設計書通りにシステムをつくることが大前提にある開発現場では、優秀なエンジニアほど「もっとこうした方がいいのでは」という想いを抱えることも多いでしょう。
しかし、所属する会社のスタンスやお客様との関係が壁となり、自分なりの考えを実現することや根本的な改善などにも手を出せない場合、もどかしさを感じることは至極当然です。
「SHIFTでは、ベクトルがお客様に向いていれば、そういった想いにブレーキをかける人はいませんよ」と語るのはT.H.。彼は株式会社助太刀(以下、「助太刀」)の開発プロジェクトに品質PMO、そしてSHIFTから参画するQAチームの管理者として関わっています。
自信をもって取材に応える姿から、お客様とともに、プロダクト開発に対して真摯に向き合われている様子が伺えました。今回は助太刀のみなさまと進めるプロジェクトの内容と、ネットサービス部で醸成されたカルチャーに迫っていきます。
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ネットサービス部 人材・教育サービスグループ T.H.
前職ではテクニカルサポート、インフラ、コーディング、プロダクトマネージャーなどジェネラリスト志向でひと通り経験。2021年4月にSHIFT入社後はテスト計画立案や不具合分析、設計者の育成などテストの上流工程を担当。すべての現場で綺麗に引き継ぎながら、プロジェクト満了することを意識している。当時の仲間はいまでも仲よし。
目次
ありたい姿を実現するパートナーとして、チームで伴走する
───プロダクトの概要とSHIFTの支援を必要とした背景について教えてください。
お客様である助太刀は職人と工事会社を結ぶマッチングプラットフォームを開発されています。これまで建設業界は人手不足に悩まされてきました。大阪万博やリニア新幹線などインフラ工事の需要は伸長しているにも関わらず、人が集まらない。業界の課題解決に向けたプロダクトともいえます。
プロダクト開発の現場としては、非常に限られたリソースでテストを行っていました。不具合修正のたびに、別の箇所に影響が波及。不具合が頻繁に発生する状況でした。新規開発の継続に向けて、本質的に品質を担保する必要性を認識され、SHIFTにお声がけいただきました。
───お客様は、SHIFTに何を期待されていたのでしょうか。
単に不具合を見つけるだけではなく、潜在的なリスクが残らないようなプロジェクト推進、開発プロセスの改善などを期待されていたように思います。QAチームの構築を見据えた支援としての期待値が強かった印象ですね。
ありたい姿を実現するパートナーとして、管理者、設計者、実行者のチーム体制でのご支援を提案。さらに品質PMOとして、プロダクト開発、品質管理、あるべきプロセスも含めてエンジニアリングマネジャー(以下、「EM」)をフォローできることを伝えました。 結果的にSHIFTを選んでいただけたのは「QAチームの基盤を一緒につくりあげていける」と感じていただけたからかなと思います。
抜本的な品質向上に向けて、ボーダーレスに動きつづける
───本プロジェクトの支援で難しかったことは?
