イベントレポート – RECRUITMENT|株式会社SHIFT https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz Fri, 21 Aug 2026 07:18:25 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.2.8 12,000ケースのテスト設計を0.4ヶ月で。プロに比肩するテスト設計ができるAIエージェント構築の要点  https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1565/ Mon, 24 Aug 2026 00:00:00 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=58515 JaSST’26 Tohoku 登壇レポート 

生成AIの活用により高速化するシステム開発。それに伴い、増大するテストの負担。

「高速なリリースを維持しつつ、品質をどう担保すべきかわからない」と悩む品質管理や開発現場の方は多いのではないでしょうか。

今日、QA(品質保証)業務では、 AI活用による変革が求められています。 

2026年5月29日、「生成AIと歩むテスト設計 〜AIはもう1人の仲間〜」をテーマとするソフトウェアテストシンポジウム「JaSST’26 Tohoku」が開催されました。 

本イベントのプレミアムスポンサーを務めたSHIFTからは、CATエヴァンジェリスト 石井が「高速な品質フィードバックを実現するAIテスト設計エージェント構築の要点」というタイトルで登壇しました。 

テスト熟練者の知見を体系化したSHIFT独自の品質保証基準「SQFSHIFT Quality Framework)」とAIを融合させ、テスト設計のプロセスそのものを抜本的に変革したアプローチとは? 

  • CATエヴァンジェリスト 石井

    倉庫事業企業のシステム部門にて、基幹システムの開発・保守・導入および大規模基幹システム移行への参画を経験し、2015年にSHIFT入社。CAT開発チーム内でユーザーサポートとして、ユーザーと開発メンバーのブリッジを行い、ユーザーの課題分析や新機能提案などを日々実施している。 

目次

開発スピードの加速が招く “QA業務のボトルネック化”をどう防ぐか

近年、AIを活用した開発手法の進化により、プロダクトの企画から市場投入までのサイクルは劇的に高速化しています。ビジネスの競争力を高めるうえで、このスピード感は大きな追い風になっています。

しかし、その反面、開発される機能の量は爆発的に増加し、それに伴って品質を検証すべきテスト範囲も規模が拡大しています。 

開発のスピードがどれほど加速しても、つくられたプロダクトが正しく動くかを確認するQA業務の多くは、依然として人の稼働時間に依存しています。

限られた人員と時間のなかで膨大なテストをこなさなければならない旧来型のQA業務は限界に近づき、事業成長を阻むボトルネックになりつつあるのです。 

この課題を解決するうえで重要なのは、単純な人員の増強ではありません。人海戦術によるアプローチを脱却し、AIを活用してテストプロセスそのものの構造を抜本的に変革することにあります。

AI時代におけるQAの“あるべき進め方”とは?

SHIFTにおける従来のQA業務は、お客様から機能仕様書などのプロダクト情報をいただき、テスト計画やテスト設計(テストケースの作成)を行った後、お客様のレビューを経てテストを実行し、品質情報をフィードバックするという流れでした。

現在、私たちが取り組んでいるのは、この一連のプロセスのなかで、従来は人手で行っていたテスト設計と実行をAIで実施する取り組みです。

勤務時間やアサイン調整、キャッチアップによるリードタイムの増加など、人手でのテストの制約を取り除くことで、品質フィードバックをさらに高速化します。 

今回は、特に熟練の思考力が求められるテスト設計を、AIでどのように実現したのかに焦点を当てます。

機能テストを対象に「対象とするシステムを限定せず、弊社のテスト設計プロフェッショナルと遜色のない品質のテストケースをつくり出すこと」を目指しました。

AIへのインプットは、開発ドキュメントと弊社エンジニアが作成するテスト方針の2つに絞りました。

プロの暗黙知を体系化した「SQF」とAIの自己採点で、高品質を担保する

弊社の現場で運用するためには「人が理解し、必要に応じて修正できる成果物であること」が必要でした。そのため、アウトプットはテストコードではなく、自然言語で書かれたテストケースであることを要件としました。 

また、テストケースの書き方や粒度はこれまで手動のテスト設計で実践してきたとおり、SHIFT独自の品質保証標準「SQF」に準拠する必要があります。これにより、カバレッジやテスト実行時の可読性を担保します。 

SQFは、世界的品質保証標準(ISTQB、ISO/IEC/IEEE 29119)と年間4,000件の支援経験から得たナレッジを融合させたもので、テスト熟練者の深い思考プロセスや検証の観点、粒度の細かさ、正確な記述方法などを体系化した、いわば「プロの暗黙知を言語化したナレッジ集」です。

これを実現できたポイントは、大きく2つ挙げられます。 

1つ目は、SQFに基づいてテスト設計のプロセスを徹底的に分解したこと。 

AIへインプットを丸投げしても、成果物は安定しにくくなります。そこで、「スコープ決定」「ケース生成」「自己レビュー」といったSQFに準拠した役割ごとに、専用のAIエージェントを直列に配置したのです。 

さらに、このサイクルを何度も回し、過去のサイクルの成果物をブラッシュアップできるような構造としました。 

2つ目のポイントは、AIの実行プロセスに「三段階の実行レベル」を組み込んだことです。 

実行レベルの一段階目では、最初のAIエージェントが、インプットとなる機能仕様書やテスト計画書の妥当性を入念にレビューする段階とします。

また、テスト設計に必要な情報が不足していると判断した場合は、弊社のエンジニアが仕様情報を整備、またはテスト計画書を修正します。 

二段階目では、AIエージェントがテストケースを一通り生成します。ここでは、全体の構成や網羅性に抜け漏れがないかを確認し、案件で求められる品質に到達する見込みが立っているかを全体像から評価します。 

三段階目では、そのテストケースに対して、SQFに基づく10個の観点に基づき、AI自身が成果物を「100点満点」で自己採点します。

もし点数が基準に満たなければ、過去のサイクルの成果物をベースに、AIが自律的に修正とブラッシュアップを実行します。 

この自己採点とブラッシュアップのループは、スコアの向上が見られなくなる(精度が頭打ちになる)まで、何度も何度も自動で繰り返されます。 

単一のプロンプトを用いたAIへの丸投げではなく、妥協を一切許さずにAIの限界まで品質を高めつづけるこの仕組みこそが、人間の熟練者に匹敵するテストケースを生み出す源泉なのです。

12,000ケースのテスト設計期間を半分以下に

この新たなテスト設計手法は、実際の開発現場ですでに高い成果を上げています。 

例えば、12,000ケースに及ぶ大規模なプロジェクトにおいて、このAI駆動のアプローチを適用した結果、人手がつくるのと遜色のないクオリティを維持したまま、通常であれば1ヶ月を要するテスト設計期間を、わずか0.4ヶ月へと削減することに成功しました。 

私たちは、この取り組みで得られた知見と技術をSHIFTのサービスに組み込み、お客様への価値提供につなげていこうと考えています。今後の発信にもぜひご注目ください。 

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、イベント開催当時のものです) 

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限定公開:AIがコードを書く、エンジニアは理想を描く。SHIFTが示す「ストラテジックアーキテクト」としてのキャリア https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1596/ Sun, 23 Aug 2026 23:30:00 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=59357

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欠陥分類を2週間から1時間へ。AIを人間による分類精度にまで到達させた「5つのプロンプト術」 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1552/ Wed, 19 Aug 2026 00:00:00 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=57295 JaSST’26 Tokyo 登壇レポート

ソフトウェアの品質を可視化し改善につなげる、ODC分析

この手法は「分類」と「分析」の2つの工程からなりますが、特に前段階の分類は膨大な手作業により全体の8割もの工数を占めるほどの重労働で、現場の大きな負担となっていました。 

2026年3月20日に開催され、SHIFTがプレミアムスポンサーを務めたJaSST’26 Tokyo」。

本イベントに登壇したCATエヴァンジェリスト 石井 優、エグゼクティブ・テストスペシャリスト 山腰 直樹、テストエンジニア 吉澤 麻由の3名は、この欠陥分類にAIを適用し、作業にかかる工数を約2週間からわずか1時間へと劇的に短縮を実現した取り組みを紹介。 

AIは自信満々に間違える――。取り組みのなかで直面したこの厄介な壁を突破する鍵となったのは、「あいまいさを可視化する」「逃げ道を用意する」という発想でした。

本記事では、現場の最前線で立ちはだかった「5つのつまずき」と、それらを解消しただけではなく、人間による分類精度にまで到達させた「5つのプロンプト術」を紐解きます。 

  • CATエヴァンジェリスト 石井 優

    倉庫事業企業のシステム部門にて、基幹システムの開発・保守・導入および大規模基幹システム移行への参画を経験し、2015年にSHIFT入社。CAT開発チーム内でユーザーサポートとして、ユーザーと開発メンバーのブリッジを行いユーザーの課題分析や新機能提案などを日々実施している。 

  • エグゼクティブ・テストスペシャリスト 山腰 直樹

    大手ITベンダーにて、約38年にわたりソフトウェアエンジニアとして製品開発に従事。その後、ITシステム開発におけるソフトウェアテスト事業の経験を経て、2022年2月にSHIFTへ参画。現在は海外事業推進部にて顧客支援を行う傍ら、ソフトウェアテスト事業拡大の一環である「欠陥分析サービス」を立ち上げる。SHIFTのテストオファリングを組織全体に浸透させ、顧客ニーズに最適化した支援を提供できるよう精力的に活動中。

  • テストエンジニア 吉澤 麻由

    国際的な標準規格(IEEE 29119)などをベースに、自社のナレッジを融合して体系化したSHIFT独自の品質保証標準「SQF(SHIFT Quality Framework)」を構築し、現場への適用を推進。書籍『駄目パターンに学ぶ 失敗しないソフトウエアテスト実践ノウハウ』で全体監修を、その改訂版であるSHIFT流 AI時代のソフトウエアテスト』においても執筆の中心的役割を担った

目次

全体工数の8割を占める欠陥分類。手作業と属人化の壁

石井:今回はAIを活用してソフトウェアテストの欠陥分析を劇的に効率化した取り組みについてお話しします。 

まずは、この話のベースとなっている「ODC分析」についてご紹介します。ODC分析とは、テストや本番運用で発生した欠陥(不具合)の情報を分類し、傾向の可視化と品質改善につなげる強力な分析手法です。 

