができますが、親である従業員に余裕がないと、車やバスの置き去りのように子どもが事故にあってしまう怖さがあります。
私も、過去には早朝に出社して無理をした時期もありましたが、子どもに何かあっては遅いので、いまは「余裕をもつこと」を譲れないポイントにしています。
育児する人をサポート、その陰で苦しむ人が生まれないように
ただ、子どもがいる従業員が「余裕をもつ」ために、他の従業員が犠牲になることは絶対に避けなくてはならないこと。育児支援関連の議論で漏れがちなのは、サポートする側への配慮だと思います。
育児などで大変そうな従業員をみんなでサポートするというのは、助け合いの精神でいいことだし当然のこととしてとらえがちですが、その陰でかつての私のように一方的に負荷をかけられたり、嫌な思いをさせられても不満や意見がいえない、という事態が起こりがちです。
ですから時短社員の業務については、アサイン前に十分な検討が必要です。ただ会社側と本人がアサイン前に大丈夫であろうと判断しても、実際は時短だと難しい担当だった、ということもありえますよね。
したがってアサイン後にもし合わなかった場合は、柔軟に担当を変えられることが理想。その点SHIFTでは相談に対してすぐにアクションをとってくれることが多いです。
私も復帰直後の案件が、時短で参加できない時間帯に打ち合わせが多かったり、即時対応が必要な依頼などもあるプロジェクトで対応が難しかったので、上長に相談して割とすぐに変えてもらいました。
ちなみに現在の私のチームのマネージャーも全体を俯瞰しながら、メンバーが余裕がない状態になる前に、追加の人員を確保したりサポートをしてくれていますね。また私自身が時短で勤務しているので、配下にいるメンバーにも残業はさせない作業量になるよう調整しています。
できないことは正直に伝える。それでも心苦しさを感じなくてすむ理由
時短で働くうえで気をつけているポイントとしては、他に「かっこつけない」というのも大事な点ですね。育休や時短勤務中は、それまでと同じ量の仕事はこなせなくなるのは当然。「もっと本当はできるのに」とギャップに苦しむこともありました。
でも「いまはできない」と正直にまわりに伝えることで、無理をしない、一人で苦しまないように心がけています。
───無理をしない働きかたのために、上長とのコミュニケーションは特に大事ですよね。
Y.S.:そうですね。基本的に、時短勤務の従業員をチームに受け入れる場合は、あらかじめ本人のタイムスケジュールを鑑みた調整を済ませてくれています。例えば保育園の迎えにいかなければいけない夕方のMTGは別担当が出るように、などです。
さきに調整してくれていることで働く当事者がまわりに迷惑をかけてしまっている、という心苦しさを感じづらいと思います。
また、もし案件が合わなかった場合は、先に述べたように、上長と相談して異動も可能です。特定の個人が我慢するような体制にはなりづらいところが、とてもよいと感じています。
時短勤務はお客様から懸念いただくこともあるのですが、そうした心遣いもあって私は仕事に集中ができ、次フェーズのプロジェクトにもご指名いただけたのがとてもうれしかったです。
私が家庭とバランスをとりながら働き、成果もだせているのはまわりの人たちのおかげですね。
乳幼児を育てる親に向けた制度についてはこれからもっと拡充していくことを期待していますが、時短が15分単位で設定できる点はとてもいいと思います。それを利用して、今後は少しずつ時間を延ばしていき、ゆくゆくはフルタイムに戻っていこうと考えています。
また会社のなかでの役割については、メンバーの「育成」を自分も気にかけているところですし、会社からも期待されている点なのかなと感じています。未経験で入社される方々を時間をかけてどう育てていくのか、本当に身になる方法を考えたいですね。
(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)