かつて「エンジニアは男性の仕事」というイメージがありましたが、そんな時代はすでに終わったといえるのではないでしょうか。昨今SHIFTにも、女性のエンジニアがたくさん入社してくれています。
とはいえ先輩の女性社員は希少ゆえに、身近にロールモデルがいないと不安を抱えることもあるかもしれません。
そんな女性エンジニアの希望のような人物が、2023年、SHIFTの門戸を叩いてくれました。それが品質サービス統括部、金融サービス部のN.F.。ソフトウェア開発会社に新卒で入社してから現在まで、実にIT業界30余年の大ベテランです。
その経歴のうち25年間は世界的に有名な外資系IT企業で勤めあげた彼女ですが、転機は30代半ばのころ。「テスト・品質保証」という仕事に出会い、この仕事で生きていく、という覚悟をもったそう。
彼女の意思決定や、働くうえで大切にしている考えには、女性エンジニアにとって役立つヒントが散りばめられているはずです。彼女のこれまでとこれからについて、話を伺いました。
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金融サービス部 金融BA・PMグループ N.F.
大手ITベンダーで、金融業界のプロジェクトに携わりながら、テストアーキテクト、テストコンサルタント、プロジェクトマネージャー、アプリケーションアーキテクトなど、さまざまな職務を経験。培ったスキルを後進に残すため、品質保証の専門性が高く、裁量のある環境で働きたいと思い、SHIFTへ入社。趣味はバイオリンの演奏とスキー、15年連れ添ったネコと遊ぶこと
目次
自分で考え行動する。社会人としての基礎を築いた数年間
大学生のころは小学校の教員になりたいと思っていたのですが、試験に失敗してしまって。研究室の先輩に誘われ、ソフトウェア開発の道に入りました。当初は翌年、また教員試験を受けようと思っていたものの当時の仕事が楽しくて、結果的に教職の道に戻ることはありませんでした。
その後は「面白いプロジェクトがあるから、いっしょにやらないか」と誘われ、30代前半までの間に2回転職を経験しました。
システム開発はもちろん、マニュアル作成、セールス企画、お客様サポートなど。若いころはとにかく何でも経験しましたね。どうすべきかは自分で考えて行動する。仕事の基礎は、この時期に叩き込まれました。
30代半ばのころでしょうか。一人でも生きていける経済的な基盤がほしいと思い、転職するなら最後のタイミングと考え、外資系IT企業へ入社することになりました。
「私にはこれができます」。その覚悟がキャリアを切り拓いた
入社後はSEとして流通系のお客様を担当。グローバル企業で役割が明確にわかれている組織体制だったこともあり、例えば、SEの立場から「性能検証はこうした方がいいのでは」という声をあげるも、専門領域ではない人の意見は通らないこともありましたね。
いま思えば致し方のないことだとわかるのですが、当時は若かったこともあり、かなりがっかりした記憶があります。
そんなあるとき、研究所で勤務するという社内公募を見つけたんです。 アメリカで開発したパッケージソフトウェアを日本でテストする、テスト専門の部署です。いま思えば、この出会いが私の人生の転機になりました。
当時は開発とテストを切りわけることができるんだ!という驚きと、これまで経験してこなかった領域の仕事に興味が湧いたこともあり、その環境に飛び込むことにしました。
異動後は、ミッションクリティカルなシステムで発生した不具合の状況や再現性を確認。アメリカの開発チームといっしょに課題を解決しながら、システムの最後の砦を担えることに、やりがいを感じていました。
3年後、所属部署がサービス部門に統合されたことで、私もテスト担当として、プロジェクトに参画する日々がはじまりました。その後、5年ほどオーナーPMの役割を担いましたね。要件定義からリリースまでの一貫した品質担保のアプローチ、プロジェクト管理、コスト・リスクのハンドリング、お客様対応について経験を積みました。
ただ品質保証の部署に所属していたことと、社内には経験豊富で優秀なPMが多くいたこともあり、自身の進むべき道を問われることになりました。ある程度のキャリアを積むと、置かれた場所で自身の専門性を発揮することを求められます。「自分には何ができるのか」と向き合った結果、「品質保証のプロフェッショナル」として、進むことを決めました。
進むべき道を決めたあと、しばらくしてSHIFTに出会いました。仕事の進め方に関わる意思決定や体制の組成などが特徴的で、課題対応へのスピード感がすばらしいと感じました。途中参入にも関わらず、お客様の期待値を上回り、信頼を勝ち得ている点が印象的でしたね。
いったいSHIFTとはどんな会社なんだろうと興味をもつようになった時期と、かつて同じ会社で働いていた先輩がSHIFTにいて、私を誘ってくださった時期が重なりました。これはいま行くべきだと直感し、転職を決意したのです。
逃げずに立ち向かうこと。経験をチームのために役立てること
ソフトウェアテストの仕事に出会って20年以上が経っているので、何でもできるのではないかと思われるかもしれませんが決してそんなことはありません。
いつだって新しいプロジェクトに呼ばれるときは心配ですし、自信もない。それはいまも同じです。だって一つとして同じプロジェクトはないのですから。業務知識がない場合はなおのこと。でも「あなたは品質保証のプロフェッショナル」という期待値が圧しかかります。
でも残念ながら、自信をもつための特効薬はないんです。積み重ねた経験からしか、対応できる幅は広がらない。それがわかってきたから、逃げずに立ち向かうことが何よりの近道なのだと、いまは思います。
同時に、私の後につづく人が同じような苦労をする必要はないし、自分だけが能力を最大化して頑張る必要もないと気づきました。
だからこそ、重要な観点や手順を整理してまとめ、具体的な方法論としてそれらを伝えることを仕事のなかに組み込むようにしています。
異なるプロジェクトでも、流用できる基礎や骨子、流れは必ずあります。なぜその仕事が必要なのか、誰に適用するのか、どう適用するのかもあわせて残すようにしています。
マニュアルやノウハウがあることで、仕事を半分の時間で短縮することができる。その分、他のことに時間を割けるのであれば、最終的にチームの力は倍以上になると思っています。
上流工程から支援し、プロジェクトを成功に導く。新しい品質保証のカタチ
現在はドアオープナーとして、新たなお客様先でSHIFTのブランド価値を上げること、信頼を勝ちとって、新たな市場を広げていくこと。そんな新しい役割を任されています。
欠陥対応のコストは、後工程になるほど膨れ上がることはよく知られていますが、大抵の場合、品質保証のスペシャリストがプロジェクトの上流工程から携わることはいろいろな理由でむずかしく、本当の意味でお客様の幸せを実現することはむずかしいと感じていました。
でもいまSHIFTではプロジェクトのスタートフェーズから入り、望んだ仕事ができています。
システム開発の上流工程から品質保証の観点があれば、後工程でのトラブルの多くは未然に防げます。結果的に費用も精神的負担も最小限で済み、プロジェクトを成功へと導くことができます。
前述したようによいモデルケースを標準化して、方法論を整理し、残していくこと。そして後進に伝えつづけていく体制を強化したい。それこそが自分に求められていることなのではないかと思うんです。
SHIFTも標準化に力を入れている会社ですが、さらに発展すべきところも多いと感じます。どうすれば、誰でも標準化されたノウハウを応用できるようになるか。まだまだ深堀りが必要です。いままでの経験を活かして、ここに本気で向きあいたいですね。
はじめてのプロジェクトで感じる不安や負担を軽減し、最高のパフォーマンスができる環境を整えられたなら。そうしたらSHIFTは、きっともっといい会社に、そして強い会社になっていくはず。これからは、そんな未来を率先して創り上げていくつもりです。
(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)