従来、欠陥分析には、統計的分析(数の偏りを見る分析)と原因分析(なぜなぜ分析)の2つがありました。ODC分析はこの中間地点に位置しています。

約300件程度の不具合情報から全体の傾向を把握しつつ、一つひとつの欠陥の意味を捉えて改善アクションにつなげることができる、品質改善の切り札ともいえる手法です。

有用な手法であることは間違いありませんが、ネックになるのは、欠陥を分類しタグづけする作業が重労働であることです。お客様からいただくバグデータには、最初からきれいにタグがついているわけではありません。 

例えば300件のバグに対して、「修正対象は何か」「トリガーは何か」など、5〜10個のメトリクス(指標)を一つずつ人間の目で見て判断し、タグを付与していく必要があります。

実は、ODC分析の全工程において、この分類作業だけでも工数の約80%を占めており、期間にして約2週間もかかっていたんです。

山腰さん、現場ではこのあたりに課題があったようですね。 

山腰:そうなんです。ODC分析には大きく「分類」と「分析」の2つの工程があります。分類は膨大なバグデータにタグをつける作業です。

初心者にはむずかしく、現場では有識者への再鑑(ダブルチェック)依頼が飛び交うなど泥臭い苦労がありますし、教育コストもかかります。 

一方で、その分類後に「ここが怪しい」と深掘りしていく分析工程には、専門的な知識と経験が必要で、非常に属人的な作業になっています。 

しかもプロジェクトが終わればメンバーは分散してしまうため、2つの工程それぞれにおいて「プロジェクトごとに分類者の教育が必要」「分析できる有識者が限られる」という根深い属人化の課題を長年抱えていました。

石井:そこでAIが登場するわけですね。 

山腰:はい。分類にはコツがありますし、一方の分析にも実は有識者特有の“思考パターン”が存在することに気づいたんです。

どちらの工程もパターンがあるなら、AIの得意分野ではないか?と考えたのが今回の取り組みのきっかけでした。 

一番のボトルネックであり、全体の工数の8割を占めていた分類の壁。今日はそのなかでも特に、膨大な分類作業そのものをAIで自動化することについてどんな試行錯誤があったのか、詳細をお話しできればと思います。

自信満々に間違えるAI。分類自動化に立ちはだかった“5つの壁” 

石井:では実際にAI化を担当された吉澤さんに伺います。当初からスムーズに進んだのでしょうか? 

吉澤:いえ、最初は全く上手くいきませんでした。まずAIに分類させる試みについて、直面した“5つの壁”をご紹介します。 

1つ目は、「入力の問題」です。障害票の書き方は、お客様やプロジェクトによって異なります。情報が揺らいだままAIに渡すと、前提情報がそろわず精度が落ちてしまうのです。 

山腰:現場のリアルな話をすると、綺麗に1件1枚のチケットになっているとは限りません。

なかには、Backlogで「こういうバグが出ました」「これってこういうことですか?」というチャットのやり取りが延々とつづいているものを読み解かなければならないこともありました。 

吉澤:2つ目は、「基準の問題(思考の壁)」です。人間が分類するときは、「要件定義書とプログラムの両方を直した場合は、根本原因である要件定義の方を重く見よう」といった暗黙の判断基準をもっています。

しかし、AIには「何を重く見るのか」という基準が共有されていないため、解釈がブレてしまうという課題がありました。 

そして3つ目が、「判断の問題」です。情報が足りない場合に、AIが勝手に決め打ちをしてしまうことがありました。 

山腰:ここが一番厄介でしたね。AIは、情報が足りなくて判断できない場合でも、「わかりません」とはいわないんですよ。 

複数の原因が絡みあっていて人間でも意見が割れるようなケースでも、AIは無理やりどれか一つを選び、自信満々に回答してくるんです。中身を見ると全然違うじゃないか、ということが多発しました。 

吉澤:さらに4つ目として、「結果の問題」がありました。AIの分類結果だけを出されてもその理由が見えないと、人間がレビューをする際に判断に困ってしまい、結果的に差し戻しが増えてしまうという課題です。 

最後の5つ目は、「応用の問題」です。AIは障害票に書かれている手順や内容を強く参照する傾向があるため、人間なら行間を読んで補完する“潜在的な検出パターン”を拾いにくいというケースがありました。

逃げ道を用意する?欠陥分類の精度を飛躍させる5つのプロンプト術

石井:そうした壁を、プロンプトの工夫でどう乗り越えたのでしょうか? 

吉澤:前提として、ここで扱うプロンプトとは「AIに何を、どの形式で、どんな基準で出させるかという指示」のことです。 

1つの大きなプロンプトにすべての指示を詰め込むとAIの出力が不安定になるため、私たちは先ほどの壁に対応する「5つのプロンプト(整形から各分類までの5段階)」に分割して処理するアプローチをとりました。 

まず1つ目は、「入力品質の均一化」です。1つのプロンプトで処理するのをやめ、前処理として整形専用のプロンプトを挟みました。

どんな障害票が来ても、必ず「ID」「タイトル」「事象」「発生条件」「原因」「対処内容」という6項目の表形式に整理させます。 

ポイントは、「要約しすぎないこと」と「空欄を禁止すること」です。情報がない場合は「ない」と書かせることで、後続の分類プロセスへ渡すデータのばらつきを抑えました。

2つ目は、「判断基準のルール化」です。AIの解釈ブレを防ぐため、「要件定義 > 設計書 > プログラム」といったように、人間が暗黙で使っている優先順位をAIの仕様として明示しました。

もし複数の修正対象がある場合は、この優先順位に従って代表を一つ選び、選ばなかった他の要素は理由として保持しておくよう指示しています。 

石井:先ほど厄介だったといっていた、AIが自信満々に間違える問題はどう解決したんですか? 

吉澤:3つ目の工夫「あいまいさの可視化」で解決しました。これが一番のポイントかもしれません。 

原因が複数絡みあっていたり、情報が不足していたりする場合に無理やりどれかを選ぶことを禁止しました。その代わり、「アルゴリズムかチェックか、どちらかあいまいである」というような救済カテゴリーを用意したんです。 

山腰:人間が分類していても、迷うものは必ず出てきます。その場合、有識者に再鑑を依頼していました。 

選択肢を増やしてあえて「あいまいです」と報告させることで、人間が後から再鑑する対象を全件ではなくグッと絞り込むことができたんです。 

吉澤:4つ目は、「結果と理由をセットで出力させること」です。分類結果だけを出力させると、なぜその結論に至ったのか人間にはわかりません。

そこで、分類した理由の出力を必須にし、さらにAI自身に「選んだ結果と理由に矛盾がないか」の整合チェックをさせました。 

山腰:これによって、「AIはどう考えて間違えたのか」が見えるようになりました。

間違えた理由がわかれば、「こういうときはこっちを選ぶんだよ」とプロンプトに具体例を追加してチューニングできます。間違いの傾向も見えて、精度向上のために非常に役立った工夫ですね。 

吉澤:最後の5つ目は、「AIに行間を読ませる」工夫です。

障害票に書かれた手順だけをなぞるのではなく、「実際(障害票通りのテストパターン)」と「潜在(そうテストすれば発見できたと判断されるパターン)」の2軸で分類させるようにしました。 

例えば「ログアウトして別ユーザーでログインしたら不具合が起きた」という事象から、「同一機能を別端末で同時操作しても起きたはずだ」といった潜在的な検出パターンをAIに推測させるんです。

これも理由を必須にすることで、より人間に近い深い分類ができるようになりました。

人間の思考を仕様化。わずか1時間で分類できるようになった

石井:結果として、どのくらいの成果が出たのでしょうか? 

山腰:分類作業にかかっていた工数が、2週間からわずか1時間へと劇的に短縮されました。 

また、精度に関しても、人間2人が分類しても100%は一致せず、だいたい80%程度の一致率なんです。現在のAIの分類精度は、人間同士がやった時の精度とほぼ同等レベルにまで到達していると実感しています。

吉澤:今回学んだのは、AIに分類を丸投げするのではなく、「人間が普段行っている分類ルールや判断プロセスを整理し、仕様として言語化すること」が重要だということです。 

山腰:工数削減だけでなく、属人化の解消という当初の悩みにも光が見えました。 いまでは、ODC分析をこれからはじめる初心者に対して、AIが教育係として機能しています。

AIのおかげで分析のハードルが下がり、より多くの人が品質改善に関われるようになる。この裾野の広がりに、とてもワクワクしています。 

石井:最後に吉澤さん、今後のビジョンや取り組んでみたい野望はありますか? 

吉澤:今後は分類だけでなく、その後の分析プロセスにもAIを適用していきたいです。 

分析にも、ある程度のパターンがあります。ベストプラクティスとの比較や異常値の発見、共通項を見つけ出すといった作業はAIの得意分野です。

AIと人間が互いの強みを活かすことで、より高度な品質保証の形を追求していきたいと考えています。 

石井:ありがとうございます。吉澤さんが執筆を担当したSHIFTの書籍『SHIFT流 AI時代のソフトウエアテスト』にも、これからの時代に品質保証の精度を高めるヒントが多数記載されています。 

同書に書ききれなかった“AI時代のエンジニアの生存戦略”や“エンジニアの真の価値”について言及した記事も、ぜひご一読ください。

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(※本記事の内容および取材対象者の所属は、イベント開催当時のものです)

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SREは“壊さない”から、“壊れ方を設計する”へ。Agentic AIに責任と判断を与えるという価値 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1564/ Tue, 18 Aug 2026 00:00:00 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=58460 クラウドネイティブ会議 登壇レポート

Agentic AIの急速な進化により、コード生成から障害の復旧処理に至るまで、システム開発~運用の多くが自律化されつつあります。

こうした技術革新を前に、「SREという仕事は不要になるのではないか」という問いを抱くエンジニアも少なくないでしょう。 

2026年5月14日・15日に開催され、SHIFTがダイヤモンドスポンサーを務めたイベント「クラウドネイティブ会議」に登壇したAIアジャイル開発部 SREエンジニア 島田は、「SREの価値は失われるどころか、より重要で本質的なものへと変化していく」と指摘します。 

実行や最適化をAIが自律的に行う時代だからこそ、私たち人間に求められるのは「どこまでAIに任せ、どこから人間が責任をもつか」という境界線を動的に引きつづけることです。 

本記事では、事業会社のSREを経て、現在はSHIFTで「伴走支援SRE」としてさまざまな組織のシステムと向き合ってきた島田の経験を踏まえ、これからのSREに求められる「壊れ方を設計する覚悟」と、新しい時代の責任のあり方をひも解いていきます。 

