あるインターネット銀行に対し、本記事の主人公であるコンサルティング部のN.Y.は「決済業務コンサルタント」として、支援にあたっています。
「クレジットカードの不正利用を食い止めるべく、小刻みに改定されるのが、各カードブランドによる国際ルール。そのルールに準じて、コンサルティングを行いながら、システムの改修を推進していくのが主な役割です」
その業務に必要なスキルは?やりがいは?──今後やりたいことなども含めて幅広く話を聞きました。
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サービス&テクノロジー本部 コンサルティング部 コンサルティング3グループ N.Y.
証券会社の自社システム開発、航空会社のSEを経て独立系大手SIにて多数の大規模プロジェクトを経験。SHIFT入社後は、金融事業ビジネスユニットの責任者、コンサル部に異動し現職。好きな言葉は、「切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、たんだ踏み込め神妙の剣」
目次
システムの性質を踏まえて、ルール改定をどう反映させるか。知識と経験が試される仕事
──まず、これまでのN.Y.さんの経歴についてお聞かせください。
N.Y.:新卒で証券会社に就職し、ブラックマンデーを機に航空会社のSEとしてIT業界の門を叩きました。その後大手SIに転職し、20年ほど在籍していました。
職種としては決済業務コンサルタントのほかに、PMやPMO、SEを経験。貸金業、金融業、製造業、サプライチェーンマネジメント、情報・通信業、航空業と幅広い業界に関わってきました。
前職でたまたまクレジットカードの案件にアサインされたのが、決済業務コンサルタントになったきっかけです。エンジニアにもさまざまな役割がありますが、決済業務コンサルタントは特殊かつ緻密さが求められる仕事。従事する人の数は圧倒的に少ないと思います。
2020年にSHIFTへ入社してからは、大手通信会社や大手インターネット銀行のプロジェクトのコンサルタントを務めてきました。
──あらためて、決済業務コンサルタントの仕事内容について教えていただけますか。
N.Y.:冒頭でも少し触れましたが、クレジットカードの各ブランド会社は、小刻みにルール改定をして、システムを進化させつつ、偽造やスキミングなど不正利用の防止に努めています。
ステークホルダーにルールを遵守してもらうため、中心となって動いているのがイシュア(クレジットカード発行会社)やアクワイアラ(加盟店管理会社)。彼らとともにルールに則ったメンテナンスを推進するのが、私たち決済業務コンサルタントの主な役割です。
ルール改定に関わるビジネスレターは、決まった曜日・時刻に発信されます。春と秋の年2回通知されるルール改定順守「ブランドエンハンス」はそれぞれ第3版まで出ますし、大きな障害などがあれば、さらに途中でルール改正が入るときもあります。基本的には途切れることなく、ずっと業務が回りつづけている感じです。
──具体的にはどのような業務サイクルなのでしょうか?
N.Y.:ビジネスレターがきたら、まず英語から日本語に訳していきます。専門用語が多く、翻訳サイトをつかうとまったく違う内容になるケースが多いので、ほぼ自力。内容を理解する、それがシステムにどう影響するのか調査する、の2段階で丁寧に改定内容を読み解いていきます。
さらに各ブランドのシステムの性質や傾向を踏まえて「ここの部分を変えていきましょう」「このデータを反映させるのはやめましょう」など、実施に向けた提案をします。
イシュアやアクワイアラの承認がとれたら、今度はカードブランド側に問題がないか確認していきます。ここまでの作業で、およそ2ヶ月を要します。
承認いただけたら、今度はシステム担当に変更内容を伝えていきます。かなり細かく指示を出さないと、ルールの完全適合はむずかしいので、コードレビュー的に自らプログラムにまで落とし込み、要件定義書も作成します。ひととおり、改修が終わったら品質テストを行います。
業務・システム両方の知識を有する“ハイブリッドさ”が最大の強み
──N.Y.さんがいま、担当しているプロジェクトについて教えてください。
N.Y.:イシュアであるインターネット銀行の案件を担当しています。すでにそのお客様とは他サービスでお取引があったんですが、 「社内の決済業務担当者が退職してしまい、後任を探している」と直々にSHIFTに相談があったことで案件がスタートしました。
2023年1月に開始した当初の業務は、先ほどお話ししたようなルール改定に基づいたシステム改修のコンサルが中心でしたが、日が経つにつれ、任される範疇がどんどん広がっていきました。
3ヶ月目からは、お客様側の戦略チームにアサイン。コアメンバーはお客様先の営業部長、営業マネージャー、システム部副部長、他社コンサルタントと私の5名。
現在、新しいサービスについて検討を重ねています。以前は個人情報やルールを書き込むのは、カードの裏側にある「マグストライプ」という黒い部分のみでしたが、いまではチップやデバイスへと拡大しています。こうした技術の進歩とともに、未来への構想も広く豊かなものになりました。
そのほか、営業部や開発部へカードブランド関連のレクチャーを依頼されるようになったり、カスタマーセンターの責任者から調査依頼や相談、会議の参加要請がきたり。お客様先での私の認知がどんどん拡大しているようで、大変恐縮しています。
──なぜ短期間で、絶大な信頼を獲得できたと思われますか?