リソースが十全ではないなかで「工数に対する価値の最大化」がSHIFTのテーマでした。テストはあくまで品質を担保するための手段。目的達成に向けて、テストという枠を超えて取り組むことが抜本的な品質向上に必要だと考えていました。
例えばマニュアル作成や各設定ごとの挙動をフロー図で可視化。ドキュメンテーションのニーズに対しても柔軟に取り組んできました。また、一時的にPdMが不在の時があり、代わりを担って、EMとPMM(※プロダクトマーケティングマネージャー)の橋渡しをしていたこともあります。
さらに、ユーザー目線で不便に感じる部分を積極的に報告。実際、PdM/PMMの人たちが、我々の声を非常に参考にしてくれているんですよ。プロダクトに「何を実装すべきなのか」についての意見を求められている実感がありますね。
───支援の成果について教えてください。
SLO(※サービスレベルの目標値)を計測する仕組みを整備したうえで、SLO99.9%を達成できていることです。
SLOの算出方程式については、開発チーム全体で話し合いながらつくりました。当初はSLO 99%を下回る数値からのスタートでしたね。
SLO向上のために、まずは「不具合が出るのが当たり前」というチーム内に根づいていた意識を変えていくことが必要だと考えていました。だからこそ、品質に対する啓蒙活動は泥臭く、根気よく行いましたね。
ボトムアップでこうした動きをとることで、「なんとか数字をあげたい」と考えるEMからチームへの発信も受け入れられやすくなりました。関係者全員が不具合を出さないぞというスタンスで臨むことで、実際のSLO数値が99.9%にまであがったのです。
目に見える成果と行動もふまえて、「ここまでやってくれるとは驚きました」という言葉をいただけたときは非常にうれしかったですね。
やりすぎが馬鹿をみない。おせっかいが歓迎されるカルチャーと評価制度
───SHIFTの強みとは何だと思われますか。
お客様のための取り組みに「ブレーキ」を踏まないことです。印象的だったのがテスト自動化の提案。上司との対話を通して「SHIFT側の都合は気にしなくていい、お客様のためになるのであれば、胸を張って提案して欲しい」と背中を押してもらえました。
提案の結果、「SHIFTに期待しているのはテストだけではないので、テストを自動化に置き換えるより、ホスピタリティを兼ね揃えた人材の参画を継続したい」という言葉をいただきました。自動化を凌ぐ価値を提供できていることに喜びを覚えた瞬間でしたね。
───「ブレーキ」を踏まない風土が、根付いている理由は何だと思われますか。
SHIFTのカルチャーとして、「おせっかい大歓迎」みたいなところがありますよね。しかもお客様の期待値を越えたことによって、プロジェクトが拡大すると、報酬として正しく自分に返ってきます。サービス精神旺盛な人が、やりすぎて馬鹿をみることがない評価制度の存在が大きいかもしれませんね。
ネットサービス部はコンシューマー系のプロダクトに向き合っています。我々が大切にすべきなのは、一般ユーザーの感覚。 「こっちの方が楽しいよね」、「こういう方がユーザーにとって不快感が無いよね」などの感覚は基幹システムなどよりももちやすく、お客様と同じ視点に立ちやすいともいえるでしょう。
パートナーとして認めていただき、意見を尊重してもらえることは、「ブレーキ」を踏まないという私たちのスタンスをさらに強化させるのです。
1割の余白をあえて残す。メンバーの個性を引き出すために
───今後、目指しているチームとしての成長や将来像を教えてください。
価値の最大化を目指して、メンバーの個性を尊重し、高いモチベーションを引き出したいと思っています。そのためにも、メンバーのやりがいを誰よりも追求できるマネージャーでありたいです。
先ほど、テストの枠を超えた取り組みについてふれました。裏を返せば、テスト以外のことをメンバーに頼んだ際、「これは自分の業務の範囲外」という捉え方をする人がいないということです。
自分を信頼してくれるメンバーの力を引き上げていくためにも「メンバーの個性を潰さない」という信念があります。
マネジメントは定量的にプロジェクトを管理する側面もあると思いますが、身動きがとれないような厳しい管理では個性を育めません。
その人ならではの視点、「この不具合はこの人だから見つけることができた」という色を引き出すためにも、それぞれの役割のなかに1割の余白を残したい。そこで生まれた発見を標準化していくことで、ほかのメンバーでもできるようになる。この集合体がチームとしての成長に繋がると考えています。
また、自分の個性を認識することで得手不得手も見えてくる。そうすると、得意を武器に成功体験を積み重ねることもできます。
今後、メンバーが違うプロジェクトに参画することになっても、個性を認識し、やりがいをもって働き続けて欲しい。そのために、誰よりもメンバーの未来を見据えながら、向き合いつづける。この歩みを止めないように、自分自身も日々成長していきます。
(※本記事の内容および取材対象者の所属は、取材当時のものです)