  • AIアジャイル開発部 リードSRE 島田

    2007年に独立系SIerへITエンジニアとして新卒入社。メーカー/商社/官公庁/教育機関などさまざまな業界業種のインフラシステム構築を経験した後、BtoC向けWebサービスのSREエンジニアとしてインフラ~MW~アプリ領域にまたがったSRE活動に従事。  

    2023年3月にSHIFTに入社し、QCDのブロッカーになりがちなIT領域がビジネス貢献の立ち位置を確立させるためのSREのあり方を発信中。尊敬する人はランディ・パウシュ。 

目次

Agentic AIが私たちに抱かせる、SRE不要論

ここ数年、私たちが目にする技術トレンドの多くはAIに関連するものです。Gartneriiiの予測によれば、2028年までに企業の意思決定の少なくとも15%がAgentic AIによって自律的に行われるようになるとされています。 

本当にすごい時代になりました。私もそうですし、みなさんも思ったことがあるのではないでしょうか。「もうSREは、いらないのではないか」と。 

この“SRE不要論”は、AIが優れているから生まれたのか。私はむしろ、私たちSRE自身が「自分たちの真の価値を言語化してこなかったから」ではないかと考えています。 

そこで、今日は「SREの真の価値とは何か」を考えていこうと思います。

AIにできること・できないこと。“判断”には3つのレイヤーがある

「実行が自律化する世界」において、判断はどこに属するのか、というのが本日の問いかけです。では、そもそも判断とは何を指すのでしょうか。私は、判断には大きく分けて3つのレイヤーがあると考えています。

1. 最適化の判断:与えられた条件の中で正解を探すための判断を行います。AIが得意なプロセスです。 

2. 判断の評価:そもそも正解とは何か。何を成功とみなすか。 その基準をつくり、育て、更新するプロセスです。 

3. 責任を伴う判断:最終的な結果に対して「誰が責任を負うのか」を確定させる判断です。 

“最適化の判断”はAIがもっとも得意な領域です。 

問題は、2番目のレイヤーです。 

「AI Slop」という言葉を聞いたことがありますか。PoC環境では素晴らしい結果を出すのに、本番環境に入った途端、低品質な出力を吐き出しつづけ、ユーザーの信頼を失ってしまいます。 

なぜそうなるのか。多くの場合、評価の設計が追いついていないからです。

最近、AIを“ツール”ではなく“協働者”として扱おうという話を耳にすることがありますが、私は“優秀な新入社員”として扱うべきだと考えています。

どれほど優秀な新入社員でも、教育し、フィードバックを与え、評価するプロセスがなければ組織で活躍することはできませんよね。教育し、評価し、フィードバックすることではじめて戦力になる。

私たちは、その「教育者」の役割を果たせているでしょうか。 

評価の手段は、Evals、Observability、Human-in-the-loopということになりますが、重要なポイントは評価には完全には自律化できないということです。 

AIの出力を測ることはできる。でも、何を「よい」とするか、その基準を決め、更新していくのは人の仕事です。これは「教育」であり「見守り」でもあります。

この話の詳細は、New Relicを使ったAIオブザーバビリティの実践としてブログに書いていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

そして3つ目。責任を伴う判断です。ここが、今日一番伝えたいことの核心に近づいてきます。 

AIは合理的な提案ができます。しかし、最適化された結果が必ずしも正しさを保証するわけではありません。速く、それらしい答えを出せることと、その答えに責任をもてることは、まったく別の話です。 

多くの企業がAgentic AIを試しています。しかし全社展開できている企業はまだ限定的です。「パイロットの壁」と呼ばれる現象です。

SLOは単なる数値か、それとも責任か

実は、私たちはSLOを管理していたのではなく、SLOを通じて動的な責任境界線を引いていたのだと気づきました。 

SLOが99.9%の青サービスと、99.99%の赤サービスがあるとします。月間ダウンタイム許容時間は、青が43分、赤が4分。この違いは、数値の精度の話ではありません。

同じように、エラーバジェットも単なる失敗の許容量ではありません。失敗の許容量ではなく、SLOを“運用する”ための装置です。

つまり、SLOやエラーバジェットは数字ではなく、組織のスタンスを示すとともに、「責任を運用する装置」ともいえます。 

合理性は、責任を代替してくれません。AIがどれだけ優れた提案をしても、「誰がそれを選んだのか」は消えません。そして、この「選ぶ」という行為にこそ、私たちの存在理由がある。

つまり、 どれだけ自律化が進んでも、 責任の所在は、どこかに残りつづけます。 

では——その責任は、どこに属するのでしょうか。

この図を見てください。AIは実行を担い、最適化の判断まで担い、人は評価の判断と、責任を伴う判断を担います。 

そして注目してほしいのが、この境界線です。波線になっているのは意図的です。この線は固定されていません。 

左側を見てください。AIが出力し、人が評価し、フィードバックをAIに返す。この協働のループの中で、境界線の位置は動いていきます。

つまり、境界線は「どこにあるか」ではなく、「どこに引くか」の問題です。そして、その線を引く基準は、ロジックではなく、責任の確定です。 

だから、責任の確定の仕方次第で、境界線がどこに引かれるかは変わります。自律化が進むほど、境界線はより意識的に設計されるものになっていきます。放っておいたらあいまいになるだけです。

ここを設計するのが、これからのSREの仕事だと、私は考えています。

誰に対して責任を引き受けるのか?SREの4つの立ち位置

では、SREは具体的に誰に対して責任を引き受けるのでしょうか。私は自身の経験から、SREの立ち位置を「責任の届け先」の違いによって4つのモデルに分類しています。

1. プロダクト直結型:PdMやユーザーに直接責任を届ける 

2. 機能単位型:複数チームのリードに対して横断的に責任を届ける 

3. 基準設計型:SDKやガイドラインを通じて、全開発チームの基準の底上げに責任をもつ 

4. 組織設計型:ポリシーや標準化を通じて、組織全体に責任を届ける 

これらは役割の違いではなく、「自分がいま、どの責任を引き受けているか」という違いです。 

私自身、プロダクト直結型のSREから機能単位型のSREへと立ち位置が変わった際、大きな変化を経験しました。同じ「SRE」でも、届け先が変わると、判断の中身が変わります。 

プロダクト直結型の時は、開発チームの一員として自らSLOを決め、問題があればPdMを巻き込んでユーザーに直接説明に行くという動き方でした。

一方、機能単位型として横断的なオブザーバビリティやチューニングを担うようになると、各チームのリードエンジニアと議論を交わしながら基準をあわせていく必要がありました。 

扱っている技術スタックは同じでも、説明する相手が変われば、求められる判断の質は変わります。何を優先し、どのリスクをどこまで許容するか。相手にあわせた責任の取り方が求められるのです。 

もう1つ印象的な出来事として、SHIFTの「伴走支援SRE」としてお客様の現場に入ったときのことをご紹介します。 

そのシステムでは可用性が低下し、SLOに抵触している状態がつづいていました。

しかし、長年の慣習や組織の構造的なむずかしさからSLOが形骸化してしまい、見直しや再設計の判断を下すことがむずかしく、運用が硬直化してしまっていたのです。 

真の課題は技術ではなく、「判断の持ち主が不在であること」でした。そのため、私は単なる技術支援にとどまらず、体制や意思決定プロセスの整理にまで領域を広げて働きかけを行いました。

当時は「SREの役割を超えているのでは」という戸惑いの声もありましたが、粘り強く対話を重ねていきました。 

組織の内側にいると、この境界のあいまいさには気づきにくいものです。組織の外から入るからこそ見抜ける課題があります。これは、さまざまな現場を横断してきたなかで、何度も感じたことです。 

改めて4つのパターンを見てみましょう。この分類は、みなさんが日頃使っている言葉とも繋がっています。 

たとえば、Embedded SREは、プロダクト直結型のど真ん中です。開発チームの中に入り込んで、プロダクト単位で責任を引き受けます。 

Platformエンジニアリングは、機能単位型を前提としながら、基準設計型へ責任を押し上げる位置にあります。プラットフォームとは、責任の確定単位を上げる装置だと言えると思います。 

そしてCCoE(Cloud Center of Excellence)のような取り組みは、組織設計型。組織全体の方針と標準を設計し、構造で責任を届ける立場です。 

大事なのは、どれが正解ということではありません。自分がいま、どこに立っているのか。そして、どこに立つことを選ぶのか。その選択自体が、すでに「責任を引き受ける」ということです。

“壊れない”から、“壊れ方を設計する”へ

ここで少し、私個人の話をさせてください。 

2026年に、私は下垂体卒中という病に倒れました。一時は「エンジニア人生は終わったかもしれない」と絶望しました。

入院中、なんとか「壊れない体」を取り戻そうと必死にもがいていた私に、担当の医師はこう言いました。 

「元に戻すのではなく、いまの体のままでどう生きるかを一緒に考えましょう」 

この言葉を聞いたとき、私はハッとしました。これは、私がいままでSREとしてやってきたこととまったく同じだったからです。 

病気を完全に克服するのではなく、病気とともに生きていく。この考え方は、「システムは必ず障害を起こす」という前提に立つクラウドネイティブの思想と重なります。

そしてそれは、私たちSREが日々向き合っている考え方そのものです。 

これからのSREに求められるのは、「システムが壊れないこと」を誇るのではなく、「壊れ方を設計すること」だと私は考えています。つまり、信頼性の基準を自分たちで定義し、その責任を負うことです。 

AIは、システムの最適化や運用を猛スピードで加速させるエンジンのようなものです。しかし、AIというエンジンが搭載された船の舵を握るのは私たち人間です。 

AIという強力なツールを使いこなしながら、「壊れ方を設計する覚悟」をもてるか。それこそが、AIの自律化が進む時代においても決して揺るがないSREの価値だと考えます。 

技術を学ぼうとするエンジニアのみなさまの熱意は、本当にすばらしいものです。ご家族や周りのサポートにも感謝しながら、このエンジニアリングという世界で、世の中をいっしょによくしていけたらいいなと思っています。

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、イベント開催当時のものです) 

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限定公開:PMIの勝ち筋がみえた。その確信がSHIFTを次の一手へ導く https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1594/ Thu, 13 Aug 2026 04:10:20 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=59033