N.Y.:決済業務コンサルタントとして長年培ってきた知識や経験のほか、業界の人脈があるのは頼りにされている要素のひとつかなと思います。国内外問わず、各カードブランドに旧知の方が複数名おり、いずれもすぐにコミュニケーションがとれる関係性です。
一番の理由は、私がブランドルールだけでなく、システムのことを理解しているからではないかと。ブランドルールのみを熟知しているコンサルタントはいますが、システムと両方、となるとそう多くはないんです。
つい先日も「N.Y.さんがプロジェクトに参画されてから、社長に報告できるスピードが圧倒的にはやくなりました。百人力です」とお褒めの言葉をいただきました。実際に関係者のみなさんが次々と昇進されており、こちらもうれしい限りです(笑)。
お客様からずっと必要とされる存在でいるために
──決済業務コンサルタントのやりがいは何でしょう?
N.Y.:この職種に限らないのですが、「お客様から必要とされる」「支援によって目に見える成果を出す」ことが私の最大のモチベーションです。いまの担当案件はこれらが達成できているので、充足感に満ちた毎日を送れています。
そもそも私が2020年にSHIFTへ転職したのも、お客様に寄り添う仕事をつづけたかったから。勤務年数とともに、マネジメント業務が増えてきてしまい、会社から期待されていることと自分の望むキャリアとの乖離が出てきてしまったんですよね。
──充実した日々のなかで、いま一番力を注いでいることは何ですか?
N.Y.:先ほど少し触れた、お客様戦略チームの業務です。カード本体をもたなくても、スマホだけで買い物ができるカードレス決済が一般化しつつありますが、さらに便利に利用できる世界を目指しています。導入を検討しているサービスは複数あって、それぞれにむずかしさはありますが、新しい発想や技術に触れる楽しさの方が圧倒的に勝りますね。
いまやりたいことは後進の育成。どんどんスキルトランスファーしていきたい
──今後、実現していきたいことについてお聞かせください。
N.Y.:考えているだけでまだ何も行動できていませんが。複数社の案件を同時に管理する「プログラムマネジメント職」に私が就き、OJTを通じて、決済業務コンサルタントの後進を育てていきたいと思っています。
マネジメントを通じて後輩たちへ、スキルトランスファーを進めていけたら理想的だなと。
SHIFTには課題や問題が発生しても、決して人任せにせず、自分自身で考え抜いて対応する人が多いように感じます。もし社内で「我こそは」という人がいたら、両手を広げて歓迎したいですね。
──最後に。あらためて、決済業務コンサルタントに必要な素養は何だと思いますか?
N.Y.:自らクレジットカードのルールやシステムの仕組みを理解しようとする積極性や粘り強さですね。一度諦めてしまうと、とたんに追いつけなくなってしまいます。
この仕事には、正解がありません。各カードブランドの考えやシステムの性質を理解して、毎回変わるルールを正確に読み解く。メンテナンスするために、最善策を練り、実行に移す。こうしたサイクルをこなすには、一定以上の経験と高度なスキルを要します。私は20年間つづけた結果、業務、システム双方の知識が蓄積されていき、お客様からも信頼していただけるようになりました。
20年といってしまうと、心理的なハードルがさらに高くなってしまうかもしれませんが(笑)、専門性を身につけたい人や最先端の技術に触れたい人、自己成長したい人はぜひ応募いただけたらうれしいです。
──N.Y.さん、本日はありがとうございました!
(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)