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ハードモードなCDKメンテナンスから解放!6つの実務シナリオで検証する、AWS DevOps Agentの現在地 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1597/ Thu, 06 Aug 2026 00:00:00 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=58566 AWS CDK Conference Japan 2026 登壇レポート

2026年7月18日、JAWS-UG CDK支部が主催するAWS CDK(Cloud Development Kit)やCDKTF(CDK for Terraform) / cdk8s(+) の最新動向やベストプラクティスを共有する年次カンファレンス「AWS CDK Conference Japan 2026」が開催されました。 

SHIFTからは、AIアジャイル開発部 DevOpsエンジニアの奥田が「AWS DevOps AgentでCDKメンテナンスは楽になるのか?〜検証から見えた最適解〜」というタイトルで登壇しました。 

インフラストラクチャをコードとして管理するIaC(Infrastructure as Code)の分野において、AWS CDKは非常に強力なツールです。

再利用性や抽象化の高さから多くの開発現場で重宝されている反面、導入時の学習コストや日々の保守工数が大きな課題となっています。 

「この便利で強力なツールを、もっと誰もが簡単に使いこなせるようにならないものか」 

そんな開発現場の悩みを解決する有望な選択肢として期待されているのが「AWS DevOps Agent」です。

本記事では、奥田が、実務への適用を想定して行った徹底検証のストーリーを通じて、AWS DevOps Agentの活用術とその検証結果をご紹介します。 

  • AIアジャイル開発部 DevOpsエンジニア 奥田 雅基

    2016年、システム運用保守としてIT業界でキャリアをスタート。通信会社の新規ネットワークサービス立ち上げPJのPMO・ネットワークエンジニア、人事(社員教育担当)、社内プロダクト開発PJのシステムエンジニアを経て、2025年8月、株式会社SHIFTに入社。DevOpsエンジニアとして案件に取り組みつつ、社内外への技術発信活動にも挑戦している。 

目次

CDK導入の壁は“ハードモード”? 現場の悲鳴を救うDevOps Agentの登場

AWS CDKの最大の魅力は、高い再利用性と抽象化にあります。

TypeScriptなどのプログラミング言語を用いてAWSリソースを定義できるため、たとえば一度作成した構成のリージョン設定だけを変更して別環境に複製するといったことが容易に行えます。 

Constructによって一部設定が抽象化されるため、開発者の負担は大きく軽減されます。 

一方で、学習と保守といった観点では扱いづらさが残ります。AWS CDKを実務で使いこなすためには、インフラの知識だけでなく、TypeScriptの型システムやアルゴリズムの理解、さらには複雑な環境構築が必要です。

初学者にとってこの学習コストはまさに“ハードモード”であり、チーム全体へ定着させる際の大きな足かせとなっていました。 

この壁を乗り越える希望となるのが、2026年4月に一般提供が開始された生成AIサービス「AWS DevOps Agent」です。 

AWS DevOps Agentは、AWSアカウント内のリソースをモニタリングし、インシデント管理から予防保全の提案までを自動で行うAIアシスタントです。

性能はアップデートのたびに向上しており、現在では日本語にも対応しています。さらにGitHubやSlack、PagerDutyといったサードパーティツールとの統合も可能です。 

本格的な導入にあたって気になる利用料金ですが、エージェントの実行時間に対して課金され(1秒あたり約0.0083ドル)、仮に24時間稼働させた場合は1日約10万円のコストがかかります。 

個人利用としてはハードルが高いものの、企業向けのサポートプラン等に加入していれば一定の割引が適用されるため、法人利用においては十分に導入を検討できる範囲といえるでしょう。 

こうした数ある機能のなかでも、AWS CDK運用において特に期待が高まっているのが、2026年6月にプレビュー版として登場したリリース管理機能です。

この機能は、AWS CDKやTerraformで定義されたコードをAWS環境へ本番適用する前に、AIがコードの不備を事前チェックしてくれるというものです。 

どれほど熟練したエンジニアであっても、本番環境への変更適用には心理的な不安が伴います。

リリース管理機能を活用し、本番前にコードレベルでの評価を行うことで、「確実に動く」という安全基準を担保し、デプロイ時の不安を大きく取り除くことができるのです。

なお、本機能は現在プレビュー版であるため、現時点での業務適用は困難かなと思われます。

バージニア北部リージョンに構築したAWS DevOps Agentでのみ利用可能という制約がありますので、検証やテスト導入を行う際は、この点にご留意ください(※2026年7月18日時点の情報です。最新情報は公式サイト等でご確認ください)。 

実務を想定した徹底検証!現場目線で挑んだ6つの独自シナリオ

「AIが事前チェックをしてくれるのは素晴らしいが、はたして実務の複雑な要件にどこまで通用するのか?」 

私は、そんな疑問を抱いていました。

初学者がAWS CDKを定着させるためのハードルを、AWS DevOps Agentは本当に下げてくれるのか。コードベースの検証において、AIはどのような精度で、どのようなアウトプットを返してくるのか。

自らの目でAIの現在地を確かめるべく、実務を徹底的に想定した検証プロジェクトをスタートさせました。 

検証環境を構築するにあたり、誰もがイメージしやすいよう、Amazon CloudFront、Amazon Simple Storage Service(S3)、Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)を用いたシンプルな構成の、中小規模のWebサービスを想定しました。 

真の実用性を測るため、単に正しいコードを読ませるだけでなく、意図的にさまざまなトラブルを混入させた6つのシナリオと15の検証観点を用意しました。

一般的なHTTPS未対応といった障害だけでなく、AWS CDK特有のアンチパターンであるAMI IDやアカウントIDのハードコーディングを注入。

さらに、構築済みのインフラをAWSコンソールから直接操作してしまう手動ドリフト(コードと実環境の乖離)や、環境構築パッケージが未インストールの状態まで網羅しました。 

現場で実際に起こりうるトラブルをAIがどう捌くのか。その実用性を検証する準備が整ったのです。なお、今回の検証で使用したCDKコードはGitHub上で公開しています。

記事を読んでAWS DevOps Agentの実力に興味をもたれた方は、ぜひご自身の手でも検証を試してみてください。

今回の検証で使用したCDKコードはこちら

AIの実力とハルシネーションのリアル。検証から見えた得意領域と課題

検証の結果、AWS DevOps Agentコードレビューにおいて大きな成果をあげました。特にGitHubと連携させたシナリオ(パターン1・2)では今回設定した検証項目をすべて検知しました。 

AWS CDK特有のハードコードAMI IDやアカウントIDといった問題については、高い精度で検知できることが確認されました。

さらに、GitHubのプライベートリポジトリとのセキュアな接続も問題なく行えるため、高いセキュリティ要件が求められるプロジェクトでも導入できること、そしてコードレビューにおけるAWS DevOps Agentの有効性が確認できました。 

一方で、実環境の検証だからこそ見えてきた課題もありました。手動で行われたリソース変更(ドリフト)の検知において、ハルシネーションが確認されたのです。 

検証では、Amazon Elastic Container Service(ECS)の設定を手動で変更しました。しかしAIは、変更していないはずのセキュリティグループの設定が変更されたと判断してしまったのです。

また、EC2上に直接格納されたコードをチェックするシナリオでも、AIが対象を上手く読み取れないケースが発生しました。 

これらの結果から、リリース管理機能はまだプレビュー版であり、ドリフト検知やプロンプトに改善の余地があることが分かりました。 

しかし、これは決してツールが使えないという意味ではありません。

「GitHub連携によるコードレビューには極めて強いが、実環境の直接的な手動変更検知はまだ発展途上である」という特性を正しく理解し、得意領域に絞って活用することが重要です。

適切な環境と設定を用意すれば、AWS DevOps Agentは強力な味方となります。

プロジェクト固有ルールもAIが担保。属人化を防ぐスキルセット機能の威力

AWS DevOps Agentの機能のなかで、現場のエンジニアにとって有用な機能のひとつが、スキルセット機能です。 

開発現場では、プロジェクトごとに固有のルールやセキュリティ要件が存在します。スキルセットを活用すれば、こうした独自のドメイン知識をAIに注入することができます。

不特定多数のメンバーが開発に関わり、品質にブレが生じやすい環境であっても、AIがプロジェクト固有の基準に照らしあわせてコードをチェックし、デグレードのリスク低減が気体できます。 

また、AWS DevOps Agentは、初学者にとってむずかしかったAWS CDKの学習環境を劇的に改善します。 

例えば、エラーが発生して行き詰まった際、エラーログを読み解く代わりに、AWS DevOps Agentに対して「なぜこのエラーが起きたのか? どう直せばいいか?」と自然言語で質問することができます。

AIが対話形式でスムーズに調査をサポートしてくれるため、初学者が挫折しにくく、AWS CDKの概念や実装方法をキャッチアップできるようになります。

AIは便利な道具から“開発パートナー”へ。AI SDLCが描く共創の未来

私は、この検証を通じて、これからの開発プロセスの未来像を実感しました。それは、近年ソフトウェア開発の現場で普及しつつある「AI DC」(AI駆動開発ライフサイクル)という考え方への統合です。 

生成AIアシスタントであるAmazon Qを活用してインフラのコードを書き、そのコードをAWS DevOps Agentが検証し、フィードバックを行う。

人間はそのフィードバックをもとに改修を重ねる。複数のAIが連携し、コード作成からレビュー、テスト、運用までをシームレスに支援するこのサイクルは、開発生産性を引き上げるものと考えています。 

複雑で学習コストの高いAWS CDKですが、AWS DevOps Agentのリリース管理機能やスキルセットを活用することで、その保守工数の削減や、品質向上に寄与する可能性が確認できました。 

プレビュー版ゆえのハルシネーションなどの課題は残るものの、それを補って余りある高いコードレビュー精度と、初学者を支える学習サポート機能は、現場の課題を解決する力をもっています。 

AIはもはや単なる便利ツールではなく、共にシステムをつくり上げる「開発パートナー」へと進化しています。AIと共創する新しい開発体験の第一歩として、ぜひご自身のプロジェクトでもAWS DevOps Agentの活用を検討してみてはいかがでしょうか。 

※本セッションの登壇動画は、こちらからご覧ください。 

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、イベント開催当時のものです) 

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ソフトウェア品質は“創る”もの。不確実性の時代を勝ち抜くためのQAプロセス変革事例  https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1557/ Wed, 05 Aug 2026 00:00:00 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=57388 JaSST’26 Tokyo 登壇レポート

ソフトウェア開発が高度に複雑化する現代、「テストを重ねてバグをなくしたはずなのに、なぜかまだ開発現場は疲弊している」――そんな状況に陥っていませんか? 

システムの巨大化やAI・DXの台頭により、プロジェクトのルールやゴールが流動的になる場面も増えてきているなか、「完成したプロダクトのテストを行う」という受け身の品質管理では、プロジェクトの成功はおろか、メンバーの離職といった問題すら招きかねません。 

これからの時代に求められるのは、「品質を守る」という姿勢から脱却し、「プロセスから品質を創る」という新たなアプローチです。 

本記事では、2026年3月20日に開催され、SHIFTがプレミアムスポンサーを務めたイベント「JaSST’26 Tokyo」に登壇したAIテストサービス部 技術支援グループ 兼 AI自動実行グループ グループ長 纐纈(こうけつ)望の講演をもとに、厳しい局面をプロセス変革で乗り越えた3つの事例を紹介します。 

これからのQA(Quality Assurance:品質保証)が果たすべき新たな役割と、疲弊する人を生まないプロジェクトの実現方法を紐解きます。 

  • AIテストサービス部 AI自動実行グループ グループ長/技術支援グループ グループ長 纐纈(こうけつ) 望

    独立系SIerにて13年間、SEからPMとして組込・Web・業務システムやAI研究開発など多岐にわたるプロジェクトに従事。2018年にSHIFTへ入社し、部門横断のプリセールス組織を新設。現在は通信・ネット・メディア事業を中心に、品質保証のプリセールスや組織立ち上げコンサルティングを担当し、大規模・高難易度案件を牽引。社内講師も務める傍ら、品質保証とAIを掛けわせた新サービス開発にも注力する

目次

不確実性の時代、品質管理はどう変わるべきか

近年、品質管理の難易度は飛躍的に上昇しています。この状況を、簡単な算数に例えてみましょう。 

30年以上前のメインフレーム全盛期は「3+?=9」という問題に似ていました。ゴールも実現方法も決まっているなかで、穴埋め式に正解(6)を導き出すプロジェクト管理でした。 

約10年前、オープンソースやパッケージが普及しはじめた時代は、問題が「?+?=9」へと変化しました。複数の選択肢から最適な組みあわせを選ぶ“最適解”を見つける時代です。 

しかし現代は、DXやAIの台頭により「なんでもシステムで実現しよう」という世界観になりました。これは「?□?=?」という状態です。足し算なのか引き算なのか、どのような条件で答えを出すのかさえ決まっていません。 

ゴールもルールも決まっていないなかで、関係者間でしっかりと合意形成を行い“納得解”を導き出すマネジメントが不可欠となっているのです。

プロジェクトマネジメントの世界標準であるPMBOK®も、この変化に対応しています。

第6版までは「決められた順番で工程を進めれば一定の成果が出る」というアプローチでしたが、第7版では「原理原則を指針とし、状況に応じてテーラリング(最適化)しつづけること」へと大幅に変更されました。 

固定の正解に従うのではなく、つねに状況に適応しつづける行動が求められているのです。

さらに、テクノロジーの多様化や、リモートワークの定着による「組織カルチャーの形骸化」など、プロジェクト進行や品質管理の妨げとなる要素が多数存在しています。

こうしたことから、私は現代の品質管理において極めて重要なのは、プロダクト品質はもちろんのこと、上流工程からプロセス品質をしっかりと保つことだと考えています。 

継続的に品質に焦点を当てながら、ユーザーのニーズに合致した成果物を、関係者全員が納得する形で構築していく。これこそが、現代の開発現場に求められる原理原則なのです。

【事例1】「品質より納期」と一蹴される現場での先回り戦略

ここからは、私がどのように品質管理を行ってきたか3つの事例を交えてご紹介します。 

最初の事例は、関係者2,000名以上、数百ものサブシステム群のうち約200システムに手を入れる超大型プロジェクトです。このシステムは災害対策や人命救助に関わるため、最高ランクの品質が求められていました。 

しかし同時に、急な法改正に伴い10ヶ月間での納期必達という至上命題も抱えていました。 

私は、プロジェクト全体の品質総責任者(品質PgMO)として参画しました。ところが、初日に渡されたプロジェクト計画書には「重要視すべきは品質ではなく納期である」と明記されていたのです。

「品質の重要性を啓発しても、納期優先だと一蹴される」。これが、このプロジェクトにおける最初の壁でした。

また、現場の状況は混沌としていました。

2,000名が関わるなかでコミュニケーションツールは統一されておらず、Microsoft Teams、Slack、口頭連絡が入り乱れる始末。不具合の報告もMicrosoft ExcelやBacklogなど各社が好きなツールで行う状態でした。 

いざテスト工程に向けた準備を進めようとしても、約200ものシステムを最終的に組み上げるステージング環境すら用意されていませんでした。

さらに、数十年前から稼働しているシステム群であったため、人によっては昔の略称でシステムを呼ぶなど、呼称が統一されていなかったのです。 

こうした状況下で、「口を開けて待っているだけでは、テストがはじめられない」と、私はテスト担当の枠を大きく超えた行動に出ます。

自らデプロイの承認フローやルールを定めたデプロイ戦略を策定。システムの名称を統一し、不具合の管理計画を一元化してプロジェクト全体に適用しました。

「テストをはじめる前にPMやPMOが組み立てておくべきプロセスをも自ら巻き取って構築する」。この“品質を創る”という観点に立った先回りの準備が功を奏し、このプロジェクトは無事にリリースへと至りました。

【事例2】諦めムードの現場を動かした、“役員への通知表”

2つ目の事例は、数百万人が利用するコンシューマー向けシステムを運営する事業会社での品質組織立ち上げです。 

利用者の急増に伴い、1年間で従業員を倍増させた結果、独自のやり方で開発を進める人も増えて不具合が多発。アジリティ(俊敏性)とガバナンスを両立させる横断的な品質専門の組織づくりが急務でした。 

しかし、品質改善コンサルタントとして参画した初日、開発部門の責任者からこう告げられます。「過去にコンサルが2社入って失敗している。SHIFTさんで3社目だね」。 

現場は「また別の会社が来たか」と諦めている状態、つまり“期待値ゼロ”からのスタートとなりました。 

私たちがそれまで方向性などをすり合わせていたお客様側の役員たちと、現場の気持ちには乖離があることを肌で感じた以上、トップダウンの方針をそのまま押しつけても現場は絶対についてきません。

そこで私は、現場の心をつかむべく、ボトムアップの組織構築へと舵を切りました。 

1ヶ月間、毎日2〜3人ずつ、計50名の現場担当者と対面ヒアリングを敢行。

「企画部門から渡される企画書の情報が不足している」などの現場のリアルな声を拾い集め、日々の業務フローに紐づく「100個以上の不満と課題」を洗い出しました。 

この不満と課題を役員陣へと確実に伝えたい。役員陣の心を動かす方法を模索した結果、2ヶ月目にして私は現場の不満と課題を“通知表”という形で役員に提示しました。そこで示した評価は“最低”です。 

その上で、理想と現場の課題を解決するハイブリッド戦略を提案し、合意形成しました。この本気の姿勢が役員や現場の心を動かし、結果的に5ヶ月という短期間で強固なガバナンスとプロセス品質の構築に成功しました。

【事例3】自由を愛するエンジニアに“規律”を。反発を乗り越えた定量化のプロセス改善

3つ目の事例は、100万人近くの国内利用者を擁するシステムの開発プロセスを刷新するプロジェクトです。SHIFTは開発プロセスの刷新、開発成果物のフォーマット、ガイドラインの策定を依頼されました。 

最大のハードルは、企業カルチャーでした。CTOが採用時に「うちに入れば自由に何でもできる」と謳っていたため、エンジニアたちは自由を求めて入社してきていました。

そこに、開発フォーマットやガイドラインといった“規律”を導入しなければならないという、ジレンマを抱えたプロジェクトでした。 

自由を愛するエンジニアにルールを押しつければ、猛烈な反発を招くのは火を見るより明らかです。そこで私が着目したのは、「彼らは自由を求めるが、無駄な作業は嫌う」というエンジニアの特性でした。 

スキルアップの妨げになる業務は切り離し、有意義なプロセスだけを構築する。そしてその意義を、感覚ではなく定量化して証明しました。

現在の傾向を分析するとともに、新しいプロセスのトライアルを行い、結果をデータとして提示しながらPDCAを回していきました。

具体的な成果も現れました。エンジニアたちはテスト工程に入った際、QAメンバーからの質問への対応を煩雑に感じていたのです。 

そのため、「質問が来ないように上流工程のプロセスを改善しませんか?」と提案し、その結果、質問対応が半減しました。

自らの業務効率化というメリットを実感したことで現場の意識が変わり、結果的に上流工程の生産性は1.3倍に向上。いまではお客様自身でPDCAを回し、自走するカルチャーが確立されています。

誰も疲弊しないプロジェクトへ。QAに求められるのは「PMと同等の視座」

ここまで、プロダクト開発に関わるすべての方々に向けて、私たちが手掛けてきた事例をお話ししてきました。

これらの事例の根底にあるのは、私のなかにある「品質を創る」という信念です。これはSHIFTの品質に対する想いと似通ったところがあります。 

どんなに丁寧にテストをしてバグのない状態をつくっても、なぜか現場のエンジニアは土日出勤を強いられている。子どもが生まれて家族と過ごしたいと願う優秀な若手たちが疲弊し、会社を去っていく――。

そんな状態を私は許したくありません。

上流工程からスムーズな開発ができるプロセスを構築し、品質を創る。そのためには私たちが「テスト専門のベンダー」という枠にとどまっていてはいけません。

後工程へのしわ寄せを防ぐためにも、調達などの一部を除き、弊社の品質管理担当者はPMやPMOと同等のスキルと視座をもつ必要があると考えています。 

プロジェクト全体を俯瞰し、リスクや品質に関しては誰よりも高い感度をもち、上流工程からプロジェクトを牽引していく。そうして健全に開発できる環境を築くことこそが、私たちが目指す真の品質マネジメントです。 

SHIFTの挑戦は現場のプロセス改善だけにとどまりません。

近年では、24時間365日稼働する品質AIソリューション「ネムラナイ」の立ち上げや、AIを用いて品質をどのように構築していくかという新たなサービスの開発・運用にも着手しています。

品質保証の新たな可能性を切り拓きつづけている私たちに、ぜひ今後もご注目いただければと思います!

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、イベント開催当時のものです) 

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技術を極めたかったのに、PMになった人へ。SHIFTで拓くストラテジックアーキテクトとしての新境地 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1567/ Thu, 16 Jul 2026 23:50:00 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=57195

PMとして一度は感じるであろう、孤独感。 

そのつらさの正体は、ブラックボックス化したシステムの構造と、「技術を極めたくても、出世魚のように勝手にPMになっていく」一本道しか用意されていないキャリアパスにあるのではないか。  

そんな問いに対するSHIFTなりの解決方法を、2026年5月14日に開催されたイベント「PMはなぜつらいのか?AIとともにブラックボックスに挑むSHIFTのリアーキテクチャ」の内容からレポート。 

AIモダナイゼーションの力で、しがらみや限界を根本から壊しにいこうとするSHIFTのいまをお届けします。AI時代にPMがえらべる未来とは――。 

  • AIモダナイゼーション技術開発グループ テックリード 白木 翔也

    ソフトウェアエンジニアとしてソーシャルゲーム開発からキャリアをスタート。スタートアップ企業でCTO経験を経てSHIFTへジョイン。SHIFTでは「売れるサービスづくり」を実現するためテックリードとしてDX推進支援や開発標準の策定を行う。現在はAIモダナイゼーション技術開発グループにてSHIFT DQS for リバースエンジニアリングを開発。 

  • AIストラテジーグループ アーキテクト 竹村

    外資系IT企業、大手消費財メーカーを経て、2026年SHIFTへジョイン。30年以上にわたり大規模システム統合やクラウド基盤構築を主導。クラウドネイティブやAPI設計に加えAI活用も見据えたアーキテクチャ設計に強みをもつ。現在はAIモダナイゼーションサービス部のAI駆動開発アーキテクトとして、事業の技術戦略の高度化を牽引。 

孤独とキャリアの壁。PMを追い詰める「つらさ」の正体

司会:本日のトークテーマでもある「なぜPMはつらいのか」。お二人はこの「PMのつらさ」の正体は何だと思われますか

白木:今回の登壇に先立って複数のPMのかたにヒアリングをしたのですが、「不確実なプロジェクトに一人で向き合う孤立感」が際立っているように感じました。

でも深掘りしてみると、本当の理由は「システムの構造」にたどり着くのかなと。 

長年運用されているシステムでは、ドキュメントが整備されていない、または仕様を把握している人がいないことが多い。

ブラックボックス化した状況に一人で向き合わなければならず、孤立感や人間関係の悪循環にもつながっていると感じました。 

司会:構造の不明瞭さが、現場をギスギスさせてしまうのですね。竹村さんはいかがですか

竹村:日本のベンダー業界では「プログラマーからSEになり、経験を積んでPMになる」というキャリアパスが一般的です。 

私自身もそうだったのですが、「技術的な分野でスキルを伸ばしていきたい」という方にとって、PM以外の選択肢がない一本道のキャリアは、非常につらいものなんです。 

司会:「自分の志向性をキャリアに反映しづらい」。共感してくださるPMの方は多いのではないでしょうか

ブラックボックスを可視化する。DQSでPMの“構造的な悩み”が解消する理由

司会:そうした「PMのつらさ」を、まずはシステムの構造的課題という観点から打破するために、SHIFTが採っているアプローチを教えてください。 

白木:「AIモダナイゼーション」というサービスを提供しています。 

全体像としては、レガシーシステムの仕様を解析するリバースエンジニアリング(以下、DQS for RE)と、そこからモダンなシステムへ再構築するフォワードエンジニアリングの2つのパートにわかれています。 

サービス名にもあるDQSとは「Development Quality Standard」の略で、高品質なシステム開発を実現するための標準化されたSHIFT独自の開発フレームワークおよびプロセス群を指しています。

参考:「SHIFT DQS for リバースエンジニアリング」プレスリリース 

司会:DQSはどんな課題を解決するために生まれたのでしょうか? 

白木:最大の目的は、システムのブラックボックス化からの脱却です。DQS for REでは、外部仕様と内部仕様をともに解析してドキュメントを生成し、システム全体を可視化することで現状を把握しやすくします。 

またもう一つの重要なメリットに、ベンダーロックインの解消があります。

フォワードエンジニアリングではオープンソースや標準的な技術を採用したボイラープレートを用いるため、特定ベンダーへの依存を防ぐことができます。 

竹村:ここに対して私たちは、AIによる現状の可視化を先行し圧倒的な短納期と低コストを実現することで、ベンダーロックインの牙城にも切り込んでいくことができると考えています。 

司会:システム構造がスムーズに可視化できることで、PMもつらい思いをせずにすみますね。 

白木:ええ。可視化の最大のメリットは、認識合わせの土台ができることです。 例えば「200画面だと思っていたら実は1,000画面あった」という事実が最初に可視化されます。

もちろん実際は年1回しか使わない画面などの濃淡があるとにせよ、まず1,000画面あるという客観的な事実が土台としてそろいます。

それをもとにお客様と認識合わせができるためPMも安心でき、後々のトラブルや認識の相違を減らせるのが非常にいいポイントです。 

また途中からプロジェクトに参画するPMやチームの負荷も激減されます。

私はエンジニアとして途中参加することもありますが、全体像を俯瞰しつつ、具体的に踏み込んだ「内部仕様(ソースコードの中身)」までツールで見られるため非常にありがたいものだと感じています。 

司会:視聴者の方からも「動いているソースコードしか信頼できない場合が多い」とコメントをいただきました。 

竹村:最近はアジャイル開発を採用するケースも増え、それに伴いドキュメントをつくらないことも多いです。

しかし、発注側である事業会社のお客様はベンダーに任せる以上、ドキュメントがないと困るため「アジャイルを進めながらドキュメントもつくりたい」というジレンマを抱えています。  

また保守運用のなかでソースコードだけが修正され、ドキュメントの更新が止まって乖離していくケースも非常に多いです。

こうした課題に対しても、ソースコードからリバースエンジニアリングで正確なドキュメントを生成する仕組みは有効で、ソースコードと合致した信頼できる状態をつくりだせます。 

ストラテジックアーキテクトという次世代キャリア、AI時代のPMが選べる未来

司会:AIモダナイゼーションが進むと、PMのつらさが解消されるだけでなく、仕事自体も変わってきそうですね。 

白木:はい。これまではエンジニアに依頼しないとできなかったシステムの課題特定やデータ抽出などを、AIを使うことでPM自身ができるようになってきています。

AIのサポートによって、エンジニアとPMの垣根がどんどん少なくなっていくと思います。 

竹村:そうですね。例えばPM業務の大きな比重を占めている、各エンジニアへの進捗確認や、それをもとにした報告書の作成などの管理業務は、今後AIが代替していくかもしれません。 

白木:すでにSHIFTのPMのなかにも、タスク管理ツールとAIを連携させ、遅延タスクや会議のネクストアクションが一目でわかるダッシュボードを自作して進捗管理をしている方がいます。  

竹村:AIを使うことで業務負荷が軽減され、より本質的な人間による判断や、お客様とのコミュニケーションに集中できるようになると思います。 

司会:PM本来の業務に集中できるようになるのですね。一方で、これまで「技術を極めたいのにPMになるしかない」というキャリアの壁もPMを苦しめてきました。AI時代において、この一本道のキャリアはどう変わるのでしょうか。 

 竹村: 技術を追求したい方向けに、新しいキャリアパスとしてSHIFTの「ストラテジックアーキテクト」というポジションにぜひ挑戦してみてほしいです。 

司会:ストラテジックアーキテクトはどんな役割を担っているのですか? 

竹村:「この課題を解決するためには、システムをこう変えていきましょう」というTo-Be(理想の姿)の設計と、そこに至るまでのロードマップを策定するのが主な役割です。 

 SHIFTのストラテジックアーキテクトの特長は、「AIを多用する」点です。AIを使って現行システムのソースコードを高速かつ横断的に分析し、セキュリティの脆弱性やコードの複雑化といった課題を抽出します。 

レガシーとモダン両方のアーキテクチャを理解していないと具体的な改善策は提案できません。

常に最新技術をキャッチアップする必要があるため、技術志向の方には非常に面白い仕事だと思います。 

司会:お客様は具体的にどんな課題を抱えているのでしょうか。 

竹村:65社以上のソースコードを分析した結果分かったのですが、96%ものお客様は「テスト基盤の欠如」と「コードの複雑化によるメンテナンスの煩雑化」に苦しんでいます。 

さらにセキュリティ課題も多く、脆弱なフレームワークやライブラリを使いつづけたり、パスワードが平文になっていたりするケースが、74%のお客様で発生しています。 

司会:そのようなお客様に対して、どのように提案をするのでしょうか? 

竹村:AIが抽出した客観的なデータで現状を可視化し、To-Be(理想の姿)を描きますが、究極の理想像を一足飛びに実現できるわけではありません。実際にはお客様の予算に収まるかという問題があります。 

脆弱性対応など緊急性の高いものから優先し、お客様と相談しながら「まずは中間地点まで行きましょう」と現実的な落とし所を探っていく泥臭さも、ストラテジックアーキテクトの重要な役割です。 

PM業務で培ってきた「お客様との調整力」や「プロジェクト推進」の経験に、最新の技術知見を掛けあわせるからこそ、ストラテジックアーキテクトとして大きな価値を発揮できるのです。

現状を説明すると「大事に育ててきた子どもをけなされたようだ」と感じるお客様もいらっしゃいます。

でも私は、「大事な子どもだからこそ、つぎはぎだらけの服ではなく、新しい服を着せてあげましょう」と内心にそんな思いを抱えながら、客観的なデータをもとに真摯に向き合っています。  

AIとともに新しい道を。技術者本来のやりがいを取り戻す

司会:AI時代に新しいキャリアを描く場として、SHIFTという環境にはどんな面白さがありますか? 

竹村:AIを活用して新しいことに挑戦できる面白さではないでしょうか。SHIFTには、やると決めたらすぐに実行に移す文化があります。  

白木:竹村さんがおっしゃった文化ですが、創業者である丹下がいまもトップでクイックに意思決定をしているのがいいポイントですね。

AIを全力で推進するという経営方針のもと、最新のAI技術を使いながらお客様の課題解決に取り組むことができます。 

新しいことに挑戦したいエンジニアやアーキテクトにとって、非常に面白くやりがいのある環境ではないかと思います。 

司会:では最後に、かつての竹村さんのように「本当は技術を極めたいけれど、一本道のキャリアの中でPMをやっている」、そんな悩みを抱えている方々へメッセージをお願いします。 

竹村:AIの登場で、キャリアは一本道ではなくなりました。

マネジメントを極める道もあれば、AIの知見を深めてとことん業務を効率化する道、技術志向の方はプログラマーのまま、もしくは私たちのようなアーキテクトやストラテジックアーキテクトになる道もあります。 

白木:加えていえば、「もう一度、エンジニアリングの世界に戻る」という選択肢もいまの時代なら大いにあり得ると思っています。

PMを務めている方の多くは、かつてコーディングや設計をとことん経験されてきたバックグラウンドをおもちのはずです。 

いまはAIがコーディングを強力にサポートしてくれる時代だからこそ、PMで培ったプロジェクト推進や全体把握の経験を武器に、再び技術の最前線に立つことも十分に現実的です。

実際に、スタートアップでCTOを務めた方がエンジニアに戻るのを拝見したことがあります。 

竹村:SHIFTには、そうした構造的なしがらみを壊し、自身の志向にあったキャリアパスを歩める環境があると考えています。 

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、イベント開催当時のものです) 

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なぜ改善活動は自然消滅するのか?事例からみる、組織に定着させる3つの打ち手 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1559/ Thu, 16 Jul 2026 00:00:00 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=57046 Scrum Fest Niigata 2026 登壇レポート

「いい取り組みだったはずなのに、なぜか活動がつづいていない……」 

勉強会やアジャイル導入、1on1など、現場発の改善活動がいつの間にかなくなってしまったという経験はないでしょうか。 

熱意をもってはじめたにもかかわらず、周囲は動いてくれず、推進者だけが疲弊していく。実は、そこには個人の熱量や努力では解決できない構造的な問題が潜んでいます。 

本記事では、ふりかえり&アジャイルエバンジェリストの森 一樹(びば)が2026年5月9日に登壇した「Scrum Fest Niigata 2026」の講演内容をもとに、改善活動が消滅してしまう5つのパターンを紐解きます。 

そのうえで、個人の熱量に頼らず、改善を組織に定着させるための3つの打ち手と5つのステップを事例とともにお届けします。

  • ふりかえり&アジャイルエバンジェリスト 森 一樹(びば) 

    黄色いふりかえりの人。みんなに強化魔法をかける人。野村総合研究所にてプロジェクトマネジメントや組織変革を推進し、プロダクトマネージャとしての経験を経て、2025年にSHIFTに入社。社内外へのアジャイル教育や、ふりかえりの啓蒙から、社内各部署や他社との連動など、支援の幅を広げ活動中。著書に「アジャイルなチームをつくるふりかえりガイドブック」など。   

目次

実は構造が原因。改善活動が消える5つの共通パターン

熱意をもって自発的にはじめた社内勉強会やグループ横断施策を、1年後には自分も含めて誰もやっていない。 

あるいは上司の立場として「いい取り組みをしているな」と思っていたのに、知らないあいだにひっそりと終了していた。 

そんな経験をもつ人は多いのではないでしょうか。 

改善活動が自然消滅するのは偶然だけでは片づけられない要因があります。そこには構造的な問題があります。私のこれまでの経験から、消えていく改善活動は大きく5つの共通パターンに分類できます。

1. 属人化:推進者が異動した瞬間に終わる
2. バーンアウト:熱量が保てなくなった瞬間に終わる
3. 成果の不可視化:「何が変わったの?」に答えられない
4. 組織再編:「方針が変わりました」の一言で消える
5. 言語の断絶:現場の熱量が上層部に届かない 

なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。その背景には改善活動を進めるプロセス上の要因が大きく影響しています。 

ここからは改善の火を消さないための3つの打ち手――「翻訳する」「巻き込む」「仕組み化する」について、実際の事例を交えてご紹介します。 

【打ち手1:翻訳する】決裁者を動かす言葉の選び方

最初は、「翻訳」の失敗事例から。 

あるスクラムマスターがマネージャーにこう問題提起をしました。 

「チームの心理的安全性が低く、属人化が進んでいる。プロセスにも改善の余地があり、複数のチームでワークショップをやらせてほしい」。 

しかし、マネージャーからは「いろんなプロジェクトが佳境なのに、追加で1人月以上の工数を割く判断はできない」と却下されてしまいました。

これは翻訳が不足していた典型的な例です。 

「チームの雰囲気がよくなる」という言葉では、問題と改善の因果関係がみえません。結果として、マネージャーには「コストをかけて勉強会をする」という提案に聞こえてしまったのです。 

また、「複数チームで実施したい」という提案は投資規模が大きい印象を与え、マネージャーに重い判断を迫るものになっていました。 

こうした場合の打ち手は、「現場の言葉」を「上層部にとっての判断材料となる言葉」へ翻訳することです。 

例えば「雰囲気がよくなる」ではなく、「相談コストが下がる」「手戻りが週○時間減る」といった表現に変えると、改善が業務や成果へ与える影響の大きさを伝えられます。

なぜなら、上層部がみているのはコストや納期、品質などのKPIだからです。改善活動の話も、コストや納期、品質などのKPIに翻訳して説明する必要があります。 

したがってまず活動をはじめる前に「この施策を実施すれば、この数値が変わるはずだ」という仮説をたてる必要があります。

そして、まずは1チームで試して結果を示し、上層部が投資判断を行うハードルを下げることが重要です。 

また、同じプロセス改善でも、重視されるKPIは相手の立場によって異なります。誰に打診するのかを意識し、その人が判断しやすい言葉に置き換えることも大切です。

【打ち手2:巻き込む】人を動かす「体感」の場づくり

2つ目の事例は「巻き込む」に関係するものです。

ある若手のスクラムマスター自チーム成果のでた「ふりかえり」をほかのチームへ横展開したいと考えていました。

そこで、タスクやステップを体系的に整理したアクションリスト部長にほかのチームへの声掛けを依頼。

部長はよさそうな活動だ」と理解を示し掛けてくれましたが後日声がけしたチームからいい反応が得られなかったの一言で終わってしまいました。 

この例で意識していただきたいのは「言葉で伝えれば、推進者と同じ熱量で動いてくれる」は幻想であるということです。 

巻き込んだ相手が提案内容を理解するだけでなく、納得して協力できる状態をつくることが大切です。 

そもそも、ふりかえりとはアクションそのものよりも、「体感の場」を設計することでプロセスをいっしょに体感することが大事なのです。 

そのうえで部長に「部長にきてもらえたらチームの士気があがります。一度、ふりかえりに参加していただけませんか」と声を掛け、場に招きます。

その際、「最後に一言いただけると助かります」と役割を渡しておくことで、当事者として関わってもらいやすくなります。 

さらに、あらかじめ自身のチーム内でもすりあわせを行い、活動の成果と魅力が120%伝わるよう意図的に設計しておくことも大切です。 

効果を報告するだけでは、動きにつながりにくい場合があります。そのために、巻き込み方も事前に設計しておきましょう。 

【打ち手3:仕組み化する】推進者がいなくてもつづく、設計の引き渡し

最後に紹介するのは、「仕組み化」にかかわる事例です。

CoEメンバーが、組織横断の勉強会を立ち上げました。最初はCoEメンバーが毎回テーマを決め、丁寧に資料を準備し、進行まで担当。参加者の満足度が高い状態がつづいていました。 

5回ほど開催したところで、「チームだけでも自走できそうだ」と判断し、運営を別の人に引き継ぎました。しかし数ヶ月後、勉強会は自然消滅してしまいました。 

表面上はうまくまわっているようにみえていましたが、参加者には「毎回素晴らしい資料を作らなければならない」という暗黙のハードルがあり、加えて誰がどの役割を担うのかも明確ではなかったのです。

運営の進め方も決まっておらず、一度エンジンが止まった際に再起動するスイッチ(改善の場)がなかったことが消滅の原因です。 

ここで本当に必要だったのは、「設計の引き渡し」です。

たとえば「資料作成は任意」などハードルを下げて無理なく継続できる形をあらかじめ整え、次回の担当決定や運営のふりかえりをプロセスに組み込んでおく。

参加者が自分ごととして関われる動機づけも設計しておくことが重要です。 

個人の熱量は、仕組みに変換されてはじめて組織の文化になります。推進者がいなくてもまわりつづける設計こそが、改善を定着させる鍵になります。 

改善の火を絶やさない、実践ロードマップ

前述の3つの打ち手を踏まえ、改善活動を組織に定着させるための具体的な5つのステップを紹介します。

STEP1:小さくはじめて事例をつくる
いきなり壮大な計画を上層部に提案しても、なかなか通りません。まずは自分が動ける範囲(週1時間を1ヶ月程度など)で小さくはじめて成功事例をつくります。 

このとき、「ここまでやって成果が出なければ一旦やめる」という撤退基準もあらかじめ決めておきます。うまくいかなければ無理につづけず、静かに閉じましょう。 

STEP2:成果を周囲へ「魅せる」
事例ができたら、その結果を周囲を巻き込むための材料にします。このとき、上層部への説明を想定し、仮のKPIを事前に設計しておきます。 

KPIが適切かどうかは、ふりかえりを通じて見直していきます。「何のためのKPIなのか」という観点も含めて改善しつづけることが大切です。 

STEP3:味方をみつけ上層部を巻き込む
まずは話を聞いてくれそうな味方をひとりみつけます。その味方とともに材料を整理し、有効な打ち手を考えます。

上層部にもち込む際は「数ヶ月後にふりかえりを実施し、必要に応じて軌道修正します」と上層部が判断しやすい提案を心がけましょう。 

STEP4:興味のある層を巻き込む
上層部の承認が得られたら、いきなり全社に広げるのではなく興味をもってくれた層から徐々に巻き込んでいきます。活動の一部を少しずつ渡し、巻き込んだ人が成功体験を積めるようにします。 

STEP5:仕組み化して広げる
人が集まってきたら、Aさんがやったら次はBさん、その次はCさんというように、無理のないもちまわりの仕組みをつくります。手上げ制だけにせず全員が少しずつ関わる形にすることで、負荷が分散されます。 

あわせてふりかえりを継続し、ゴールや進め方を更新していきます。みんなが無理なくつづけられる形に整えていくことが大切です。 

明日からできる「最初の一歩

「いっていることはわかるけれど、どこからはじめればいいの?」という方へ、今日からできる具体的なアクションをお伝えします。 

相手の求める指標(KPI)がわからないとき 
上層部が何を求めているか想像するのには限界があります。わかる人(先輩や視座の高い人)を探して、「とりあえずの指標」を立てたうえで相談する形で巻き込んでみましょう。 

協力してくれる味方がみつからないとき 
チャットで募集しても返信がない場合、募集に「いいね」を押してくれた人に直接DMで「興味ありますか?いっしょにやりませんか?」「助けてください」と声をかけてみてください。 

仕組み化の第一歩がわからないとき 

まずは誰にも依存しない形で、自分一人で3回はつづけてみてください。3回つづけば型がみえてきます。型がみえてから、新しいメンバーに巻き込んで渡していきましょう。 

最後に

いきなり仕組み化しようとしても、人はついてきません。味方をつくらないまま一人で進めてしまえば、自分の熱量が切れたときに活動も止まってしまいます。

小さくはじめ、成果を示し、味方を増やし、ふりかえりながら広げていく。順番を守ることで、改善活動は組織のなかに根づいていきます。 

改善の火を、いっしょに燃やしつづけましょう。

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「自分が何者かわからなかった」 40代エンジニアが挑んだアウトプットの軌跡。 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/career/library/id1558/ Tue, 14 Jul 2026 23:50:00 +0000 https://recruit-wp-prod.shiftinc.biz/?post_type=library&p=57133 ワンストップ アウトプット!アウトプットの背中を押すカンファレンス 登壇レポート

「エンジニアとして長く経験を積んできたのに、自分が何者かわからない」—— 

そんな悩みを抱える方もいらっしゃるのではないでしょうか。 

今回の記事の主人公、髙橋 直規。彼もまた自信をもてずにいました。20代はSESでさまざまな案件に参画し、30代で一次請け企業へ転職して、長く深い案件を担うも終わるごとにリセットされるような感覚… 

しかし、彼はあるプロジェクトで自分の限界を知ったことをきっかけに、“外の世界”へと飛び出します。そこからアウトプットをはじめたことで、彼はエンジニアとしてのオーナーシップを取り戻した、と語ります。 

本記事では、2026年4月4日に開催され、SHIFTが会場スポンサーを務めた「ワンストップ アウトプット!アウトプットの背中を押すカンファレンス」より、髙橋の講演をレポート。 

髙橋がブログ、技術同人誌、登壇、コミュニティ立ち上げといったアウトプットを通じて自身の経験に価値を見出すまでの等身大の軌跡を追います。 

  • 製造ソリューションサービス部 髙橋 直規

    エンジニアやPM、サービスマネージャー※として、さまざまなシステム開発案件などに携わった後、アジャイルを専門的に扱うために、3社目として2023年3月SHIFTに入社。現在は、SHIFTの「アジャイル」にまつわるさまざまな案件に入り、プロジェクトマネジメントから実務となるエンジニアリングまで、幅広い領域でアジャイルサービスの浸透/普及に従事している。 

    ※複数案件を管理し、滞りなくサービス提供ができるよう責任を担う立場。

目次

経験を積むほど見失う「自分らしさ」と、40代で直面した限界

キャリアを長く積めば、自然と自信がつくとは限りません。私の20代から30代にかけての歩みは、まさにその葛藤の連続でした。 

20代のころ、私はSESとして、1〜3ヶ月で終わるような短期案件を転々としていました。

ウォーターフォール開発における実装や単体テスト、詳細設計から結合試験までといった一部の工程のみを担当することが多く、目の前の仕事をこなして経験の量は増えるものの、それらは散らばったままで、大きな自信には結びつかなかったんです。

その状況を打破しようと、30代ではお客様と直接関わる一次請け企業へ転職します。

テックリードやプロジェクトマネージャーとして案件に深く関わるようになりましたが、プロジェクトが終わるたびに経験がリセットされる感覚に陥りました。 

「点」としての経験はあっても、それらが「線」として繋がる感覚が得られず、自分自身のエンジニア像を描けずにいたのです。

自身のエンジニアとしてのあり方に自信がもてない状態は、外部交流に対して心理的な壁を生み出しました。 

当時、社外の勉強会などに参加して活発に交流するエンジニアに、私は強い憧れを抱いていました。

しかし、勇気を出して参加してみても「自分には縁がない、場違いだ」と疎外感を覚えてしまい、継続することができませんでした。 

それはスキルの問題ではありません。ほかの参加者が「エンジニアとしての自分のあり方」をしっかりともっているように見えるのに対し、自分にはそれがないという後ろめたさが原因でした。

キャリアの長さに反比例するかのように、自分らしさを見失っていったのです。

自分の失敗は“アンチパターン”だった。外の世界が教えてくれたこと

そんな私に、40代で大きな転機が訪れます。それは、新規プロダクト開発のプロジェクトマネージャーを担当したときのことでした。 

私は、スクラムマスターやQAリードなど複数の役割を兼務し、自身の経験だけを頼りに最適な手法だと信じてプロジェクトを推し進めました。

高稼働によってなんとかリリースには漕ぎ着けたものの、結果として極度の属人化を生み出してしまいます。

無事にリリースできた喜びよりも、「このやり方は二度と繰り返せないし、繰り返したくない」という再現性のなさに直面し、大きな後悔を味わいました。

「自分の知っているやり方だけでは、もう通用しない」。これが、私が直面した自己流の限界でした。

そこで私は、自分にはない知識を求めて、再び外の世界へと足を踏み入れます。 

最初はオンラインを中心とした勉強会やカンファレンスから参加しはじめました。オンラインであれば、かつて感じたような疎外感を抱くことはありませんでした。 

懇親会には参加せずセッションを聞くだけのスタートでしたが、自分とは異なる開発組織で働く人々の話や、未知のコンテキストのなかでの開発について知ることは、多くの学びと刺激をもたらしてくれました。 

こうしたインプットは、私が過去の経験を大きく捉え直すきっかけとなりました。 

私は、DevOpsやスクラムを改めて学び直しました。属人化を生んでしまった前述の失敗や、過去にぶつかった数々の問題が、業界ではすでにアンチパターン(避けるべき失敗例)として語られていたことを知りました。

自分が抱えていた苦しさや違和感を、外の言葉で少しずつ理解できるようになったのです。外部からの視点で捉えなおすことで、断片的に感じていた自身の経験が、意味のあるケーススタディとして整理されていきました。 

学んだことをただ通り過ぎる情報にしないため、私はブログへの投稿をはじめました。書籍や登壇から得た新しい発見や、自分ができていなくて魅力を感じた部分などを、自分の言葉で文章に整理していったのです。 

ある日、書籍の感想をブログに書いたところ、X(旧Twitter)で「いい話だな」と反応をくれた人がいました。 

自分自身の学びの整理のために書いた文章が、見知らぬ誰かの気づきに繋がった。この小さな成功体験が、自分の経験が他者と接続されるという初めての実感となり、私をさらなるアウトプットへと突き動かしました。

「いまやらなければ後悔する」。恐れを乗り越えたアウトプットへの挑戦

ブログでの手応えを得て、「自分がどうなりたいかを知るためのインプットと、実践したアウトプットの積み重ねこそが、自分自身になる」と確信し、次なるステップとして技術同人誌の執筆に挑みます。 

もちろん、「自分に書けるのか」という不安やプレッシャーはありましたし、やらない理由はいくらでも探せました。

しかし、「40代のいまやらなければ、50代でも60代でもやらない。人生を後悔したくない」という強い危機感があったんです。 

さらに、運営者の「書いてみたい気持ち最優先で突き進んでほしい」という言葉に背中を押され、応募最終日に決断しました。 

いざ書きはじめてみると、1日1ページ進めれば20ページの本は20日間で完成することに気づきます。

「アウトプットは一つひとつの積み重ねに過ぎない」。この気づきと共に書き上げた本は、過去の経験をDevOpsの観点から再整理したもので、読者から温かいフィードバックを得ることができました。 

同人誌につづいてカンファレンスでの登壇にも挑戦し、プロポーザルが採択されました。しかし、いざ採択されると「本当に自分が話していいのか」「がっかりされないか」と恐怖に苛まれました。 

そんなとき、またしても運営スタッフの言葉が私を救いました。「全員を採択したいが枠に限りがある。涙を飲んで不採択になったプロポーザルも、どうにか発表できる未来をつくりたい」。 

この言葉を見て、私は「自分の裏には不採択になった数多くの人たちの想いがある。選ばれた以上、覚悟をもって登壇すべきだ」と決意しました。

登壇の舞台に選んだのは、北海道で開催されたカンファレンスでした。私のことを知らない東京から離れた場所ということで安心できそうだと感じていました。 

テーマは、「新規プロダクト開発における属人化の失敗からの学び」です。 

勇気を出して失敗談を語った後、参加者から直接フィードバックをもらいました。オンラインや文字越しではない、生身の反応です。

ありふれていて価値がないと思い込んでいた自身の経験が、異なる組織で働く人たちの心に届き、彼らの学びに変わりました。 

「自分の経験が輪郭を持ち、明確な意味をもった」。この体験を経たことで、私のなかからアウトプットへの恐怖は大きく和らいだのだと思います。

ありふれた失敗談が誰かの学びに。経験のオーナーシップを取り戻す

一連の挑戦を通して、自分の経験が価値あるものへと変わっていきました。与えられた役割を越え、エンジニアとしてのオーナーシップを取り戻した瞬間でした。

アウトプットがもたらす他者との対話や交流の価値を深く理解したことで、現在では、新たな挑戦として「コミュニティづくり」に取り組んでいます。 

郊外に住む人、地方で働く人、子育て中で時間的制約がある人など、普段なかなか出会えない人々がもつ多様な学びや経験を交差させる場をつくりたい。

かつて外部コミュニティに疎外感を感じていた私が、いまは自ら居場所をつくり出す側にまわっているわけです。

輝かしいキャリアでなくても、遠回りや迷い、失敗を含めて、あなたにしかない経験が必ずあります。

40代まで積み重ねてきた経験があったからこそ、語れることがあるはずです。自信がない人こそ、その経験を言葉にして他者と交流してほしい。それが必ず誰かの学びに変わっていくと私は思います。 

今日の発表が、次にアウトプットの一歩を踏み出すあなたの背中を押すきっかけになれば幸いです。

(※本記事の内容および取材対象者の所属は、イベント開催当時のものです)

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